急性毒性
経口
ラットのLD50値として、2,700 mg/kg、2,900 mg/kg (環境省リスク評価第11巻 (2013))、3,900±100 mg/kg (雄)、2,900±100 mg/kg (雌) (DFGOT vol. 6 (1994)、PATTY (6th, 2012))、5,100 mg/kg (EHC 115 (1990)、PATTY (6th, 2012))、2,900-7,500 mg/kg (NITE初期リスク評価書 (2008)、ECETOC TR95 (2005)) の6件の報告がある。ガイダンスの改訂により、最も多くのデータが該当する区分外 (国連分類基準の区分5) とした。
経皮
ウサギのLD50値として、10,227 mg/kg (環境省リスク評価第11巻 (2013))、10,300 mg/kg (ACGIH (7th, 2001)、PATTY (6th, 2012))、10,333 mg/kg (EHC 115 (1990))、10,500 mg/kg (DFGOT vol. 6 (1994)、PATTY (6th, 2012))、10,300-10,500 mg/kg (ECETOC TR95 (2005)、NITE初期リスク評価書 (2008)) との報告に基づき、区分外とした。
吸入:ガス
GHSの定義における液体である。
吸入:蒸気
ラットのLC50値 (2時間) として、>1,500 ppm (4時間換算値:> 1,061 ppm) (環境省リスク評価第11巻 (2013))、ラットのLC50値 (8時間) として、2,239 ppm (4時間換算値: 3,166 ppm) (環境省リスク評価第11巻 (2013)、1,499-2,239 ppm (4時間換算値:2,119-3,166 ppm) との報告に基づき、区分4とした。なお、LC50値が飽和蒸気圧濃度 (3,079 ppm) の90%より低いため、ミストを含まないものとしてppmを単位とする基準値を適用した。
吸入:粉じん及びミスト
データ不足のため分類できない。
皮膚腐食性及び皮膚刺激性
ウサギを用いたドレイズ試験において、本物質の24時間適用によりわずかな刺激性がみられたとの報告がある (ECETOC TR95 (2005)、NITE初期リスク評価書 (2008))。また、皮膚一次刺激性試験 (EEC試験法) において4時間の閉塞適用により刺激性はみられなかったとの報告や (ECETOC TR95 (2005)、NITE初期リスク評価書 (2008))、軽度の刺激性を示したとの報告が複数ある (NITE初期リスク評価書 (2008)、PATTY (6th, 2012))。以上より、区分外(国連分類基準の区分3) とした。
眼に対する重篤な損傷性又は眼刺激性
ウサギ4匹を用いた1次刺激性試験 (OECD TG 405、GLP) において、試験物質原液0.1 mLの適用により、スコア2の角膜混濁が1匹、スコア1又は2の結膜発赤が4匹、スコア1又は2の結膜浮腫が3匹に認められたが、いずれも適用後7日目にはほぼ消失し、最大平均スコアMMAS (AOIに相当) は15.0であったとの報告 (ECETOC TR 48 (1988)) から、区分2Bとした。なお、他にウサギを用いた皮膚刺激性試験は複数報告があり、刺激性なしや軽度の刺激性の結果が報告されている (NITE初期リスク評価書 (2008)、ECETOC TR95 (2005)、PATTY (6th, 2012))。
呼吸器感作性
データ不足のため分類できない。
皮膚感作性
データ不足のため分類できない。なお、モルモットを用いたMagnusson-Kligman試験において、本物質10%の感作誘発に対し感作性はみられなかったとの報告がある (ECETOC TR95 (2005)) が、試験条件等について詳細不明であるため分類に用いるには不十分なデータと判断した。情報の追加に伴い区分を変更した。
生殖細胞変異原性
ガイダンスの改訂により「区分外」が選択できなくなったため、「分類できない」とした。すなわち、in vivoでは、マウス骨髄細胞の小核試験で陰性 (NITE初期リスク評価書 (2008)、環境省リスク評価第11巻 (2013)) である。In vitroでは、細菌の復帰突然変異試験、哺乳類培養細胞の遺伝子突然変異試験、染色体異常試験、姉妹染色分体交換試験でいずれも陰性、陽性の結果が得られている (NITE初期リスク評価書 (2008)、環境省リスク評価第11巻 (2013)、NTP DB (Access on July 2014))。
発がん性
データ不足のため分類できない。
生殖毒性
ラットを用いた吸入経路での催奇形性試験において母動物毒性がみられない用量 (2,140 mg/m3) において内臓奇形 (心臓奇形)、骨格奇形がみられている (ECETOC TR95 (2005)、DFGOT vol. 6 (1994))。また、ウサギを用いた吸入経路での催奇形性試験において母動物毒性がみられる用量 (550 mg/m3) において外表、骨格、内臓奇形の増加、総吸収胚増加がみられている (ECETOC TR95 (2005)、DFGOT vol. 11 (1998))。 そのほか、ラットを用いた経皮経路での催奇形性試験において母動物毒性 (体重減少) がみられる極めて高用量 (5,923 mg/kg bw/day) において胎児体重減少、生存出生児数/腹の減少、出世前死亡率増加、内臓奇形 (心臓奇形)、骨格奇形がみられている (ECETOC TR95 (2005)、DFGOT vol. 11 (1998))。 以上のように、吸入経路のラットを用いた催奇形性試験において、母動物毒性がみられない用量で内臓奇形、骨格奇形がみられたとの報告がある。したがって、区分1Bとした。
特定標的臓器毒性(単回ばく露)
ラットに本物質 2,000 ppmを4時間吸入ばく露した結果、血尿がみられた (NITE初期リスク評価書 (2008))。ラットの2,900 mg/kgの経口投与で、血尿、血液で拡張した腎臓の肥大 (PATTY (6th, 2012)) が報告されている。また、胃腸管の刺激、軽度の肝臓傷害の報告がある (PATTY (6th, 2012))。その他、吸入ばく露で、眩暈、嗜眠、頭痛、意識喪失、経口摂取では、これらの症状に加え、嘔吐 (環境省リスク評価第11巻 (2013)) の記載がある。 また、対象は不記載であるが、本物質は血液に影響を与え、血球障害、貧血、高濃度の場合は腎臓障害、また、中枢神経系に影響を与え、高濃度では意識喪失 (環境省リスク評価第11巻 (2013))、中枢神経系、血液系、肺、腎臓への傷害性を有する (HSDB (Access on June 2014)) との記載がある。 以上の情報のすべてにおいて明確な区分を付け得る情報があるわけではないが、吸入ばく露の血尿のデータが区分1、経口投与のデータが区分2に相当するガイダンス値の範囲でみられた。ラットの経口投与の肝臓、腎臓の知見はガイダンス値を超えており、肺の知見は区分が不明であった。また、吸入ばく露での眩暈等の症状は区分が不明であり、症状の種類から麻酔作用が妥当と判断した。 以上より、区分1 (血液系)、区分3 (麻酔作用) とした。
特定標的臓器毒性(反復ばく露)
本物質は体内の様々な組織において、エステラーゼを介して迅速に加水分解され、エチレングリコールモノエチルエーテル (EGEE; CAS No.: 110-80-5) を生成する (CICAD 67 (2010)、NITE初期リスク評価 (2008))。EGEEはアルコール脱水素酵素により、エトキシアセトアルデヒドを経て、エトキシ酢酸 (EAA) へと酸化され、EAA又はそのグリシン抱合体として尿中へ排泄される (CICAD 67 (2010)、NITE初期リスク評価書 (2008))。このEAAがEGEE及びEGEEの酢酸エステルである本物質に共通した活性代謝物であり、本物質も吸収後は加水分解され活性代謝物のEAAに代謝されることから、EGEEと同様の毒性を発現すると考えられており、CICAD 67 (2010) では両物質は同列に扱われ、一括して評価されている。事実、本物質、EGEEともにヒト及び実験動物において、血液系、生殖器への影響がみられたとの知見があり (NITE初期リスク評価書 (2008)、CICAD 67 (2010))、ヒトではEAAへの代謝生成能がラットより高く、クリアランスもラットより遅延する傾向があることから、ヒトではEAAの生体内滞留時間が実験動物より長く、したがって、より低用量から毒性影響が発現する可能性が指摘されている (NITE初期リスク評価書 (2008)、CICAD 67 (2010))。 以上、本物質の分類はEGEEと同一とし、区分1 (血液系、精巣) とした。なお、旧分類では利用されなかった情報源を用いたため、分類結果が異なった。
吸引性呼吸器有害性
データ不足のため分類できない。