急性毒性
経口
GHS分類: 分類できない データ不足のため分類できない。
経皮
GHS分類: 分類できない データ不足のため分類できない。
吸入:ガス
GHS分類: 分類対象外 GHSの定義における固体である。
吸入:蒸気
GHS分類: 分類対象外 GHSの定義における固体である。
吸入:粉じん及びミスト
GHS分類: 分類できない データ不足のため分類できない。
皮膚腐食性及び皮膚刺激性
GHS分類: 分類できない データ不足のため分類できない。なお、ニッケル化合物の皮膚刺激性は、硫酸ニッケル無水物で試験されており、ウサギ皮膚一次刺激性試験及びヒトボランティア試験で刺激性なしとの報告がある (NITE初期リスク評価書 (2008))。
眼に対する重篤な損傷性又は眼刺激性
GHS分類: 分類できない データ不足のため分類できない。なお、ニッケル化合物の眼刺激性は、硫酸ニッケル無水物で試験されており、ウサギ眼一次刺激性試験で刺激性なしとの記載がある (NITE初期リスク評価書 (2008))。
呼吸器感作性
GHS分類: 区分1A 日本産業衛生学会の許容濃度勧告で、ニッケル及びニッケル化合物は気道感作性第2群に分類されている (産衛誌 58 (2016))。また、硫酸ニッケルについて喘息発症事例から呼吸器感作性物質であることが示唆されている (IARC 49 (1990)、NITE初期リスク評価書 (2008))。以上より、区分1Aとした。
皮膚感作性
GHS分類: 区分1A 日本産業衛生学会の許容濃度勧告で、ニッケル及びニッケル化合物は皮膚感作性第1群に分類されている (産衛誌 58 (2016))。また、ボランティアによる硫酸ニッケル水溶液の閉塞適用で惹起した試験で、25人中12人にアレルギー反応がみられ、ヒトにおいて水溶性ニッケル化合物がアレルギー性皮膚炎を誘発すると結論されている (NITE有害性評価書 (2007)、NITE初期リスク評価書 (2008))。さらに、モルモットの皮膚感作性試験 (マキシマイゼーション法)において、硫酸ニッケルを用いた2つの試験があり、1つは皮膚に「わずか」~「明確」な紅斑をもたらし、もう1つでは感作性出現頻度は3%硫酸ニッケル水溶液の皮内注射で40%であった (NITE有害性評価書 (2007)、NITE初期リスク評価書 (2008))。同様に塩化ニッケルでも皮膚感作性試験 (マキシマイゼーション法) において感作性出現頻度は1%皮内注射で8/12 (66.7%) と陽性であった (NITE初期リスク評価書 (2008))。以上より、区分1Aとした。
生殖細胞変異原性
GHS分類: 分類できない データ不足のため分類できない。
発がん性
GHS分類: 区分1A 本物質自体の発がん性情報はない。しかし、IARCはニッケル、不溶性ニッケル化合物に加えて、硫酸ニッケル、塩化ニッケルなど可溶性ニッケル化合物に対してもヒトで肺、鼻腔のがんを生じる十分な証拠があるとIARCは結論し、ニッケル化合物全体をグループ1に分類した (IARC 100C (2012))。よって、本項は区分1Aとした。なお、ACGIHは不溶性ニッケル化合物をA1に、水溶性ニッケル化合物をA4に区別している (ACGIH (7th, 2001))。
生殖毒性
GHS分類: 区分2 本物質自体のデータはないが、可溶性ニッケル化合物のデータが利用可能と考えられる。すなわち、硫酸ニッケル六水和物をラットに混餌投与した3世代試験では、F0親動物には1,000 Ni ppm (50 mg Ni/kg/day相当) で体重増加抑制がみられただけであったが、 F1児動物には250~500 Ni ppm (12.5~25 Ni mg/kg//day相当) で死産児数の増加がみられた (NITE初期リスク評価書 (2008))。また、塩化ニッケル六水和物をラットに飲水投与した2世代試験では、F0親動物には 500 mg Ni/L (52 mg Ni/kg/day) で体重増加抑制がみられただけであったが、F1児動物には250 mg Ni/L (31 mg Ni/kg/day) 以上で生存児数の減少がみられた (NITE有害性評価書 (2008))。さらに、塩化ニッケル六水和物を妊娠マウスに妊娠6~13日に強制経口投与した発生毒性試験において、母動物毒性 (体重増加抑制、摂餌量及び摂水量の減少、着床部位数減少など) がみられる用量 (92 mg Ni/kg/day以上) より低用量 (46 mg Ni/kg/day) から用量依存的な胎児体重の低値が、母動物毒性発現量では加えて奇形発生 (水頭症、小眼球症、内反足、臍ヘルニアなど) 頻度の増加や骨化形成遅延が認められた (EFSA (2015))。 以上、可溶性ニッケル化合物の生殖発生毒性試験において、概ね親動物の一般毒性発現量で児動物に死産児数の増加、生存率低下、及びマウス胎児で奇形発生がみられたとの報告がある。日本産業衛生学会はニッケル及びニッケル化合物に対し、生殖毒性物質第3群に分類している (許容濃度の勧告 (2016))。よって、本項は区分2とした。
特定標的臓器毒性(単回ばく露)
GHS分類: 分類できない データ不足のため分類できない。本物質自体の単回ばく露のデータはない。なお、硝酸ニッケル無水物 (CAS番号 13138-45-9) (平成21年度分類) 及び他の可溶性ニッケル化合物である硫酸ニッケル六水和物 (CAS番号 10101-97-0) (平成25年度分類)、塩化ニッケル六水和物 (CAS番号 7791-20-0) (平成25年度分類) はいずれもデータ不足のため分類できないとされている。以上より、本物質はデータ不足のため分類できないとした。
特定標的臓器毒性(反復ばく露)
本物質についても同様の影響がみられると考えられることから、区分1 (呼吸器)、区分2 (中枢神経系、肝臓、生殖器 (男性)) とした。
GHS分類: 区分1 (呼吸器)、区分2 (中枢神経系、肝臓、生殖器 (男性)) 本物質についてのヒト及び実験動物に対する有害性の情報はない。 しかし、政府GHSモデル分類では、本物質と同様の可溶性ニッケルである塩化ニッケルが区分2 (肺、中枢神経系) (平成25年度分類結果)、硫酸ニッケル (Ⅱ) 六水和物 が区分1 (呼吸器)、区分2 (肝臓、精巣) (平成25年度分類結果) に分類されている。 塩化ニッケルでは、ラットを用いた90日間経口投与毒性試験において区分2に相当する35 mgNi/kg/dayで肺胞マクロファージの肺胞内蓄積に特徴付けられる肺の炎症及びII型肺胞上皮細胞の萎縮を根拠に肺を標的臓器とし、また、ラットを用いた77日間経口投与毒性試験において区分2に相当する20 mg Ni/kg/day (90日換算値:17.1 mgNi/kg/day) で知覚の低下、協調運動機能の低下及び食餌を報酬としたレバー押し反応の低下 (動機づけの低下による) がみられ、ラットを用いた90日間経口投与毒性試験において、区分2の上限である100 mgNi/kg/dayで流涎、協調運動失調、嗜眠等を根拠に中枢神経系を標的臓器としている。また、硫酸ニッケル (Ⅱ) 六水和物 では、ラット又はマウスに90日間又は2年間吸入ばく露した試験で区分1の範囲である0.0002 mgNi/L以下から、肺や気管支の炎症性変化、嗅上皮の萎縮等がみられたことを根拠に呼吸器を標的臓器とし、ラットに30日間経皮投与した試験において区分2に相当する用量 (ガイダンス値換算:20~30 mgNi/kg/day) で皮膚病変以外に肝臓への影響 (肝細胞腫脹、部分的壊死、類洞の膨張とうっ血)、精巣の病変 (精細管の水腫、変性) を根拠に肝臓及び精巣を標的臓器としている。
吸引性呼吸器有害性
GHS分類: 分類できない データ不足のため分類できない。