安全データシート

ベンジルアルコール

改訂日:2024-01-24版番号:1

1. 化学品及び会社情報

製品識別子

  • 製品名: ベンジルアルコール
  • CB番号: CB3852587
  • CAS: 100-51-6
  • EINECS番号: 202-859-9
  • 同義語: ベンジルアルコール,フェニルメタノール

物質または混合物の関連する特定された用途、および推奨されない用途

  • 関連する特定用途: 香料、塗料・インキ・エポキシ樹脂溶剤、合成繊維染色助剤、医薬・化粧品防腐剤 (NITE-CHRIPより引用)
  • 推奨されない用途: なし

会社ID

  • 会社名:Chemicalbook
  • 住所:北京市海淀区上地十街匯煌国際1号棟
  • 電話:400-158-6606

2. 危険有害性の要約

GHS分類

分類実施日(物化危険性及び健康有害性)
R4.3.15、政府向けGHS分類ガイダンス(令和元年度改訂版(Ver2.0))を使用 ※一部、ガイダンスVer.1.1 (GHS 4版, JIS Z7252:2014)※一部JIS Z7252:2019(GHS 6版準拠)を採用
物理化学的危険性
-
健康に対する有害性
急性毒性(経口)   区分4
急性毒性(経皮)   区分4
急性毒性(吸入:蒸気)   区分3
眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性   区分2
皮膚感作性   区分1A
特定標的臓器毒性 (単回ばく露)   区分1(中枢神経系、腎臓)、区分3(麻酔作用)
特定標的臓器毒性 (反復ばく露)   区分1(中枢神経系)
分類実施日(環境有害性)
ガイダンスVer.1.1 (GHS 4版, JIS Z7252:2014)※一部JIS Z7252:2019(GHS 6版準拠)を採用
環境に対する有害性
水生環境有害性 短期(急性)   区分2

2.2 注意書きも含むGHSラベル要素

絵表示
GHS07
注意喚起語
警告
危険有害性情報
H302 + H332 飲み込んだ場合や吸入した場合は有害。
H319 強い眼刺激。
注意書き
安全対策
P261 ミスト/蒸気の吸入を避けること。
P264 取扱い後は皮膚をよく洗うこと。
P270 この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
P271 屋外又は換気の良い場所でだけ使用すること。
P280 保護眼鏡/保護面を着用すること。
応急措置
P301 + P312 + P330 飲み込んだ場合:気分が悪いときは医師に連絡すること。口をすすぐこと。
P304 + P340 + P312 吸入した場合:空気の新鮮な場所に移し,呼吸しやすい姿勢で休息させること。 気分が悪いときは医師に連絡すること。
P305 + P351 + P338 眼に入った場合:水で数分間注意深く洗うこと。次にコンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。
P337 + P313 眼の刺激が続く場合:医師の診察/手当てを受けること。
廃棄
P501 内容物/容器を承認された処理施設に廃棄すること。

2.3 他の危険有害性

なし

3. 組成及び成分情報

  • 化学物質・混合物の区別: 化学物質
  • 別名: Benzenemethanol
  • 化学特性(示性式、構造式 等): C7H8O
  • 分子量: 108.14 g/mol
  • CAS番号: 100-51-6
  • EC番号: 202-859-9
  • 化審法官報公示番号: 3-1011
  • 安衛法官報公示番号: -

4. 応急措置

4.1 必要な応急手当

一般的アドバイス
この安全データシートを担当医に見せる。
吸入した場合
吸入後は新鮮な空気を吸うこと。呼吸停止時は人工呼吸する。必要なら酸素を吸入させる。ただちに医師の診察を受けること。
皮膚に付着した場合
皮膚に接触した場合: すべての汚染された衣類を直ちに脱ぐこと。 皮膚を流水/シャワーで洗うこと。
眼に入った場合
眼に触れた後は多量の水ですすぐこと。 眼科医の診察を受けること。 コンタクトレンズをはずす。
飲み込んだ場合
飲み込んだ後はただちに水を飲ませること(多くても2杯) 医師に相談する。

4.2 急性症状及び遅発性症状の最も重要な徴候症状

もっとも重要な既知の徴候と症状は、ラベル表示(項目2.2を参照)および/または項目11に記載されている

4.3 緊急治療及び必要とされる特別処置の指示

データなし

5. 火災時の措置

5.1 消火剤

使ってはならない消火剤
本物質/混合物に対する消火剤の制限なし
適切な消火剤
水 泡 二酸化炭素(CO2) 粉末

5.2 特有の危険有害性

炭素酸化物
可燃性。
蒸気は空気より重く、床に沿って広がることがある。
高熱で空気と反応して爆発性混合物を生じる
火災時に有害な燃焼ガスや蒸気を生じるおそれあり。

5.3 消防士へのアドバイス

火災時には、自給式呼吸器を着用する。

5.4 詳細情報

消火水が、地上水または地下水のシステムを汚染しないようにする。

6. 漏出時の措置

6.1 人体に対する注意事項、保護具及び緊急時措置

救急隊員以外への助言: 蒸気、エアゾールを吸入してはならない。 触れないようにすること。 十分な換気を確保する。 危険なエリアから避難し、緊急時手順に従い、専門家に相談のこと個人保護については項目 8 を参照する。

6.2 環境に対する注意事項

物質が排水施設に流れ込まないようにする。

6.3 封じ込め及び浄化の方法及び機材

排水溝に蓋をすること。こぼれたら集めて結合させ、ポンプですくい取る。 物質の制限があれば順守のこと (セクション 7、10参照) 液体吸収剤(例. Chemizorb® )で処置すること。 正しく廃棄すること。関係エリアを清掃のこと。

6.4 参照すべき他の項目

廃棄はセクション13を参照。

7. 取扱い及び保管上の注意

7.1 安全な取扱いのための予防措置

安全取扱注意事項
換気フードの下で作業すること。吸い込まないこと。 蒸気やエアロゾルが生じないようにすること。
衛生対策
汚れた衣類は取り替えること。事前に皮膚を保護することが望ましい。本物質を扱った後は手を洗うこと。注意事項は項目2.2を参照。

7.2 配合禁忌等を踏まえた保管条件

保管クラス
保管クラス (ドイツ) (TRGS 510): 10: 可燃性液体
保管条件
密閉のこと。不活性ガス下で取り扱い、貯蔵する。 吸湿性あり

7.3 特定の最終用途

項目1.2に記載されている用途以外には、その他の特定の用途が定められていない

8. ばく露防止及び保護措置

8.1 管理濃度

コンポーネント別作業環境測定パラメータ
OEL-C: 25 mg/m3 - 日本産業衛生学会 許容濃度等の勧告

8.2 曝露防止

適切な技術的管理
汚れた衣類は取り替えること。事前に皮膚を保護することが望ましい。本物質を扱った後は手を洗う
こと。
保護具
眼/顔面の保護
NIOSH(US)またはEN 166(EU)などの適切な政府機関の規格で試験され、認められた眼の
保護具を使用する。 保護眼鏡
皮膚及び身体の保護具
手袋を着用して取扱う。 使用前に、必ず手袋を検査する。 (手袋外面に触れずに)適切に手袋
を脱ぎ、本製品の皮膚への付着を避ける。 適用法令およびGLPに従い、使用後に汚染手袋を廃
棄する。 手を洗い、乾燥させる。
選ばれた防護手袋は、EU指令2016/425の仕様と、それから派生する規格EN374を満たすもので
なければならない。
フルコンタクト
材質: ブチルゴム
最小厚: 0.3 mm
破過時間: 480 min
試験物質:Butoject® (KCL 897 / Aldrich Z677647, Size M)
飛沫への接触
材質: ニトリルゴム
最小厚: 0.4 mm
破過時間: 43 min
試験物質:Camatril? (KCL 730 / Aldrich Z677442, Size M)
データソース:KCL GmbH, D-36124 Eichenzell, 電話 +49 (0)6659 87300, e-mail sales@kcl.de,
試験方法: EN374
EN374とは違った条件の下で、溶液の中、または他の物質と混ぜて使われる場合は、EC認可手
袋の供給業者に問い合わせる。 この勧告は単なる助言であり、予想される用途の特定状況に精
通した産業衛生専門家並びに安全管理者により評価されなければならない。 任意の使用方法に
ついて許可を受けていると理解すべきではない。
身体の保護
保護衣
呼吸用保護具
気化ガス/エアロゾル発生時に必要 次の規格に準拠しているフィルター式呼吸器保護具を推奨し
ます。DIN EN 143、DIN 14387および使用済み呼吸器保護システムに関連する他の付属規格。
環境暴露の制御
物質が排水施設に流れ込まないようにする。

9. 物理的及び化学的性質

物理的状態

物理状態
液体 (20℃、1気圧) (GHS判定)
無色透明
臭い
特異臭、かすかな芳香臭

融点/凝固点

-15 ℃(ICSC(2000)) -15.2 ℃(PubChem(2022)) -15.3 ℃(危険物災害等支援システム(2022))

沸点、初留点及び沸騰範囲

205 ℃(ICSC(2000)) 206 ℃(GESTIS(2022)) 205.3 ℃(PubChem(2022))

可燃性

可燃性(ICSC(2002))

爆発下限界及び爆発上限界/可燃限界

1.3~13 vol%(空気中) 1.22 vol.%(55 g/m³)(GESTIS(2022))

引火点

93 ℃(Closed cup)(ICSC(2000)) 94 ℃(Closed cup)(GESTIS(2022)、危険物災害等支援システム(2022)) 96 ℃(Closed cup)(PubChem(2022))

自然発火点

436 ℃(ICSC(2000)、PubChem(2022)) 435 ℃(GESTIS(2022))

分解温度

≧870 ℃(GESTIS(2022))

pH

中性(PubChem(2022))

動粘性率

データなし

溶解度

水: 4 g/100 ml(20℃)(GESTIS(2022)、ICSC(2000)) ベンゼン、メタノール、クロロホルム、エタノール、エーテル、メタノール、クロロホルム、アセトンに可溶(PubChem(2022))

n-オクタノール/水分配係数

Log Kow: 1.1(ICSC(2000)、PubChem(2022)) Log Kow: 1.05(GESTIS(2022))

蒸気圧

13.2 Pa(20℃)(ICSC(2000)) 0.07 hPa(20℃)(GESTIS(2022)) 0.125 hPa(25℃)(GESTIS(2022))

密度及び/又は相対密度

1.04 g/cm³(20℃)(GESTIS(2022)) 1.0419 g/cu cm(24℃)(PubChem(2022)) 1.046 (20/4℃)(危険物災害等支援システム(2022))

相対ガス密度

3.7 (空気=1)(ICSC(2000)) 3.72 (GESTIS(2022))

粒子特性

該当しない

10. 安定性及び反応性

10.1 反応性

高熱で空気と反応して爆発性混合物を生じる
引火点より下のおよそ15ケルビンからの範囲は危険とみなされている。

10.2 化学的安定性

標準的な大気条件(室温)で化学的に安定。
吸湿性あり
推奨保管条件下では安定。

10.3 危険有害反応可能性

データなし

10.4 避けるべき条件

ベンジルアルコールおよび58%の硫酸を混合し、180℃まで加熱すると激しく分解する。1.4%臭化水素
および1.1%鉄(Ⅱ)塩を含むベンジルアルコールは、100℃以上に加熱すると発熱重合する。
強力な熱

10.5 混触危険物質

多様なプラスチック

10.6 危険有害な分解生成物

火災の場合:項目5を参照

11. 有害性情報

急性毒性

経口
【分類根拠】 (1)~(7) より、該当する件数の多い区分4とした。
【根拠データ】 (1) ラットのLD50:1,200 mg/kg (JECFA FAS48 (2001)) (2) ラットのLD50:1,230 mg/kg (SIDS (2004)、環境省リスク評価第11巻 (2013)、PATTY (6th, 2012)) (3) ラットのLD50:1,600 mg/kg (JECFA FAS48 (2001)) (4) ラットのLD50:1,610 mg/kg (SIDS (2004)、PATTY (6th, 2012)) (5) ラットのLD50:1,660 mg/kg (環境省リスク評価第11巻 (2013)) (6) ラットのLD50:2,080~2,100 mg/kg (SIDS (2004)、PATTY (6th, 2012)、JECFA FAS48 (2001)) (7) ラットのLD50:3,100 mg/kg (JECFA FS48 (2001)、PATTY (6th, 2012))
経皮
【分類根拠】 (1) より、区分4とした。
【根拠データ】 (1) ウサギのLD50: 2,000 mg/kg (SIDS (2004)、環境省リスク評価第11巻 (2013))
吸入: ガス
【分類根拠】 GHSの定義における液体であり、ガイダンスにおける分類対象外に相当し、区分に該当しない。
吸入: 蒸気
【分類根拠】 データ不足のため分類できない。なお、旧分類で採用したデータはエアロゾルによる試験との記載があることから、ミストの基準値を適用し、旧分類を変更した。
吸入: 粉じん及びミスト
【分類根拠】 (1) のGLP準拠データは、4.178 mg/Lで死亡例がないことから、区分に該当しないとした。(1) のデータはエアロゾルによる試験との記載があることから、ミストの基準値を適用し、旧分類を変更した。
【根拠データ】 (1) ラットのLC50 (4時間):> 4.178 mg/L (SIDS (2004))、 (OECD TG 403、GLP準拠)
【参考データ等】 (2) ラットのLC50 (8時間):> 1,000 ppm (4時間換算値: 8.1 mg/L) (PATTY (6th, 2012)) (3) ラットのLC50 (4時間):8.9 mg/L (SIDS(2004))

皮膚腐食性及び皮膚刺激性

【分類根拠】 (1)、(2) より、区分に該当しないとした。
【根拠データ】 (1) OECD TG 404に準拠したウサギを用いた皮膚刺激性試験で非刺激性 (not irritating) と報告されている (SIDS (2004))。 (2) ウサギの皮膚刺激性試験の2報告で、皮膚一次刺激性インデックス (PII値) は、それぞれ、1.56、1.83と報告されている (ECETOC TR66 (1995))。

眼に対する重篤な損傷性又は眼刺激性

【分類根拠】 (1) より、区分2とした。
【根拠データ】 (1) OECD TG 405に準拠したウサギを用いた眼刺激性試験で、中等度の刺激性 (moderately irritating) と報告されている (SIDS (2004))。

呼吸器感作性

【分類根拠】 データ不足のため分類できない。

皮膚感作性

【分類根拠】 (1)~(6)より、区分1Aとした。なお、新たな知見に基づき、分類結果を変更した。産衛学会 (2019)にて感作性知見が公表されたため、旧分類から皮膚感作性項目のみ見直した(2021年)。
【根拠データ】 (1)日本産業衛生学会では感作性物質皮膚第2群に分類している(産衛学会感作性物質の提案理由書 (2019))。 (2)接触性皮膚炎が疑われた患者5,202名に対するパッチテストでは、全患者のうち48名(0.9%)が、また、化粧品へのアレルギー反応のみを示した156名のうち2名(1.3%)が、本物質に感作されていた。(産衛学会感作性物質の提案理由書 (2019))。 (3)健常ボランティア19名、皮膚炎患者31名に対するオープンテストにおいて、健常者15名、患者17名に即時型反応として皮膚蕁麻疹が生じた。また、パッチテストでは、本物質による遅延型アレルギーとしてのアレルギー性接触性皮膚炎は健常者、患者ともに全員陰性であった(産衛学会感作性物質の提案理由書 (2019))。 (4)香粧品香料原料安全性研究所(RIFM)はヒトボランティアを対象にマキシマイゼーションテストを行った結果、全員陰性であり、ワセリン中10%の本物質によるによる刺激性や感作性の根拠はないとした。ヒトボランティアを対象とした皮膚繰り返し感作誘導試験では、本物質の20%溶液では56名中5名、15%溶液では46名中5名、7.5%溶液では10名中3名、5%溶液では101名中2名に感作がみられ、3%溶液では107名全員に感作はみられなかった(産衛学会感作性物質の提案理由書 (2019))。 (5)感作及び誘発濃度3~20%(3,543 µg/cm2~23,622 µg/cm2)の用量を用いたヒト反復侵襲パッチテスト(HRIPT)の結果から、本物質の弱~中程度の皮膚感作性の傾向が示唆される。本物質の8,858 µg/cm2 (7.5%) から23,622 µg/cm2 (20%)の高用量では、感作された被験者数の増加がみられたとの報告がある(EU REACH CoRAP Substance Evaluation Conclusion (2020))。 (6)本物質に対して様々な程度の陽性反応が示されたとの多数の症例報告がある(EU REACH CoRAP Substance Evaluation Conclusion (2020))。
【参考データ等】 (7)マウス(n = 4)を用いた局所リンパ節試験(LLNA)(OECD TG 429、GLP)において、刺激指数(SI値)は1(2.5%)、0.9(5%)、0.5(10%)、0.6(25%)、1.2(50%)であったとの報告がある(CLH Report (2020)、EU REACH CoRAP (2020)、REACH登録情報 (Accessed Oct. 2021))。

生殖細胞変異原性

【分類根拠】 (1)、(2) より、専門家判断に従い、ガイダンスにおける分類できないに相当し、区分に該当しないとした。
【根拠データ】 (1) In vivoでは腹腔内投与によるマウス骨髄細胞の小核試験で陰性である (環境省リスク評価第11巻 (2013)、SIDS (2004))。 (2) In vitroでは細菌の復帰突然変異試験で陰性である。また、マウスリンフォーマ試験及び染色体異常試験では代謝活性化系存在下で陽性だが、極めて高濃度かつ細胞毒性濃度での反応であり、in vitro小核試験では陰性であった (NTP TR343 (1989)、NTP DB (Access on May 2019)、環境省リスク評価第11巻 (2013)、PATTY (6th, 2012)、SIDS (2004)、JECFA FAS48 (2001)、DFGOT vol.3 (2018))。
【参考データ等】 (3) DFGOT vol.3 (2018) 及びSIDS (2004) では、染色体異常試験陽性の結果は極めて高濃度や細胞毒性を示す濃度で得られたものであり、本物質の遺伝毒性の懸念はないと結論している (DFGOT vol.3 (2018) 、SIDS (2004))。

発がん性

【分類根拠】 国内外の分類機関による分類結果はない。利用可能なヒトを対象とした報告はない。(1) よりガイダンスの分類できないに相当し、区分に該当しないとした。
【根拠データ】 (1) ラットおよびマウスに2年間強制経口投与した発がん性試験で、両種の雌雄ともに発がん性の証拠なし (no evidence) と結論された (NTP TR343 (1989))。

生殖毒性

【分類根拠】 (1)、(2) より、発生毒性は母動物毒性発現用量で軽微な影響がみられたのみで区分に該当しないが、性機能及び生殖能に関する情報がなく、データ不足のため分類できない。
【根拠データ】 (1) 雌マウスの妊娠6~15日に強制経口投与した発生毒性試験において、母動物毒性(1/50例の死亡)がみられたが発生影響はみられていない (SIDS (2004)、PATTY (6th, 2012) 、環境省リスク評価第11巻 (2013))。 (2) 雌マウスの妊娠7~14日に強制経口投与した発生毒性試験において、母動物毒性(19/50例の死亡、チアノーゼ、振戦、衰弱、運動失調等)がみられ、児の出生時体重の減少、その後の体重増加抑制がみられた (SIDS (2004)、PATTY (6th, 2012) 、環境省リスク評価第11巻 (2013))。
【参考データ等】 (3) 旧分類で引用された「ラットの4世代経口投与試験」は本物質ではなく安息香酸 (benzoic acid) のデータである。

特定標的臓器毒性 (単回ばく露)

【分類根拠】 (1)~(3) より、区分1 (中枢神経系、腎臓)、区分3 (麻酔作用) とした。新たな情報源の使用により、旧分類から分類結果を変更した。
【根拠データ】 (1) 本物質を34.8%含有する塗膜剥離剤を吸入した45歳男性が、意識障害を来して昏睡状態で緊急搬送され、血圧低下、進行性の代謝性アシドーシスと尿細管障害による多尿を示し、急性ベンジルアルコール中毒と診断された (伊藤ら、日救急医会誌. vol. 29, p.254 (2018))。事故原因となった剥離剤の他の成分 (及び含有量) は、製品のSDSには水 (50%以上)、リン酸 (1~5%)、ナフタリン及び過酸化水素 (いずれも1%未満) と記載されており、上記の影響は本物質によると考えられる。 (2) 本物質は、皮膚に塗布、又は1%溶液の皮下注射により局所麻酔に使用された経緯がある (環境省リスク評価第11巻 (2013))。 (3) ラットの単回経口投与試験において、抑うつ状態、興奮、昏睡がみられた。影響がみられた用量の記載はないが、LD50値である1,230 mg/kg付近でみられたとすると、区分2に相当する (SIDS (2004))。

特定標的臓器毒性 (反復ばく露)

【分類根拠】 (1)、(2) より、ヒト小児への静脈内投与により中枢神経系への影響がみられていることから、区分1 (中枢神経系) とした。
【根拠データ】 (1) 本物質は、血管内カテーテル洗浄液の保存剤として使用され、低体重児に神経系の阻害及び致死を引き起こした (PATTY (6th, 2012))。 (2) 本物質0.9%を含有する液体の静脈内投与により、低出生体重児に中毒症状 (あえぎ呼吸、アシドーシス、神経機能低下等) が発現した (PATTY (6th, 2012))。
【参考データ等】 (3) ラットあるいはマウスに50~800 mg/kg/dayを13週間経口投与した結果、800 mg/kg/day (区分2超) で神経毒性の兆候 (よろめき歩行、努力性呼吸、嗜眠) がみられ、さらにラットでは、脳、胸腺、骨格筋、腎臓の病変等がみられた (NTP TR343 (1989)、SIDS (2004)、PATTY (6th, 2012)、環境省リスク評価第11巻 (2013))。 (4) ラットに200、400 mg/kg/day、マウスに100、200 mg/kg/dayを2年間経口投与した結果、投与による非腫瘍性病変の発生はみられなかった (NTP TR343 (1989))。

誤えん有害性*

【分類根拠】 データ不足のため分類できない。

* JIS Z7252の改訂により吸引性呼吸器有害性から項目名が変更となった。

12. 環境影響情報

12.1 生態毒性

魚毒性
止水式試験 LC50 - Pimephales promelas (ファットヘッドミノウ) - 460 mg/l
- 96 h
(US-EPA)
ミジンコ等の水生無脊
固定化 EC50 - Daphnia magna (オオミジンコ) - 230 mg/l - 48 h
椎動物に対する毒性
(OECD 試験ガイドライン 202)
藻類に対する毒性
止水式試験 ErC50 - Pseudokirchneriella subcapitata (緑藻) - 700 mg/l - 72 h
(OECD 試験ガイドライン 201)

12.2 残留性・分解性

生分解性
好気性 - 曝露時間 14 d
結果: 92 - 96 % - 易分解性。
(OECD テスト ガイドライン 301C)
好気性 - 曝露時間 21 d
結果: 95 - 97 % - 易分解性。
(OECD テスト ガイドライン 301A)
生化学的酸素要求量
1,550 mg/g
(BOD)
備考: (Lit.)
理論上の酸素要求
2,515 mg/g
(量)
備考: (IUCLID)
BOD/ThBOD比
62 %
備考: (Lit.)

12.3 生体蓄積性

データなし

12.4 土壌中の移動性

データなし

12.5 PBT および vPvB の評価結果

化学物質安全性評価が必要ではない/行っていないため、PBT/vPvB評価データはない。

12.6 内分泌かく乱性

データなし

12.7 他の有害影響

生態系に関する追加情 データなし

13. 廃棄上の注意

13.1 廃棄物処理方法

製品
内容物及び容器は、関連法規及び各自治体の条例等の規制に従い、産業廃棄物として適切に処理すること。

14. 輸送上の注意

14.1 国連番号

ADR/RID (陸上規制): -    IMDG (海上規制): -    IATA-DGR (航空規制): 3334

14.2 国連輸送名

ADR/RID (陸上規制): 非危険物
IMDG (海上規制): Not dangerous goods
IATA-DGR (航空規制): Aviation regulated liquid, n.o.s. (Benzyl alcohol)

14.3 輸送危険有害性クラス

ADR/RID (陸上規制): -    IMDG (海上規制): -    IATA-DGR (航空規制): 9

14.4 容器等級

ADR/RID (陸上規制): - IMDG (海上規制): - IATA-DGR (航空規制): III

14.5 環境危険有害性

ADR/RID: 非該当 IMDG 海洋汚染物質(該当・非該当): IATA-DGR (航空規制): 非該当
非該当

14.6 特別の安全対策

なし

14.7 混触危険物質

多様なプラスチック

15. 適用法令

労働安全衛生法

名称等を表示すべき危険物及び有害物(法第57条第1項、施行令第18条第1号、第2号別表第9) 名称等を通知すべき危険物及び有害物(法第57条の2、施行令第18条の2第1号、第2号別表第9) 危険性又は有害性等を調査すべき物(法第57条の3)

化学物質排出把握管理促進法(PRTR法)

該当しない

毒物及び劇物取締法

該当しない

消防法

第4類 引火性液体 第三石油類 非水溶性(法第2条第7項危険物別表第1・第4類)

大気汚染防止法

有害大気汚染物質に該当する可能性がある物質(中央環境審議会第9次答申)

海洋汚染防止法

有害液体物質(Y類同等の物質)(環境省告示第148号第2号)

16. その他の情報

略語と頭字語

ADR: 道路による危険物の国際輸送に関する欧州協定
CAS: ケミカルアブストラクトサービス
EC50: 有効濃度 50%
IATA:国際航空運送協会
IMDG: 国際海上危険物
LC50: 致死濃度 50%
LD50: 致死量 50%
RID: 鉄道による危険物の国際運送に関する規則
STEL: 短期暴露限度
TWA: 時間加重平均

参考文献

【1】労働安全衛生法 ウェブサイト https://www.mhlw.go.jp
【2】化学物質審査規制法(化審法)https://www.env.go.jp
【3】化学物質排出把握管理促進法(PRTR法) https://www.chemicoco.env.go.jp
【4】NITE化学物質総合情報提供システム (NITE-CHRIP)https://www.nite.go.jp/
【5】カメオケミカルズ公式サイト http://cameochemicals.noaa.gov/search/simple
【6】ChemIDplus、ウェブサイト http://chem.sis.nlm.nih.gov/chemidplus/chemidlite.jsp
【7】ECHA - 欧州化学物質庁、ウェブサイト https://echa.europa.eu/
【8】eChemPortal - OECD 化学物質情報グローバルポータル、ウェブサイトhttp://www.echemportal.org/echemportal/index?pageID=0&request_locale=en
【9】ERG - 米国運輸省による緊急対応ガイドブック、ウェブサイトhttp://www.phmsa.dot.gov/hazmat/library/erg
【10】有害物質に関するドイツ GESTIS データベース、ウェブサイトhttp://www.dguv.de/ifa/gestis/gestis-stoffdatenbank/index-2.jsp
【11】HSDB - 有害物質データバンク、ウェブサイト https://toxnet.nlm.nih.gov/newtoxnet/hsdb.htm
【12】IARC - 国際がん研究機関、ウェブサイト http://www.iarc.fr/
【13】IPCS - The International Chemical Safety Cards (ICSC)、ウェブサイトhttp://www.ilo.org/dyn/icsc/showcard.home
【14】Sigma-Aldrich、ウェブサイト https://www.sigmaaldrich.com/
免責事項:

本MSDS中の情報は指定された製品にのみ適用され、特に規定がない限り、本製品とその他の物質の混合物には適用されません。本MSDSは、製品使用者の適切な専門的なトレーニングを受けた者にのみ製品安全情報を提供します。本MSDSの使用者は、本SDSの適用性について独自に判断しなければならない。本MSDSの著者は、本MSDSの使用によるいかなる傷害にも責任を負わない。

推奨製品
3,5-ビス(トリフルオロメチル)安息香酸 SDS p-アミノベンジルアルコール SDS 4-(メチルチオ)ベンジルアルコール SDS (S)-(-)-3-クロロ-1-フェニル-1-プロパノール 塩化物 SDS 塩化ベンジル SDS ベンジルトリエチルアンモニウムクロリド SDS 4-ヒドロキシベンジルアルコール SDS DL-α-リポ酸 SDS ベラトリルアルコール SDS (R)-4-ブロモ-Α-メチルベンジルアルコール SDS