急性毒性
経口
ラットのLD50値 2,490 mg/kg (ACGIH (7th, 2001)、PATTY (6th, 2012))、3,690 mg/kg (ACGIH (7th, 2001)) に基づき、区分外 (国連分類基準の区分5) とした。なお、今回の調査で入手したPATTY (6th, 2012) のデータを追加し、JIS分類基準に従い、区分5から区分外に変更した。
経皮
ウサギ LD50値> 5,000 mg/kg (PATTY (6th, 2012)、IUCLID (2000)) に基づき、区分外とした。
吸入:ガス
GHSの定義における液体である。
吸入:蒸気
データ不足のため分類できない。
吸入:粉じん及びミスト
データ不足のため分類できない。
皮膚腐食性及び皮膚刺激性
HSDB (Access on September 2013) には、「皮膚、眼、気道に刺激性」と記載されており、IUCLID (2000) では、ECガイドラインのGLP試験でウサギ及びヒトに対し中等度の刺激性を示したとしていることから区分2とした。
眼に対する重篤な損傷性又は眼刺激性
IARC (1986) には「ヒトに眼刺激性」との記載があり、HSDB (Access on September 2013) には「眼に刺激性あり」、「ウサギを用いた眼刺激性試験で眼瞼痙攣がみられた」との記載がある。回復性の記述はないため、以上の情報に基づき、区分2とした。
呼吸器感作性
呼吸器感作性: データ不足のため分類できない。
皮膚感作性
皮膚感作性: ACGIH (7th, 2001) でボランティアによる試験で本物質の8%濃度での感作性試験で反応がみられないとの記載があり、IUCLID (2000) でモルモットのビューラー法及びマキシマイゼーション法による試験で陰性、ヒトパッチテストで陰性であるが、ACGIH (7th, 2001) では感作性について十分なデータが得られていないと記載されていることから、分類できないとした。
生殖細胞変異原性
分類ガイダンスの改訂により「区分外」が選択できなくなったため、「分類できない」とした。In vivoでは、マウスの骨髄細胞及び末梢血赤血球を用いる小核試験 (IARC (1999)、JECFA TRS 909 (2002)、NTP DB (Access on June 2013)、IUCLID (2000))、マウスの骨髄細胞を用いる染色体異常試験 (IARC (1999)、JECFA TRS 909 (2002)、NTP DB (Access on June 2013))、マウスの骨髄細胞を用いる姉妹染色分体交換試験 (IARC (1999)、JECFA TRS 909 (2002)、NTP DB (Access on June 2013)、IUCLID (2000))、ラットの肝細胞を用いる不定期DNA合成試験及びラットの膵臓を用いるDNA鎖切断試験 (IARC (1999)、JECFA TRS 909 (2002)) でいずれも陰性である。In vitroでは、哺乳類培養細胞を用いるマウスリンフォーマ試験で陽性のデータがある (IARC (1999)、JECFA TRS 909 (2002)、NTP DB (Access on June 2013)) が、細菌の復帰突然変異試験 (IARC (1999)、ACGIH (7th, 2001)、JECFA TRS 909 (2002)、NTP DB (Access on June 2013)、IUCLID (2000)) 及び哺乳類培養細胞を用いる染色体異常試験 (IARC (1999)、JECFA TRS 909 (2002)、NTP DB (Access on June 2013)) で陰性である。
発がん性
ACGIH (1994) でA4、IARC 71 (1999) でグループ3に分類されていることより「分類できない」とした。分類ガイダンスに従い区分を変更した。
生殖毒性
データ不足のため分類できない。なお、発生毒性については、ラットを用いた経口 (強制) 経路での発生毒性試験において母動物でわずかな体重増加抑制がみられ、胎児体重の減少がみられた。奇形はみられていないが、母動物毒性及び児の低体重と関連したと考えられる内臓変異及び骨格変異がみられている (JECFA FAS 868 (1996))。また、ラットあるいはマウスを用いた13週間経口投与毒性試験において、雄の精子、生殖器に影響はみられず、マウスの雌で性周期の延長がみられたが低体重に起因したものであった (JECFA FAS 868 (1996)、NTP TR431 (1993)) との報告があり、PATTY (6th, 2012) では本物質はラット及びマウスの亜慢性毒性試験において生殖器官に関連した影響がみられないことを根拠として生殖毒性物質ではないと考えられるとしているとしている。しかし生殖能に対する影響について十分な試験が実施されていないことから、分類できないとした。
特定標的臓器毒性(単回ばく露)
ヒトに気道刺激性と麻酔作用を生じる (NTP TR250 (1986)、ACGIH (7th, 2001))、マウスに区分1のガイダンス値の範囲内 (1.3 mg/L) の蒸気ばく露においてうっ血及び肺水腫(ACGIH (7th, 2001))、中枢神経抑制 (NTP TR431 (1993)) が認められたとの記載より、区分1 (呼吸器)、及び区分3 (麻酔作用) に分類した。
特定標的臓器毒性(反復ばく露)
ヒトが本物質に連続吸入ばく露すると腎臓に障害を受ける (NTP TR250 (1986)) との記載より区分1 (腎臓) に分類した。一方、実験動物ではラットの2年間混餌投与試験では区分2を超える用量をばく露しても毒性影響は見られなかった (NTP TR431 (1993)) が、マウスの2年間混餌投与試験において、区分2のガイダンス値範囲内の用量(35-40 mg/kg/day) で、鼻腔の障害 (嗅上皮の萎縮及び変性、鼻粘膜下組織の過形成、鼻粘膜上皮の色素沈着) が見られた (NTP TR431 (1993)) との記述があり、安全側に立脚して有害性影響を評価する観点から、区分2 (鼻腔) とした。
吸引性呼吸器有害性
データ不足のため分類できない。