カナマイシン一硫酸塩 化学特性,用途語,生産方法
外観
白色, 結晶性粉末~粉末
種類
天然化合物としてのカナマイシン類
図1. カナマイシン類
硫酸塩ではない、天然化合物のカナマイシン類を試験用試薬として使用する場合も、名称に注意が必要です。末端置換基の違いによって、カナマイシンA、カナマイシンB、カナマイシンC、カナマイシンD等の固有の化合物名がつけられています。
なお、カナマイシン一硫酸塩およびカナマイシン硫酸塩の原料として用いられているカナマイシン類は、主にカナマイシンAです。試薬によっては5%程度のカナマイシンBを含む場合もあります。
性質
医薬品として使われるカナマイシンは、分子式C18H36N4O11・H2SO4、分子量582.58の有機化合物です。カナマイシンは白色~わずかに薄い黄色の粉末で、水に良く溶けるという性質を持ちます。やエーテルにはほとんど溶けません。
一般的にカナマイシンと言う場合は、医薬品を指します。医薬品としてのカナマイシンの別名は、カナマイシン一硫酸塩、硫酸カナマイシンなどがあります。試験用試薬として扱う場合のカナマイシンの名称は「カナマイシン一硫酸塩」で。
また、化合物中の硫酸分子の数が一分子ではない場合 (分子式: C18H36N4O11・nH2SO4) は、化合物名は「カナマイシン硫酸塩」となります。この場合、CAS番号は133-92-6です。カナマイシン硫酸塩とカナマイシン一硫酸塩の試薬としての効果や用途は、ほぼ同じと言えます。しかし、実験内容によって使い分ける必要がある場合は混合しないように注意が必要です。
溶解性
水に溶け、エタノール及びアセトンにほとんど溶けない。
解説
カナマイシン (英:Kanamycin) とは、アミノグリコシド系の抗生物質で、日本で最初に発見された抗生物質です。
カナマイシンは主に、抗生物質として感染性腸炎の治療に用いられるほか、試験用試薬として使用されています。カナマイシンは、1956年に梅澤濱夫らによって長野県で採取された土壌サンプル中の菌から発見されました。
人工的な全合成も可能ですが、工業的な大量合成には向かないため、工業生産には微生物を用いた生合成が一般的です。
用途
アミノグリコシド系抗生物質
です。細菌リボソーム 30S と 50S に結合し、
タンパク質合成阻害作用を示します。グラム
陽性・陰性菌に対して抗菌力を示します。
効能
抗生物質, タンパク質合成阻害薬
商品名
硫酸カナマイシン (Meiji Seikaファルマ)
確認試験
(1) 本品50mgを水3mLに溶かし,アントロン試液6mLを
加えるとき,液は青紫色を呈する.
(2) 本品及びカナマイシン一硫酸塩標準品20mgずつをそ
れぞれ水1mLに溶かし,試料溶液及び標準溶液とする.こ
れらの液につき,薄層クロマトグラフィーにより試
験を行う.試料溶液及び標準溶液5μLずつを薄層クロマトグ
ラフィー用シリカゲルを用いて調製した薄層板にスポットす
る.次にクロロホルム/アンモニア水(28)/メタノール混液
(2:1:1)の上澄液を展開溶媒として約10cm展開した後,薄
層板を風乾する.これに0.2%ニンヒドリン・水飽和1-ブタ
ノール試液を均等に噴霧し,100℃で10分間加熱するとき,
試料溶液から得た主スポット及び標準溶液から得たスポット
は紫褐色を呈し,それらのR f値は等しい.
(3) 本品の水溶液(1→5)に塩化バリウム試液1滴を加える
とき,白色の沈殿を生じる.
定量法
次の条件に従い,抗生物質の微生物学的力価試験法
の円筒平板法により試験を行う.
(ⅰ) 試験菌 Bacillus subtilis ATCC 6633を用いる.
(ⅱ) 培地 培地(1)の1)のⅰを用いる.
(ⅲ) 標準溶液 カナマイシン一硫酸塩標準品を乾燥し,そ
の約20mg(力価)に対応する量を精密に量り,薄めたpH6.0
のリン酸塩緩衝液(1→2)に溶かして正確に50mLとし,標準
原液とする.標準原液は5~15℃に保存し,30日以内に使用
する.用時,標準原液適量を正確に量り,pH8.0の0.1mol/L
リン酸塩緩衝液を加えて1mL中に20μg(力価)及び5μg(力価)
を含む液を調製し,高濃度標準溶液及び低濃度標準溶液とす
る.
(ⅳ) 試料溶液 本品約20mg(力価)に対応する量を精密に量
り,水に溶かして正確に50mLとする.この液適量を正確に
量り,pH8.0の0.1mol/Lリン酸塩緩衝液を加えて1mL中に
20μg(力価)及び5μg(力価)を含む液を調製し,高濃度試料溶
液及び低濃度試料溶液とする.
純度試験
(1) 重金属 本品2.0gをとり,第4法により操作し,
試験を行う.比較液には鉛標準液2.0mLを加える(10ppm以
下).
(2) ヒ素 本品2.0gをとり,第4法により検液を調
製し,試験を行う(1ppm以下).
(3) 類縁物質 本品0.30gを水に溶かし,正確に10mLと
し,試料溶液とする.別にカナマイシン一硫酸塩標準品
45mgを水に溶かし,正確に50mLとし,標準溶液とする.
これらの液につき,薄層クロマトグラフィーにより
試験を行う.試料溶液及び標準溶液1μLずつを薄層クロマト
グラフィー用シリカゲルを用いて調製した薄層板にスポット
する.次にリン酸二水素カリウム溶液(3→40)を展開溶媒と
して約10cm展開した後,薄層板を風乾する.これにニンヒ
ドリンの1-ブタノール溶液(1→100)を均等に噴霧した後,
110℃で10分間加熱するとき,試料溶液から得た主スポット
以外のスポットは,標準溶液から得たスポットより濃くない.
貯法
容器 密閉容器.
乾燥減量
4.0%以下(5g,減圧・0.67kPa以下,60℃,
3時間).
強熱残分
0.5%以下(1g).
使用上の注意
アルゴン封入
説明
Kanamycin was found by Umezawa et al. in the culture broth of Streptomyces kanamyceticus in 1957. It is produced with other components, kanamycins B (bekanamycin) and C, which are also separated during the purification. The compound shows much lower toxicity than the earlier aminoglycosides, streptomycin and neomycin, and strong activity against a wide range of gram-positive and gram-negative bacteria, including Mycobacterium. Kanamycin has been used clinically for treatment of such serious infections as dysentery, salmonellosis, and tuberculosis.
化学的特性
Off-white powder
使用
Kanamycin sulfate is an antibacterial agent similar to neomycin.
定義
A broadspectrum antibiotic.
一般的な説明
Kanamycin sulfate is a broad spectrum aminoglycoside-antibiotic derived from
Streptomyces kanamyceticus. It is used as an additive in culture media for the isolation of group D streptococci on Kanamycin Esculin Azide Agar and for selection of transformed plant cells containing the neomycin phosphotransferase on a kanamycin-medium. Kanamycin sulfate can also be used as a selection agent for cells transformed with kanamycin B resistance gene. It is recommended for use in cell culture applications at 2 mL/L.
安定性
溶液は非常に安定で、5℃で保存した場合、2日間は力価が変化しません。粉末試薬および水溶液が市販されており、どちらも冷蔵条件での保管が推奨されています。また、カナマイシンは光により変質するおそれがあります。
有害性
カナマイシンは医薬品として使用されている化合物であり、人体に対する危険性や有害性は低いといえます。しかし、試薬として使用する際には、保護メガネや保護手袋等の個人用保護具の着用が推奨されているため、注意が必要です。
使用用途
カナマイシンの主な使用用途は、医薬品 (抗生物質) や試験用試薬です。カナマイシンは、細菌のタンパク質合成の阻害効果やグラム陽性菌およびグラム陰性菌の発育の阻害効果を持ち、これらの効果によって抗菌作用の発揮が可能です。
特に、赤痢菌や大腸菌、腸内ビブリオ等に対して高い活性を示すため、ヒトの感染性腸炎の経口薬として用いられています。また、牛、豚、鶏、犬などの大腸菌、サルモネラ等による感染症 (肺炎、気管支炎、細菌性下痢症等) の治療のため、注射剤、飼料添加剤、乳房注入剤等として使用されます。
試験用試薬としては、薬剤耐性因子の研究用試薬や培養液添加剤、遺伝子工学用試薬、遺伝子クローニング試薬等、食品分析用試薬に利用可能です。
カナマイシン一硫酸塩 上流と下流の製品情報
原材料
準備製品