急性毒性
経口
ラットLD50値:1900mg/kg〔ACGIH(2004)〕、1870mg/kg〔PATTY (4th, 1994)〕、5400mg/kg〔PATTY (4th, 1994)〕、6500mg/kg〔PATTY(4th, 1994)、EHC 102(1990)〕、2200 mg/kg〔環境省リスク評価(第6巻、2008)〕より、区分4相当が2件、JIS分類基準の区分外相当が3件、したがって該当数の多いJIS分類基準の区分外(国連GHSの区分5または区分外)とした。
経皮
ウサギLD50値:6700mg/kg(PATTY(5th, 2001)、ACGIH(2007))、4060mg/kg(ACGIH(2007))、4000mg/kg(PATTY(5th, 2001))および4050mg/kg(EHC 102(1990))に基づき、JIS分類基準の区分外(国連GHS分類の区分5または区分外)とした。
吸入
吸入(ガス): GHSの定義における液体である。
吸入(蒸気): データ不足。 なお、ラットに4000 ppm (9.84 mg/L)を4時間ばく露により、6匹中2匹が死亡している(EHC 102 (1990)、PATTY (5th, 2001))。
吸入(ミスト): データなし
皮膚腐食性・刺激性
ウサギを用いた試験で極めて軽度の刺激性(very slightly irritating)あるいは刺激性なし(not irritating)との報告(PATTY (5th, 2001)、IUCLID(2000))に基づき、区分外とした。
眼に対する重篤な損傷・刺激性
ウサギの眼に適用した試験において重度の結膜炎、虹彩炎、角膜混濁および潰瘍形成が認められた(ACGIH (2004)、PATTY (5th, 2001))との報告があること、及びEU分類ではXi; R41とされていることから、区分1とした。
呼吸器感作性又は皮膚感作性
呼吸器感作性:データなし
皮膚感作性:モルモットのmaximization test(IUCLID(2000))およびマウスのear-swelling test(EHC No.102 (1990))の結果がいずれも感作性なし(not sensitizing)と報告されている。しかし、前者はList2の情報で、かつ具体的なデータの記載もなく、後者は分類のため推奨された方法ではない。したがって「分類できない」とした。なお、ヒトではパッチテストで陽性を示した1例の症例報告(EHC No.102 (1990))がある一方別途「感作性なし」との評価されたパッチテストの結果(IUCLID(2000))もある。
生殖細胞変異原性
ラットに経口投与後の骨髄を用いた染色体異常試験(体細胞in vivo変異原性試験)が実施され、染色体の構造異常と数的異常が報告されている(BUA Report No.190 (1998))が、証拠として不完全であり、試験法にも欠陥があると記述されているので分類には用いない。なお、Ames test、ハムスター培養細胞を用いた小核試験および姉妹染色分体試験(ACGIH (2007)、PATTY (5th, 2001)、 EHC 102 (1990))の結果はすべて陰性であった。
発がん性
ACGIH(2007)でA4に分類されていることから、区分外とした。なお、2つの動物試験において肝臓の肉腫の増加が認められているが、試験デザインの情報が適切ではなく、1用量の試験であることからA3とすることはできなかたとしている(ACGIH(2007))。
生殖毒性
ラットを用い、雄は6週間吸入ばく露後に非ばく露の雌と交配、雌は妊娠1日目~9日目に吸入ばく露を行った試験において、母動物の体重増加抑制や摂餌量の減少など一般毒性の発現用量で、雄の生殖能低下(ACGIH (2007))、吸収胚の顕著な増加(環境省リスク評価(第6巻、2008)、PATTY (5th, 2001))が報告されていることから区分2とした。
特定標的臓器・全身毒性(単回ばく露)
マウスで吸入ばく露により深い麻酔を起こしたとの報告(EHC 102 (1990)、PATTY (5th, 2001))があり、ウサギで経口投与による麻酔作用のED50値は1440 mg/kg bwとの記載 (EHC 102 (1990))もあり、区分3(麻酔作用)とした。また、ヒトにおける刺激性(目および鼻)を示すしきい値は4000~16000ppmとされていることから区分3(気道刺激性)とした。なお、単回ばく露後の主要な毒性影響は中枢神経系の抑制である(EHC 102 (1990))と記述され、また、唯一ヒトの中毒事例として、化粧品調製剤に溶剤とし含まれる本物質約半リットルを摂取後、意識消失を起こし4~5時間後に死亡したの報告(EHC 102 (1990))があるのみで、その他には有害影響の報告はない。
特定標的臓器・全身毒性(反復ばく露)
データ不足。なお、ラットに13週間あるいは1年半に及ぶ経口ばく露により、肝臓で脂肪変性、壊死、線維化など、骨髄の造血実質過形成などが報告されている(環境省リスク評価(第6巻、2008)、EHC 102 (1990)、 BUA Report No.190 (1998))が、いずれもガイダンス値範囲を超える用量での所見のため分類できない。
吸引性呼吸器有害性
3以上13を超えない炭素原子で構成された一級のノルマルアルコールであることから、国連GHSの区分2に該当するが、区分1を示すデータはなく、区分2を使用しないJIS準拠のガイダンス文書にしたがって分類できないとした。