急性毒性
経口
【分類根拠】 (1)、(2) より、区分に該当しない。
【根拠データ】 (1) ラットのLD50:3,200 mg/kg (SIDS (2004)、HSDB (Access on Augast 2019)) (2) ラットのLD50: > 2,000 mg/kg (REACH登録情報 (Access on Augast 2019))
【参考データ等】 (3) ラットの最小致死量 (純度: 62.6% (不純物:ブチルフォスフェートのモノエステル体: 18.3%、その他トリエステル体等: 19.1%)) :> 2,000 mg/kg (厚労省既存化学物質毒性データベース (Access on June 2019))
経皮
【分類根拠】 データ不足のため分類できない。
吸入: ガス
【分類根拠】 GHSの定義における液体であり、ガイダンスの分類対象外に相当し、区分に該当しない。
吸入: 蒸気
【分類根拠】 データ不足のため分類できない。
吸入: 粉じん及びミスト
【分類根拠】 データ不足のため分類できない。
皮膚腐食性及び皮膚刺激性
【分類根拠】 (1) より、区分1とした。なお、新たなデータが得られたため区分を変更した。
【根拠データ】 (1) OECD TG 431に準拠し、人工皮膚モデル (EST-1000) を用いたin vitro皮膚腐食性試験において3分及び60分ばく露後、生存率はそれぞれ64%、2%であった (REACH登録情報 (Access on July 2019))。
【参考データ等】 (2) ウサギの耳に0.5 mLを8時間半閉塞投与した皮膚刺激性試験で強い刺激性 (Highly irritating) を示した (ACGIH (7th, 2009)、 SIDS (2004))。 (3) 本物質はヒトの皮膚を刺激する可能性がある (HSDB (Access on June 2019))。
眼に対する重篤な損傷性又は眼刺激性
【分類根拠】 (1)~(3) のデータ及び皮膚腐食性 (区分1) とされていることより区分1とした。なお、新たなデータが得られたため区分を変更した。
【根拠データ】 (1) ウサギに0.1 mLを投与した眼刺激性試験で角膜の腐食反応を生じた (ACGIH (7th, 2009))。 (2) ウサギの眼に0.1 mLを投与後、7日間観察した眼刺激性試験で角膜混濁、虹彩、結膜発赤、結膜浮腫の24/48/120時間の平均スコアはそれぞれ1.5、1、2、2.8であった。なお、7日後に完全には回復しなかった (REACH登録情報 (Access on July 2019))。 (3) OECD TG 431に準拠し、人工皮膚モデル (EST-1000) を用いたin vitro皮膚腐食性試験において腐食性物質 (区分1B~1C) と判定されている (REACH登録情報 (Access on July 2019))。
【参考データ等】 (4) 本物質はヒトの眼、鼻、喉、肺を刺激する可能性がある (HSDB (Access on June 2019))。
呼吸器感作性
【分類根拠】 データ不足のため分類できない。
皮膚感作性
【分類根拠】 (1)、(2) より、区分に該当しないとした。なお、新たなデータが得られたことから区分を変更した。
【根拠データ】 (1) OECD TG 406 (モルモットマキシマイゼーション試験) に準拠したモルモット皮膚感作性試験で皮膚反応は認められず、感作性陰性と判定された (REACH登録情報 (Access on July 2019))。 (2) モルモットの試験で感作性を示さない (ACGIH (7th, 2009))。
生殖細胞変異原性
【分類根拠】 In vivoのデータがなく、データ不足のため分類できない。
【根拠データ】 (1) in vitroでは、細菌の復帰突然変異試験及び哺乳類培養細胞の染色体異常試験で陰性の報告がある (SIDS (2004)、厚労省既存化学物質毒性データベース (Access on June 2019)、ACGIH (7th, 2009)、SIDS (2004))。
発がん性
【分類根拠】 データ不足のため分類できない。
生殖毒性
【分類根拠】 (1) において催奇形性はみられていない。しかし、受胎能および性機能に関する情報がなく、データ不足のため分類できない。被験物質の純度等を踏まえて分類根拠データを見直したことから分類結果が変更となった。
【根拠データ】 (1) 雌ラットの妊娠7~17日に経口投与した発生毒性試験において、母動物毒性、胎児毒性はみられていないとの報告がある (ACGIH (7th, 2009))。
【参考データ等】 (2) ラットに本物質を含む混合物 (本物質: 62.6%、ブチルフォスフェートのモノエステル体: 18.3%、トリエステル体等: 19.1%) を強制経口投与した反復投与毒性・生殖発生毒性併合試験 (OECD TG 422) において、親動物に死亡あるいは切迫屠殺 (雄: 3/10例、雌: 2/10例)、削瘦、深大呼吸、膀胱や胃粘膜のびらん、潰瘍、肝細胞腫大等がみられ、生殖影響として雌1例で全児死亡の難産がみられたものの明らかな生殖影響はみらず、発生影響としては出生児数、出生率、哺育4日生存児数及び生存率の減少傾向が報告されている (厚労省既存化学物質毒性データベース (Access on June 2019)、SIDS (2004)、ACGIH (7th, 2009))。
特定標的臓器毒性 (単回ばく露)
【分類根拠】 (1) より、区分3 (気道刺激性) とした。旧分類では (3) のラットの試験でみられた所見に基づき、区分3 (麻酔作用) としていたが、これらの所見は分類根拠としては不十分であり、また、被験物質中の本物質の純度が低く、不純物の影響については判断できない。したがって、旧分類から分類結果が変更となった。
【根拠データ】 (1) 本物質は中程度の強酸 (a moderately strong acid) であり、皮膚、眼、粘膜及び上気道を刺激すると考えられる (ACGIH (7th, 2009))。
【参考データ等】 (2) 本物質にばく露された労働者 (複数) が気道刺激と頭痛を訴えたとの情報がある (ACGIH (7th, 2001))。しかしながら、出典は私信で詳細不明であり、また、この情報はACGIH (7th, 2009) には記載されていない。 (3) ラットに本物質2,000 mg/kg (純度: 62.6% (不純物: ブチルフォスフェートのモノエステル体: 18.3%; その他トリエステル体等: 19.1%)) を単回強制経口投与した試験で、一過性の自発運動低下、呼吸深大化、眼瞼下垂、流涎、下腹部尿汚染、赤色尿が認められたが、死亡例はなく、剖検での異常所見もみられなかった (厚労省既存化学物質毒性データベース (Access on June 2019))。
特定標的臓器毒性 (反復ばく露)
【分類根拠】 (1) より、ラットへの経口投与により区分2の範囲で肝臓、副腎、膀胱への影響がみられたとの報告があるが、被験物質中の本物質の純度が低く、他の組成成分による影響の可能性も考えられることから、分類できないとした。被験物質の純度等を踏まえて検討し、旧分類から分類結果を変更した。
【参考データ等】 (1) ラットに本物質 (純度: 62.6% (不純物: ブチルフォスフェートのモノエステル体: 18.3%; その他トリエステル体等: 19.1%)) 30~1,000 mg/kg/dayを雄に44日間、雌に40~51日間強制経口投与した反復投与毒性・生殖発生毒性併合試験において、100 mg/kg/day (90日換算: 雄/雌: 49/44 mg/kg/day、区分2の範囲) あるいは300 mg/kg/day (90日換算: 雄/雌: 147/133 mg/kg/day、区分2超) 以上で膀胱や胃の粘膜の障害 (腺胃粘膜や前胃粘膜のびらん及び潰瘍) が、100 mg/kg/day以上で全児が死亡した雌では肝細胞の脂肪化及び副腎皮質細胞の空胞化がみられた (厚労省既存化学物質毒性データベース (Access on June 2019)、SIDS (2004)、ACGIH (7th, 2009))。
誤えん有害性*
【分類根拠】 データ不足のため分類できない。
* JIS Z7252の改訂により吸引性呼吸器有害性から項目名が変更となった。