急性毒性
経口
【分類根拠】 (1)~(3) より、区分に該当しない。
【根拠データ】 (1) ラットのLD50:雄:4.15 mL/kg (4,810 mg/kg)、雌:4.05 mL/kg (4,700 mg/kg) (60%) (純物質換算値: 約2,800 mg/kg) (EU-RAR (2008)) (2) ラットのLD50:約 2,170 mg/kg (EU-RAR (2008)) (3) ラットのLD50:2,213 mg/kg (EU-RAR (2008))
経皮
【分類根拠】 (1) より、区分に該当しない。
【根拠データ】 (1) ラットのLD50:> 2,000 mg/kg (EU-RAR (2008))
【参考データ等】 (2) ラットのLD50:> 2,348 mg/kg (65%) (純物質換算値 : > 1,526 mg/kg) (EU-RAR (2008))
吸入: ガス
【分類根拠】 GHSの定義における固体であり、ガイダンスの分類対象外に相当し、区分に該当しない。
吸入: 蒸気
【分類根拠】 データ不足のため分類できない。
吸入: 粉じん及びミスト
【分類根拠】 (1) より、区分に該当しない。
【根拠データ】 (1) ラットの吸入 (7時間):12.05 mg/L (4時間換算値: 21.09 mg/L) で死亡なし (EU-RAR (2008))
皮膚腐食性及び皮膚刺激性
【分類根拠】 (1)~(3) より、区分に該当しないとした。
【根拠データ】 (1) 本物質580 mgをウサギの無傷あるいは擦過皮膚に4時間半閉塞適用した皮膚刺激性試験で、パッチ除去後、30分、24、48、72時間後のスコアは全て0であった (EU-RAR (2008))。 (2) 本物質0.5 mLをウサギの皮膚に24時間半閉塞適用した皮膚刺激性試験で、パッチ除去後、24及び72時間後のスコアは全て0であった。なお半数の動物は損傷皮膚とした (EU-RAR (2008))。 (3) 本物質55%液をウサギの皮膚に24時間閉塞適用した皮膚刺激性試験で、正常皮膚、損傷皮膚それぞれ2/6例にごく軽度の刺激性が観察されたが、72時間後には消失した。なお半数の動物は損傷皮膚とした (EU-RAR (2008))。
眼に対する重篤な損傷性又は眼刺激性
【分類根拠】 (1)~(5) より、区分に該当しないとした。
【根拠データ】 (1) 本物質116mgをウサギの眼に適用後、24、48、72時間及び7日後に観察した眼刺激性試験において、24~48時間のスコアは結膜発赤1を示した1例を除き、全て0であった (EU-RAR (2008))。 (2) 本物質をウサギの眼に適用した眼刺激性試験において最初の数時間軽度の結膜発赤、浮腫、分泌物が観察されたが角膜、虹彩には影響はなかった。結膜の反応は24時間後には消失した (EU-RAR (2008))。 (3) 本物質65%液をウサギの眼に適用後、1、 24、 48、72、96時間後及び7日後に観察した眼刺激性試験において、24/48/72時間の結膜発赤、浮腫の平均スコアは3例とも1.7及び1であり、角膜では1例のみ0.3を示した。その他は全て0であった (EU-RAR (2008))。 (4) 本物質60%液をウサギの眼に適用後、1、 24、 48、72、96時間後及び7日後に観察した眼刺激性試験において、24/48/72時間の結膜発赤平均スコアは2/3例で2を示したが、浮腫の平均スコアは0.7~1.7であり、角膜、虹彩では全て0であった (EU-RAR (2008))。 (5) 本物質65%液はヒトに対して軽度の眼刺激を示す (SIAP (2008))。
呼吸器感作性
【分類根拠】 データ不足のため分類できない。
皮膚感作性
【分類根拠】 (1)~(3) より、区分に該当しないとした。
【根拠データ】 (1) OECD TG 406に準拠したモルモットを用いた皮膚感作性試験 (ビューラー法、0.5mL、6時間閉塞適用、1回/週x3回)において、軽度の紅斑が2/10例にみられたが感作性とは結論されなかった (EU-RAR (2008))。 (2) OECD TG 406に準拠したモルモットを用いた皮膚感作性試験 (マキシマイゼーション法、皮内感作: 0.5%、貼付感作 : 原液、惹起: 30%)において陰性と判定された(EU-RAR (2008))。 (3) 本物質はヒトに対して非刺激性、非感作性物質である (SIAP (2008))。
生殖細胞変異原性
【分類根拠】 (1) よりマウス小核試験は陰性であったが、(2) より検討されたin vitro試験はいずれも陽性であり、in vivoへの影響を評価するにはデータが不十分であるため分類できない。
【根拠データ】 (1) in vivoでは、マウスの腹腔内投与による小核試験で陰性の報告がある (EU-RAR (2008))。 (2) in vitroでは、細菌の復帰突然変異試験、ヒトリンパ球の染色体異常試験、哺乳類培養細胞の遺伝子突然変異試験 (HGPRT) において陽性の報告がある (EU-RAR (2008))。
発がん性
【分類根拠】 (1)、(2) から区分2とした。
【根拠データ】 (1) 国内外の分類機関による既存分類では、EU CLPでCarc.2 (EU CLP分類 (Access on June 2019)) に分類されている。EUでは本物質は皮膚を介してばく露した場合、局所発がん性物質ではなく、肺腫瘍の発生増加を生じたことから、全身的な発がん物質と考えられている。In vivo変異原性の情報が不十分であるため、本物質が閾値のない発がん物質である可能性を否定できないとしている (EU-RAR (2008))。 (2) マウスに本物質 (13.8又は138 mg/匹) を2回/週の頻度で雄に105週間、雌に89週間経皮適用した試験で、気管支肺胞腺腫と同がんの合計の発生率の増加が雌雄の高用量群で認められた (雄は有意差あり。雌は有意差は無いが増加傾向あり)。なお、適用部位局所に腫瘍発生増加はみられなかった (EU-RAR (2008)、REACH登録情報 (Access on June 2019))。
生殖毒性
【分類根拠】 データ不足のため分類できない。
特定標的臓器毒性 (単回ばく露)
【分類根拠】 本物質のヒトでの単回ばく露に関する報告はない。実験動物では (1)、(2) より区分2相当の用量で歩行異常、嗜眠、及び運動失調がみられていることから、区分3 (麻酔作用) とした。
【根拠データ】 (1) ラットに単回経口投与した結果、1,600 mg/kg (区分2相当) で死亡 (雄1/5例、雌0/5例)、歩行異常、嗜眠、呼吸数減少、四肢蒼白、流涎がみられ、剖検で肺のうっ血又は出血、肝臓・脾臓・腎臓の蒼白化がみられた (EU-RAR (2008))。 (2) ラットに本物質の60%溶液を単回経口投与した結果、区分2相当の用量 (純品換算値: 1,152~1,986 mg/kg) で、鎮静、運動失調及び眼球突出がみられた (EU-RAR (2008))。
特定標的臓器毒性 (反復ばく露)
【分類根拠】 データ不足のため分類できない。
【参考データ等】 (1) ラットに被験物質 (本物質: 69.57%、水: 28.44%、1,3-ビス-トリメチルアンモニウムプロパノール-2-ジクロライド: 1.14%、2,3-ジヒドロキシプロピル-トリメチルアンモニウムクロライド: 0.63%) を28日間強制経口投与した試験において、1,085 mg/kg/day (90日換算: 338 mg/kg/day (本物質換算: 236 mg/kg/day)、区分2超) の雄で近位尿細管細胞の軽度から中等度の空胞形成、雌雄で近位尿細管上皮の軽微な過形成及び軽微から軽度の肥大がみられた (EU-RAR (2008))。この試験は1用量のみの試験であり、この用量よりも低い用量での影響については不明である。 (2) マウスに被験物質 (本物質: 65.79%、水: 32.36%、不明成分: 1.85%) を2回/週経皮適用した慢性毒性試験 (雄で105週間適用、雌で89週間適用) において、0.018 mL/匹/回 (575 mg/kg/週) 以上で適用部位の軽微から軽度の限局性表皮肥厚 (棘細胞増生)、角化亢進、0.18 mL/匹/回 (5,750 mg/kg/週) の雌で肝臓及び副腎の絶対・相対重量増加、右腎臓の絶対重量増加がみられた (EU-RAR (2008))。
誤えん有害性*
【分類根拠】 データ不足のため分類できない。
* JIS Z7252の改訂により吸引性呼吸器有害性から項目名が変更となった。