急性毒性
経口
GHS分類: 区分外 ラットのLD50値として、2,600 mg/kg、3,850 mg/kg (雄)、4,260 mg/kg (雄) (いずれもDFGOT vol. 4 (1992)) との報告に基づき、区分外 (国連分類基準の区分5) とした。
経皮
GHS分類: 区分4 ウサギのLD50値として、1.5 mL/kg (1,655 mg/kg) (雄)、2,990 mg/kg (いずれもDFGOT vol.4 (1992)) の2件の報告があり1件が区分4、1件が区分外 (国連分類基準の区分5) に該当する。有害性の高い区分を採用し、区分4とした。
吸入:ガス
GHS分類: 分類対象外 GHSの定義における液体である。
吸入:蒸気
GHS分類: 分類できない データ不足のため分類できない。
吸入:粉じん及びミスト
GHS分類: 分類できない データ不足のため分類できない。
皮膚腐食性及び皮膚刺激性
GHS分類: 区分2 ヒトにおける皮膚刺激性を示す記述 (環境省リスク評価第3巻:暫定的有害性評価シート (2004)、NITE初期リスク評価書 (2008))、及びウサギによる皮膚刺激性試験で軽度の皮膚刺激性を示したとの報告 (ACGIH (7th, 2014)) から、区分2とした。なお、EU CLP分類において本物質はSkin Irrit. 2 に分類されている(ECHA CL Inventory (Access on June 2017))。
眼に対する重篤な損傷性又は眼刺激性
GHS分類: 区分2 本物質は眼に対して刺激性があるとの記述 (NITE初期リスク評価書 (2008)、ACGIH (7th, 2014))、及びウサギを用いた眼刺激性試験において中等度の刺激性を生じたとの報告 (NITE初期リスク評価書(2008)) から、区分2とした。
呼吸器感作性
GHS分類: 分類できない データ不足のため分類できない。
皮膚感作性
GHS分類: 区分1 ヒトにおいて本物質の皮膚感作性を示す複数の事例の報告 (環境省リスク評価第3巻:暫定的有害性評価シート (2004)、NITE初期リスク評価書 (2008))、及びモルモットを用いた複数の皮膚感作性試験において陽性を示した (NITE初期リスク評価書 (2008)) ことから、区分1とした。なお、EU CLP分類において本物質はSkin Sens. 1 に分類されている(ECHA CL Inventory (Access on June 2017))。
生殖細胞変異原性
GHS分類: 分類できない ガイダンスの改訂により区分外が選択できなくなったため、分類できないとした。すなわち、in vivoでは、ラットの優性致死試験で陰性、マウスの骨髄細胞を用いた小核試験、ラットの骨髄細胞を用いた染色体異常試験で陰性、マウスの精巣を用いたDNA合成試験で陰性である (NITE初期リスク評価書 (2008)、ACGIH (7th, 2014)、PATTY (6th, 2012)、IARC 47 (1989))。In vitroでは、細菌の復帰突然変異試験で陽性、哺乳類培養細胞の遺伝子突然変異試験、染色体異常試験で陰性である (NITE初期リスク評価書 (2008)、ACGIH (7th, 2014)、PATTY (6th, 2012))。
発がん性
GHS分類: 区分2 ラットに本物質を2年間吸入ばく露した発がん性試験において、高用量 (12 ppm) 群では雌雄とも鼻腔前部に類表皮がん発生率の有意な増加が認められた (IARC 47 (1989)、ACGIH (7th, 2014))。この結果を基に、実験動物では発がん性の十分な証拠があるとして、IARCはグループ2Bに分類した (IARC 47 (1989)、IARC 71 (1999))。この他、ACGIHがA3に (ACGIH (7th, 2014))、EUがCarc. 1Bに (ECHA CL Inventory (Access on June 2017))、日本産業衛生学会が第2群Bに (許容濃度の勧告 (2016); 1991年提案) それぞれ分類している。EUの分類結果の根拠は不明で、他の複数の機関による分類結果に基づき、本項は区分2とした。
生殖毒性
GHS分類: 区分2 雄ラットに本物質を19日間吸入ばく露後に無処置雌と交配させ、雄の授精能を評価した試験において、1、5、及び12 ppmの各ばく露群で各1/8例に精細管の変性がみられ、高用量 (12 ppm) 群で授精率の低下が認められた (ACGIH (7th, 2014)、IARC 47 (1989)、環境省リスク評価第3巻:暫定的有害性評価シート (2004))。一方、妊娠ラットに本物質を吸入ばく露 (妊娠4~15日) した発生毒性試験では、母動物、胎児ともに12 ppm までの用量で影響はみられなかった (ACGIH (7th, 2014)、IARC 47 (1989)、環境省リスク評価第3巻:暫定的有害性評価シート (2004))。 以上、雄ラットでの授精率低下を基に、区分2とした。
特定標的臓器毒性(単回ばく露)
GHS分類: 区分1 (呼吸器)、区分3 (麻酔作用) ラット及びマウスの単回経口投与試験において、呼吸困難と中枢神経系抑制が起こり、死亡は呼吸筋の麻痺によるものであったとの報告がある (DFGOT vol. 4 (1992)、ACGIH (7th, 2014))。これらの症状がみられた用量の詳細な記載はないが、LD50値はラットで区分2超の3,850 mg/kg、マウスで区分2範囲の1,400 mg/kgと報告されており、区分2~区分2超の用量でみられた影響である可能性が高いと考えられる。また、ラット及びマウスを用いた単回吸入試験で、区分1範囲の100 ppm、4時間の吸入により、死亡例はなかったが、呼吸困難、流涙、鼻汁、流涎、空気嚥下がみられ、剖検では間質性肺炎と診断された肺の刺激所見が認められたとの報告がある (DFGOT vol. 4 (1992)、ACGIH (7th, 2014))。以上より区分1 (呼吸器)、区分3 (麻酔作用) とした。
特定標的臓器毒性(反復ばく露)
GHS分類: 区分1 (呼吸器) ヒトに関する情報はない。 実験動物については、ラットを用いた蒸気による24ヵ月間吸入毒性試験において、区分1のガイダンス値の範囲内 (蒸気) である12 ppm (0.075 mg/L) で鼻腔前部で呼吸粘膜上皮の炎症、扁平上皮化生がみられている (NITE初期リスク評価書 (2008)、環境省リスク評価第3巻:暫定的有害性評価シート (2004)、DFGOT vol. 4 (1992)、ACGIH (7th, 2014))。 以上から区分1 (呼吸器) とした。
吸引性呼吸器有害性
GHS分類: 分類できない データ不足のため分類できない。