急性毒性
経口
ラットのLD50値として3件のデータ[55 mg/kg bw(NTP TOX 32(1993))、84.9 mg/kg(雄)、68.3 mg/kg(雌)(EPA RED (1997)]は全て区分3に該当する。なお、EU分類はT; R25(EC-JRC(ESIS) (Access on Nov. 2011))である。GHS分類:区分3
経皮
ラットのLD50値は >2000 mg/kg(EPA RED (1997))である。GHS分類:区分外(国連分類基準の区分5または区分外)
吸入:ガス
GHSの定義における固体である。GHS分類:分類対象外
吸入:蒸気
データなし。GHS分類:分類できない
吸入:粉じん及びミスト
ラットLC50値は0.0077 mg/L/4h(EPA RED (1997))である。GHS分類:区分1
皮膚腐食性及び刺激性
ウサギを用いた皮膚刺激性試験(Draize method)において、皮膚一次刺激指数(PII)は2≦PII≦5で、中等度~重度の刺激物(a moderate to severe dermal irritant)との評価結果(EPA RED (1997))に基づき、区分2に該当する。なお、EU分類はC;R34(EC-JRC(ESIS) (Access on Nov. 2011))である。GHS分類:区分2
眼に対する重篤な損傷性又は眼刺激性
ウサギ6匹に50 mgを適用直後から全動物が不穏状態となり、10分経過後に重度の発赤(壊死)、中等度の浮腫および多量の分泌物を伴う重度の刺激症状を呈した。適用1時間後に6匹全例が一律に示した反応から腐食性物質と判定された(HSDB (2010))ことにより区分1に該当する。GHS分類:区分1
呼吸器感作性
データなし。GHS分類:分類できない
皮膚感作性
本物質を含む抗菌剤Cytox3522の5%溶液のモルモットを用いたマキシマイゼーション試験において、本物質0.1%溶液による惹起処置で陽性率100%(20/20)を示し、強い感作性があるとの報告(NTP TOX 32(1993))から、区分1に該当する。なお、EU分類ではR43(EC-JRC(ESIS) (Access on Nov. 2011))である。GHS分類:区分1
生殖細胞変異原性
マウスに経口投与後の末梢血および腹腔内投与後の骨髄を用いた小核試験(体細胞in vivo変異原性試験)において、いずれも陰性の報告(NTP DB (Access on Nov. 2011)、EPA RED (1997))に基づき区分外に該当する。なお、in vitro試験としては、エームス試験で陰性(NTP DB (1986)、EPA RED (1997))、CHO細胞を用いた染色体異常試験で陽性(EPA RED (1997))、マウスリンフォーマ試験で陽性の結果(EPA RED (1997))がそれぞれ報告されている。GHS分類:区分外
発がん性
EPAの発がん性評価でグループDに分類されている(EPA RED (1997))ことから「分類できない」。なお、マウスを用いた78週の強制経口投与試験において雄の肺胞腺腫が有意に増加したとの報告、ラットを用いた2年間の強制経口投与試験において、雄に副腎の褐色細胞腫(良性腫瘍と悪性腫瘍の合計)の発生増加が認められた(ただし、統計学的に有意な増加ではない)との報告がある(EPA RED (1997))。GHS分類:分類できない
生殖毒性
ラットに経口投与による二世代生殖試験において、呼吸困難、立毛、腹部膨満の症状、および高用量群では死亡例が発生したが、交尾期間、性周期、受胎率、妊娠率などの生殖指標、および生存出生仔数、授乳期間中の仔の生存率などの仔の発生指標に悪影響は認められなかった(EPA RED (1997))。一方、ラットおよびウサギの器官形成期または妊娠期間中に経口投与した発生毒性試験において、ラットでは母動物の体重および摂餌量の僅かな低下、ウサギでは高用量の母動物に呼吸困難、運動失調、活動低下、正向反射の消失、振戦などの症状、および死亡例が認められたが、両動物種とも妊娠率、黄体数、着床数、着床前後の胚損失率などの指標に影響はなく、催奇形性を示す所見も得られなかった(EPA RED (1997))。以上より、親動物の性機能・生殖能に対する悪影響および仔の発生に及ぼす悪影響のいずれも見出されなかったことから区分外に該当する。GHS分類:区分外
特定標的臓器毒性(単回ばく露)
ラットの急性経口毒性試験(用量:50.1、63.1、79.4、 100、126、158 mg/kg)において、食欲と活動の低下、脱力と虚脱の増強が投与後14日間の観察期間で認められ、死亡は50 mg/kg以上の投与群で、投与後1~24時間で発生した(HSDB (2010))。また、ウサギの急性経皮毒性試験(用量:158、251、398、631、1000 mg/kg)では、食欲と活動の低下、進行性脱力、虚脱が投与後14日間で観察され、死亡は398 mg/kg以上の投与群で発生した(HSDB (2010))。両経路とも得られたデータから標的臓器の特定は困難であり、また、経口、経皮両経路共に用量はガイダンス値区分1相当であるが、詳細不明であることから区分2(全身毒性)とした。GHS分類:区分2(全身毒性)
特定標的臓器毒性(反復ばく露)
ラットの13週間経口投与試験(0、1、2、4、8、および16 mg/kg /day)において、雄4 mg/kg以上及び雌の8 mg/kg以上の投与群で、赤血球数、ヘモグロビン濃度およびヘマトクリット値の減少により裏付けられた貧血の所見が得られており(NTP DB C61916(1995))、イヌの52週間経口投与試験(0, 0.5, 2.0 or 5.0 mg/kg/day)では、5 mg/kg/day群で赤血球数、ヘモグロビン濃度およびヘマトクリット値が僅かながら低値を示した(EPA RED (1997))。これらの影響は用量的にガイダンス値区分1に相当することから、区分1(血液系)に該当する。なお、ラットの13週間経口投与試験では主に扁平上皮粘膜過形成と角質増殖から成る前胃への影響が認められているが、当該物質は強い刺激性物質であり、気道の変化は強制経口投与の手技による被験物質との接触と考察していることから、胃と気道の所見は分類に採用しなかった。GHS分類:区分1(血液系)
吸引性呼吸器有害性
データなし。GHS分類:分類できない