安全データシート

1,4-ジクロロベンゼン

改訂日:2024-01-24版番号:1

1. 化学品及び会社情報

製品識別子

  • 製品名: 1,4-ジクロロベンゼン
  • CB番号: CB9329690
  • CAS: 106-46-7
  • 同義語: パラジクロロベンゼン,p-ジクロロベンゼン

物質または混合物の関連する特定された用途、および推奨されない用途

  • 関連する特定用途: 防虫・防臭剤 (衣料用防虫剤,トイレの防臭剤)、樹脂 (ポリフェニレンスルフィド) 合成原料、農薬・樹脂添加剤 (紫外線吸収剤 )中間体合成原料 (NITE初期リスク評価書)
  • 推奨されない用途: なし

会社ID

  • 会社名:Chemicalbook
  • 住所:北京市海淀区上地十街匯煌国際1号棟
  • 電話:400-158-6606

2. 危険有害性の要約

GHS分類

分類実施日(物化危険性及び健康有害性)
GHS改訂4版を使用
H28.03.18、政府向けGHS分類ガイダンス(H25年度改訂版(ver1.1))を使用
健康に対する有害性
特定標的臓器毒性 (反復ばく露)   区分1 (神経系、肝臓、血液系)、区分2 (呼吸器、腎臓)
特定標的臓器毒性 (単回ばく露)   区分1 (中枢神経系、血液系、肝臓)、区分3 (気道刺激性)
生殖毒性   区分2
発がん性   区分2
皮膚感作性   区分1
眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性   区分2
分類実施日(環境有害性)
環境に対する有害性はH18.3.31、GHS分類マニュアル(H18.2.10 版)を使用
環境に対する有害性
水生環境有害性 (長期間)   区分1
水生環境有害性 (急性)   区分1

ラベル要素

絵表示又はシンボル
GHS07GHS08GHS09
注意喚起語
危険
危険有害性情報
水生生物に非常に強い毒性
れ: 腎臓
長期にわたる、または反復暴露による臓器の障害のおそ
臓 呼吸器系 神経系
長期にわたる、または反復暴露による臓器の障害: 肝
臓器の障害: 肝臓 血液系
生殖能または胎児への悪影響のおそれ
発がんのおそれの疑い
遺伝性疾患のおそれの疑い
アレルギー性皮膚反応を起こすおそれ
眼刺激
皮膚刺激
注意書き
[安全対策]
使用前に取扱説明書を入手すること。
すべての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。
粉じん、煙、ミスト、蒸気、スプレーを吸入しないこと。
環境への放出を避けること。
この製品を使用する時に、飲食または喫煙をしないこと。
汚染された作業衣は作業場から出さないこと。
取扱い後は手や顔をよく洗うこと。
保護手袋、保護衣、保護面を着用すること。
[応急措置]
皮膚に付着した場合:多量の水と石鹸で洗うこと。皮膚刺激または発疹が生じ
た場合:医師の診断、手当てを受けること。汚染された衣類を脱ぐこと。そし
て再使用する場合には洗濯をすること。
眼に入った場合:水で数分間注意深く洗うこと。コンタクトレンズを着用して
いて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。眼の刺激が続
く場合は、医師の診断、手当てを受けること。
暴露または暴露の懸念がある場合:医師に連絡すること。
漏出物を回収すること。
[保管]
施錠して保管すること。
[廃棄]
内容物や容器を、都道府県知事の許可を受けた専門の廃棄物処理業者に委託す
ること。

3. 組成及び成分情報

  • 化学物質/混合物の区別: : 化学物質
  • 化学名又は一般名: : 1,4-ジクロロベンゼン
  • 濃度又は濃度範囲: : >99.0%(GC)
  • CAS RN: : 106-46-7
  • 化学式: : C6H4Cl2
  • 官報公示整理番号 化審法: : (3)-41
  • 官報公示整理番号 安衛法: : 公表化学物質

4. 応急措置

吸入した場合:

ること。
空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。医師に連絡す

皮膚に付着した場合:

洗うこと。医師に連絡すること。
直ちに、汚染された衣類をすべて脱ぐこと、取り除くこと。多量の水と石鹸で

目に入った場合:

て洗うこと。医師に連絡すること。
水で数分間注意深く洗うこと。コンタクトレンズを容易にはずせる場合は外し

飲み込んだ場合:

医師に連絡すること。口をすすぐこと。

応急措置をする者の保護:

救助者はゴム手袋、密閉ゴーグルなどの保護具を着用する。

5. 火災時の措置

適切な消火剤:

粉末, 泡, 水噴霧, 二酸化炭素

特有の消火方法:

消火作業は、風上から行い、周囲の状況に応じた適切な消火方法を用いる。関係者以外は安全な場所に退去させる。周辺火災時、移動可能な容器は、速やかに安全な場所に移す。

消火を行う者の保護:

消火作業の際は、必ず保護具を着用する。

6. 漏出時の措置

人体に対する注意事項、保護具及び緊急時措置:

る。
漏出した場所の周辺に、ロープを張るなどして関係者以外の立入りを禁止す
漏出場所の風上から作業し、風下の人を退避させる。
個人用保護具を着用する。

環境に対する注意事項:

環境への悪影響が懸念されるため、河川等へ排出されないよう注意する。

封じ込め及び浄化の方法及び機材:

付着物、回収物などは、関係法規に基づき速やかに処分する。
粉塵の飛散に注意しながら掃き集め、密閉容器に回収する。

7. 取扱い及び保管上の注意

取扱い

技術的対策:
取扱いは換気のよい場所で行う。適切な保護具を着用する。粉塵が飛散しないように注意する。取扱い後は手や顔などをよく洗う。
注意事項:
できれば、密閉系で取扱う。粉塵やエアゾールが発生する場合には、局所排気を用いる。
安全取扱い注意事項:
あらゆる接触を避ける。

保管

適切な保管条件:
容器を密栓して冷暗所に保管する。施錠して保管する。酸化剤などの混触危険物質から離して保管する。
避けるべき保管条件:
安全な容器包装材料:
法令の定めるところに従う。

8. ばく露防止及び保護措置

設備対策:

密閉化した設備又は局所排気装置を設ける。取扱い場所の近くに洗眼及び身体洗浄用の設備を設ける。

管理濃度:

設定されていない。

許容濃度:

ACGIH TLV(TWA):
10 ppm
OSHA PEL(TWA):
75 ppm
日本産業衛生学会(TWA):
10 ppm

保護具

呼吸用保護具:
防塵・防毒マスク、自給式呼吸器、送気マスク等。
手の保護具:
不浸透性の手袋。
眼、顔面の保護具:
保護眼鏡(ゴーグル型)。状況に応じ保護面。
皮膚及び身体の保護具:
不浸透性の保護衣。状況に応じ、保護長靴。

9. 物理的及び化学的性質

物理的状態

形状
固体 (20℃、1気圧) (GHS判定)
無色 (HSDB (2015))
臭い
樟脳様のにおい (HSDB (2015))
臭いのしきい(閾)値
(下限) 0.18 ppm (ACGIH(7th, 2001))
pH
データなし

融点・凝固点

53℃ (ICSC (2003))

沸点、初留点及び沸騰範囲

174℃ (ICSC (2003))

引火点

66℃ (密閉式) (Merck (15th,2013))

蒸発速度(酢酸ブチル=1)

データなし

燃焼性(固体、気体)

データなし

燃焼又は爆発範囲

6.2~16 vol% (ICSC (2003))

蒸気圧

170 Pa (20℃) (ICSC (2003))

蒸気密度

5.08 (空気=1) (HSDB (2015))

比重(相対密度)

1.2475 (20℃,4℃) (ICSC (2003))

溶解度

水:79 mg/L (25℃) (HSDB(2015))

n-オクタノール/水分配係数

log P=3.44 (測定値) (SRC (2015))

自然発火温度

500℃までで自然発火性はない。 (HSDB(2015))

分解温度

> 480 ℃ (GESTIS (2015))

粘度(粘性率)

0.839 mPa.s (55℃)、0.668 mPa.s(79℃) (HSDB(2015))

10. 安定性及び反応性

反応性:

情報なし

化学的安定性:

適切な条件下においては安定。

危険有害反応可能性:

特別な反応性は報告されていない。

避けるべき条件:

情報なし

混触危険物質:

酸化剤, 還元剤, アルミニウム, これらの合金

危険有害な分解生成物:

一酸化炭素、二酸化炭素など

11. 有害性情報

急性毒性

経口
GHS分類: 区分外 ラットのLD50値として、500 mg/kg (環境省リスク評価書第1巻 (2002))、500~1,000 mg/kg (DFGOT vol. 4 (1992)、IARC 29 (1982))、> 2,000 mg/kg (EU-RAR (2004)、DFGOT vol. 4 (1992))、2,515 mg/kg (DFGOT vol. 4 (1992))、2,515 mg/kg (NICNAS (2000))、3,863 mg/kg (雄)、3,790 mg/kg (雌) (EPA Pesticide (2008)、ATSDR (2006)、NICNAS (2000)、DFGOT vol. 4 (1992))、4,000 mg/kg >、> 1,000 mg/kg (NTP TR 319 (1987))、1,625~3,863 mg/kg (ACGIH (7th, 2001))、2,515~3,863 mg/kg (NITE初期リスク評価書 (2005)) との10件の報告がある。2件が区分4に、5件が区分外 (うち4件が国連分類基準の区分5に該当する。) に、1件が分類できないに該当するために、最も多くのデータが該当する区分外 (国連分類基準の区分5) とした。なお、2件は複数のデータを取りまとめた値であったために、分類には採用しなかった。
経皮
GHS分類: 区分外 ラットのLD50値として、> 2,000 mg/kg (EU-RAR (2004)、DFGOT vol. 4 (1992))、> 6,000 mg/kg (EPA Pesticide (2008)、ATSDR (2006)、NITE初期リスク評価書 (2005)、ACGIH (7th, 2001)、NICNAS (2000)、DFGOT vol. 4 (1992))、及びウサギのLD50値として、> 5,010 mg/kg (ACGIH (7th, 2001)) との報告に基づき、区分外とした。
吸入:ガス
GHS分類: 分類対象外 GHSの定義における固体である。
吸入:蒸気
GHS分類: 分類対象外 GHSの定義における固体である。
吸入:粉じん及びミスト
GHS分類: 区分外 ラットのLC50値 (4時間) として、> 5.07 mg/L (NITE初期リスク評価書 (2005)、EU-RAR (2004)、NICNAS (2000)、DFGOT vol. 4 (1992)) 及び> 6.00 mg/L (EPA Pesticide (2008)) との報告に基づき、区分外とした。なお、被験物質が固体であるため、粉じんの基準値を適用した。

皮膚腐食性及び皮膚刺激性

GHS分類: 区分外 ウサギを用いた皮膚刺激性試験 (OECD TG 404) において、本物質500 mgを4時間適用した結果、軽度の紅斑がみられたが7日後に回復したとの記載がある (EU-RAR (2004)、NITE初期リスク評価書 (2005))。また、ウサギを用いた別の皮膚刺激性試験において、中等度から重度の紅斑がみられたが72時間後に回復し、皮膚一次刺激指数 (PⅡ) は2.9であったとの報告がある (EPA Pesticide (2008))。その他に本物質は皮膚に対して刺激性を有するとの記載がある (環境省リスク評価書第1巻 (2002))。以上、OECDテストガイドラインに従った試験の結果から区分外 (国連分類基準の区分3) とした。

眼に対する重篤な損傷性又は眼刺激性

GHS分類: 区分2 ウサギを用いた眼刺激性試験 (OECD TG 405) において、本物質500 mgを24時間適用した結果、結膜の発赤及び浮腫がみられたが72時間後には回復し、軽度の眼刺激性ありと報告されている (EU-RAR (2004)、NITE初期リスク評価書 (2005))。また、ウサギを用いた別の眼刺激性試験において、結膜炎、虹彩炎、角膜混濁、角膜血管新生がみられたが適用後13日の間に回復し、刺激性スコアが20 (最大値47) であったことから、中等度の刺激性と報告されている (EPA Pesticide (2008))。その他、ヒトの職業ばく露において重度の眼刺激性の報告 (NICNAS (2000)、ACGIH (7th, 2001)) や、眼に対して刺激性を有し眼球水晶体の混濁を著明に起こすとの記載がある (環境省リスク評価書第1巻 (2002))。以上、OECDテストガイドラインに従った試験の結果から区分2とした。なお、本物質はEU CLP分類において「Eye. Irrit. 2 H319」に分類されている (ECHA CL Inventory (Access on September 2015))。

呼吸器感作性

GHS分類: 分類できない データ不足のため分類できない。

皮膚感作性

GHS分類: 区分1 モルモットを用いたマキシマイゼーション試験の結果、24匹中14匹に感作性がみられ (評点1;9/24匹、評点2;4/24匹、評点3;1/24匹)、感作性ありと報告されている (EU-RAR (2004)、NITE初期リスク評価書 (2005))。また、ヒトでは、69歳の男性が本物質で処理した肘掛け椅子に皮膚接触し、アレルギー性紫斑病を発症した例が報告されている(NICNAS(2000))。以上より、区分1とした。

生殖細胞変異原性

GHS分類: 分類できない In vivoでは、マウスの優性致死試験で陰性、ラットの腎臓細胞を用いた小核試験、マウスの骨髄細胞を用いた小核試験で陽性/陰性の結果、マウスの末梢血赤血球を用いた小核試験で陰性、ラットの骨髄細胞を用いた染色体異常試験で陰性、ラットの腎臓、マウスの肝臓、肺、脾臓、腎臓、骨髄を用いたコメットアッセイで陽性、ラット及びマウスの肺、胃 を用いたDNA付加体形成試験で陽性、ラットの肝臓、腎臓を用いたDNA付加体形成試験で陽性/陰性の結果、ラットの腎臓、マウスの肝臓を用いた不定期DNA合成試験、ラットの肝臓及び腎臓、マウスの肝臓を用いた複製DNA合成試験で陽性である(NITE初期リスク評価書 (2005)、IARC 73 (1999)、ACGIH (7th, 2001)、ATSDR (2006)、EU-RAR (2004)、NICNAS (2000)、NTP TR 319 (1987))。In vitroでは、細菌の復帰突然変異試験、哺乳類培養細胞の遺伝子突然変異試験、マウスリンフォーマ試験、小核試験、姉妹染色分体交換試験では陰性結果が多いが陽性結果も存在し、哺乳類培養細胞の染色体異常試験では陰性、DNA損傷試験では陽性である (NITE初期リスク評価書 (2005)、IARC 73 (1999)、NTP TR 319 (1987)、ACGIH (7th, 2001)、ATSDR (2006)、EU-RAR (2004)、NICNAS (2000))。以上より、小核試験における陽性知見は再現性が認められず、あるいは標準的試験ではないことから、WOEに基づき問題となる遺伝毒性はないと判断されており (EU-RAR (2004))、ガイダンスにしたがい分類できないとした。

発がん性

GHS分類: 区分2 ヒトでは白血病5症例の報告が1件あるが、本物質への特異的なばく露と発がん性との関連性を評価可能な疫学研究は不十分とされている (NTP RoC (13th, 2014)、IARC 73 (1999))。実験動物では、ラット及びマウスを用いた強制経口投与による2年間発がん性試験において、ラットでは尿細管上皮細胞がんの頻度増加が雄に、マウスでは肝細胞腺腫、肝細胞がんの頻度増加が雌雄にそれぞれ認められた (IARC 73 (1999)、ACGIH (7th, 2001))。吸入経路では本物質の蒸気をラットに76週間、又はマウスに56週間吸入ばく露した試験では、いずれも腫瘍発生頻度の増加がみられなかった (IARC 73 (1999)、ACGIH (7th, 2001)) が、IARCは投与期間が短い点を指摘している (IARC 73 (1999))。しかし、ラット、又はマウスに本物質蒸気を2年間吸入ばく露した試験では、マウスの試験で肝細胞がん、組織球性肉腫の頻度増加が雄に、肝細胞がん、肝細胞腺腫、及び肺の細気管支/肺胞上皮がんの頻度増加が雌にみられたことが報告されている (厚労省委託がん原性試験結果 (Access on August 2015))。既存分類結果としては、IARCがグループ2Bに (IARC 73 (1999))、ACGIHがA3に (ACGIH (7th, 2001))、日本産業衛生学会が第2群Bに (産衛学会許容濃度の勧告 (2015))、NTPがRに (NTP RoC (13th, 2014))、EUが Carc. 2 に (EU-RAR (2004))、それぞれ分類している。以上より、本項は区分2に分類した。

生殖毒性

GHS分類: 区分2 ヒトでの生殖影響に関する情報はない。実験動物では、ラットを用いた吸入経路、又は経口 (強制経口) 経路における2世代生殖毒性試験において、いずれの経路でも親動物に一般毒性影響 (体重増加抑制、肝臓影響 (重量増加、肝細胞肥大)、腎臓影響 (重量増加、腎症) など (F0、F1の雌雄 (吸入)、F0、F1の雄 (経口)) が生じた用量で、F1、F2児動物に出生前後の死亡率増加、同腹児数の減少、体重低値、又は離乳時までの体重増加抑制、発達指標の遅延などがみられたが、いずれの世代の親動物にも生殖毒性影響は示されなかった (EU-RAR (2004)、NITE初期リスク評価書 (2005)、ATSDR (2006))。 発生毒性に関しては、妊娠ラット、又は妊娠ウサギの器官形成期に本物質の蒸気を吸入ばく露した試験において、最高用量 (508 ppm (ラット)、800 ppm (ウサギ)) まで親動物、胎児ともに異常は観察されなかった (EU-RAR (2004)、ACGIH (7th, 2001)、NITE初期リスク評価書 (2005)、ATSDR (2006))。また、妊娠ラットの器官形成期に強制経口投与した試験では、500 mg/kg/day以上で母動物に体重増加抑制がみられ、胎児には500 mg/kg/dayで骨格変異 (過剰肋骨) 頻度増加、1,000 mg/kg/dayで胎児重量減少がみられたのみであった (EU-RAR (2004)、ACGIH (7th, 2001)、NITE初期リスク評価書 (2005)、ATSDR (2006))。以上の実験動物による生殖発生毒性影響に関する知見に基づき、日本産業衛生学会は本物質を「生殖毒性物質第3群」に分類した (許容濃度の暫定値 (2014) の提案理由 (産衛誌 56 (2014)、許容濃度の勧告 (2015))。
以上、ラットを用いた吸入、及び経口経路での2世代生殖毒性試験結果からは、親動物の生殖能への有害影響はないが、親動物に一般毒性影響が発現した用量で児動物の出生時の生存児数、体重の低値、離乳までの成長遅延など生時及び生後に発生・発達への有害影響がみられたこと、並びに産衛学会による分類結果も区分2に該当することから、本項は「区分2」とした。 なお、旧分類 (平成21年度) ではラット経口投与2世代生殖毒性試験で、F1親動物に毒性が発現しない用量 (90 mg/kg/day) で児動物への有害影響がみられたとして、「区分1B」に分類されたが、F1親動物の 90 mg/kg/day 群においても雄に肝臓影響 (肝臓相対重量の増加) の記述があり (EU-RAR (2004))、今回の評価に際しては中用量から親動物に一般毒性影響の徴候が肝臓に発現しているものと考え、分類ガイダンスに従い分類した結果、分類区分を区分2に変更した。

特定標的臓器毒性(単回ばく露)

実験動物では、ラット経口投与 (区分2相当) で異常歩行、円背位、腎皮質の硝子滴増加 (雄ラット)、肝細胞空胞変性、肝ポルフィリン症 (雌ラット)、ラットの吸入ばく露 (区分1相当) で振戦、反射低下、自発運動亢進、立毛、振戦、反射消失、小葉中心性肝細胞肥大、肝細胞空胞化及び軽度壊死、雄では、腎臓皮質の硝子滴増加の報告がある (NITE初期リスク評価書 (2005)、環境省リスク評価書第1巻 (2002)、産衛学会許容濃度の提案理由書 (1998)、ACGIH (7th, 2001)、EU-RAR (2004)、NICNAS (2000))。 ヒトの経皮ばく露例での腎臓傷害は1例のみであり、経口や吸入により腎臓所見が見られないこと、実験動物の腎皮質の硝子滴増加は雄ラットのため、本物質の腎臓への影響は採用しなかった。 以上より、本物質の影響は、気道刺激性、中枢神経系、血液系、肝臓であり、区分1 (中枢神経系、血液系、肝臓)、区分3 (気道刺激性) とした。
GHS分類: 区分1 (中枢神経系、血液系、肝臓)、区分3 (気道刺激性) 本物質は気道刺激性がある (NITE初期リスク評価書 (2005)、環境省リスク評価書第1巻 (2002)、産衛学会許容濃度の提案理由書 (1998)、ACGIH (7th, 2001)、EU-RAR (2004)、NICNAS (2000)、DFGOT vol. 20 (2003))。ヒトの事例では、防虫剤結晶を経口摂取した 3 歳の男児の事故例で、咳き、黄疸、急性溶血性貧血、メトヘモグロビン尿、男性の密閉された部屋での吸入ばく露例で、眩暈、貧血、男性の経皮ばく露例で、腎臓傷害が報告されている (NITE初期リスク評価書 (2005)、環境省リスク評価書第1巻 (2002)、産衛学会許容濃度の提案理由書 (1998)、ACGIH (7th, 2001)、EU-RAR (2004)、NICNAS (2000)、IARC 73 (1999)、ATSDR (2006))。その他、本物質の急性症状は、肝臓への影響、頭痛、悪心、嘔吐、眩暈、中枢神経抑制、痙攣発作、興奮、衰弱、メトヘモグロビン血症、急性溶血性貧血との記載がある (ACGIH (7th, 2001)、IARC 73 (1999)、ATSDR (2006))。

特定標的臓器毒性(反復ばく露)

GHS分類: 区分1 (神経系、肝臓、血液系)、区分2 (呼吸器、腎臓) ヒトでは、蒸気ばく露により全身の点状出血、貧血、黄疸、肝臓の黄色萎縮、不安定歩行、知覚異常、言語障害 (EU-RAR (2004)、NITE初期リスク評価書 (2005)) がみられ、経口摂取において貧血 (血色素減少症、小球性貧血、ハインツ小体) (NITE初期リスク評価書 (2005))、不安定歩行、手の振るえ、精神的な活動の低下 (ACGIH (7th, 2001)) がみられている。 実験動物では、ラット、モルモットを用いた5~7ヶ月間吸入毒性試験において、158 ppm (0.965 mg/L) で肝臓、腎臓の重量増加、 肝細胞の変性及び水腫がみられ (EU-RAR (2004)、NITE初期リスク評価書 (2005)、ATSDR (2006))、ラット、モルモットを用いた16日間吸入毒性試験において、173 ppm (ガイダンス値換算:0.22 mg/L) で肺の間質の水腫、うっ血、肺胞の出血がみられている (ATSDR (2006))。ラットを用いた4週間強制経口投与毒性試験において、150 mg/kg/day (90日間換算値:46.7 mg/kg/day) で尿細管の拡張及び壊死を伴う尿細管腎症、300 mg/kg/day (90日間換算値:93.3 mg/kg/day) で肝臓の重量増加、腎臓の重量増加、小葉中心性肝細胞肥大がみられている(EU-RAR (2004)、NITE初期リスク評価書 (2005))。イヌを用いた1年間強制経口投与毒性試験において、50 mg/kg/dayでALT、AST、γ-GTP 活性の上昇、肝臓、腎臓の重量増加、肝細胞の肥大及び色素沈着、胆管の過形成及び肝臓の門脈性炎症、腎臓の褪色及び集合管上皮の空胞化がみられている (EU-RAR (2004)、NITE初期リスク評価書 (2005))。
以上のようにヒトにおいて、貧血、中枢神経系、肝臓に影響がみられ、実験動物では肺、肝臓、腎臓に影響がみられいずれも区分2の範囲であった。 したがって、区分1 (神経系、肝臓、血液系)、区分2 (呼吸器、腎臓) とした。

吸引性呼吸器有害性

GHS分類: 分類できない データ不足のため分類できない。

12. 環境影響情報

生態毒性:

魚類:
96h LC50:1.63 mg/L (Oryzias latipes)
甲殻類:
48h EC50:2.5 mg/L (Daphnia magna)
藻類:
72h EC50:7.1 mg/L (Selenastrum capricornutum)

残留性・分解性:

0% (by BOD) , 0% (by HPLC)

生体蓄積性(BCF):

33 - 72 (conc. 2 ug/L) , 47 - 190 (conc. 0.2 ug/L)*既存化学物質安全性点検による判定結果:低濃縮性

土壌中の移動性

オクタノール/水分配係数:
3.37
土壌吸着係数(Koc):
273
ヘンリー定数(PaM 3/mol):
2.74 x 102

オゾン層への有害性:

情報なし

13. 廃棄上の注意

処理施設がないなどの理由で廃棄できない場合は、許可を受けた産業廃棄物処理業者に委託する。
空容器を処分する時は、内容物を完全に除去した後に行う。
却炉で焼却する。
焼却処理する場合には、可燃性溶剤に溶解または混合した後、アフターバーナー及びスクラバーを備えた焼
地方条例や国内規制に従う。
適切な保護具を着用する。

14. 輸送上の注意

国連番号:

3077

品名(国連輸送名):

Environmentally hazardous substance, solid, n.o.s.

国連分類:

クラス9(その他の有害物件)

容器等級:

海洋汚染物質:

Y

輸送の特定の安全対策及び条件:

積み込み、荷崩れの防止を確実に行い、法令の定めるところに従う。
運搬に際しては容器に漏れのないことを確かめ、転倒、落下、損傷のないように

15. 適用法令

化審法

旧第2種監視化学物質 旧第3種監視化学物質 優先評価化学物質

労働安全衛生法

健康障害防止指針公表物質 名称等を表示すべき危険有害物(法第57条、施行令第18条別表第9) 名称等を通知すべき危険有害物(法第57条の2、施行令第18条の2別表第9) リスクアセスメントを実施すべき危険有害物(法第57条の3)

消防法

指定可燃物、可燃性固体類

水質汚濁防止法

指定物質

船舶安全法

有害性物質 有害性物質

大気汚染防止法

有害大気汚染物質に該当する可能性がある物質 揮発性有機化合物 法第2条第4項 (平成14年度VOC排出に関する調査報告)

海洋汚染防止法

有害液体物質 個品運送P

化学物質排出把握管理促進法(PRTR法)

第1種指定化学物質

外国為替及び外国貿易管理法

輸入貿易管理令第4条第1項第2号輸入承認品目「2の2号承認」 輸出貿易管理令別表第1の16の項 輸出貿易管理令別表第2

特定廃棄物輸出入規制法(バーゼル法)

廃棄物の有害成分・法第2条第1項第1号イに規定するもの

労働基準法(疾病、がん原性、etc)

疾病化学物質

16. その他の情報

略語と頭字語

TWA: 時間加重平均
STEL: 短期暴露限度
RID: 鉄道による危険物の国際運送に関する規則
LD50: 致死量 50%
LC50: 致死濃度 50%
IMDG: 国際海上危険物
IATA:国際航空運送協会
EC50: 有効濃度 50%
CAS: ケミカルアブストラクトサービス
ADR: 道路による危険物の国際輸送に関する欧州協定

参考文献

【1】労働安全衛生法 ウェブサイト https://www.mhlw.go.jp
【2】化学物質審査規制法(化審法)https://www.env.go.jp
【3】化学物質排出把握管理促進法(PRTR法) https://www.chemicoco.env.go.jp
【4】NITE化学物質総合情報提供システム (NITE-CHRIP)https://www.nite.go.jp/
【5】カメオケミカルズ公式サイト http://cameochemicals.noaa.gov/search/simple
【6】ChemIDplus、ウェブサイト http://chem.sis.nlm.nih.gov/chemidplus/chemidlite.jsp
【7】ECHA - 欧州化学物質庁、ウェブサイト https://echa.europa.eu/
【8】eChemPortal - OECD 化学物質情報グローバルポータル、ウェブサイトhttp://www.echemportal.org/echemportal/index?pageID=0&request_locale=en
【9】ERG - 米国運輸省による緊急対応ガイドブック、ウェブサイトhttp://www.phmsa.dot.gov/hazmat/library/erg
【10】有害物質に関するドイツ GESTIS データベース、ウェブサイトhttp://www.dguv.de/ifa/gestis/gestis-stoffdatenbank/index-2.jsp
【11】HSDB - 有害物質データバンク、ウェブサイト https://toxnet.nlm.nih.gov/newtoxnet/hsdb.htm
【12】IARC - 国際がん研究機関、ウェブサイト http://www.iarc.fr/
【13】IPCS - The International Chemical Safety Cards (ICSC)、ウェブサイトhttp://www.ilo.org/dyn/icsc/showcard.home
【14】Sigma-Aldrich、ウェブサイト https://www.sigmaaldrich.com/
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