急性毒性
経口
【分類根拠】 (1)、(2) より、区分3とした。
【根拠データ】 (1) ラットのLD50:202 mg/kg (環境省リスク評価第12巻 (2014)) (2) ラットのLD50:230 mg/kg (ATSDR (1992))
【参考データ等】 (3) ラットのLD50:220~620 mg/kg (CICAD 20 (2000)) (4) ラットのLD50:616 mg/kg (PATTY (6th, 2012))
経皮
【分類根拠】 (1) より、区分4とした。
【根拠データ】 (1) ラットのLD50: 1,024 mg/kg (環境省リスク評価第12巻 (2014))
【参考データ等】 (2) ラット及びモルモットのLD50: > 1,000 mg/kg (CICAD 20 (2000)) (3) モルモットのLD50: > 1,000 mg/kg (環境省リスク評価第12巻 (2014)) (4) ウサギのLD50: >5,000 mg/kg (環境省リスク評価第12巻 (2014)、ATSDR (1992))
吸入: ガス
【分類根拠】 GHSの定義における固体であり、ガイダンスにおける分類対象外に相当し、区分に該当しない。
吸入: 蒸気
【分類根拠】 データ不足のため分類できない。
吸入: 粉じん及びミスト
【分類根拠】 データ不足のため分類できない。
皮膚腐食性及び皮膚刺激性
【分類根拠】 (1) より、区分に該当しないとした。なお、旧分類では24時間適用のデータを分類根拠としていたため、区分を変更した。
【根拠データ】 (1) OECD TG 404相当のウサギ皮膚刺激性試験で刺激性を示さなかったと報告されている (CICAD 20 (2000)、BUA 75 (1992))。
【参考データ等】 (2) FDAガイドライン (24h適用) のウサギ皮膚刺激性試験で軽度刺激性と報告されている (CICAD 20 (2000)、BUA 75 (1992))。 (3) 147 mg/kgの用量で4時間適用したウサギ皮膚刺激性試験で影響はみられなかった (ATSDR (1992))。
眼に対する重篤な損傷性又は眼刺激性
【分類根拠】 (1)、(2) より、区分1とした。
【根拠データ】 (1) FDAガイドラインに従い原体を投与したウサギ眼刺激性試験で強度刺激性 (strongly irritating) と報告されている (CICAD 20 (2000))。 (2) 原体を投与したウサギの眼刺激性試験で腐食性を示し、持続性の結膜、虹彩への強度刺激、角膜混濁がみられると報告されている (EPA Pesticide (1996))。
【参考データ等】 (3) 原体を投与したウサギ眼刺激性試験 (OECD TG 405相当) で軽度刺激性 (slightly irritating) と報告されている (CICAD 20 (2000)、BUA 75 (1992))。
呼吸器感作性
【分類根拠】 データ不足のため分類できない。
皮膚感作性
【分類根拠】 (1)、(2) より、本物質が弱い皮膚感作性を有する可能性はあるものの、区分1には該当しないと判断された。
【根拠データ】 (1) モルモットを用いた皮膚感作性試験 (マキシマイゼーション法、OECD TG 406相当) で陽性率は25% (5/20) であった (CICAD 20 (2000)、BUA 75 (1992))。 (2) 複数の化学物質のばく露を受けた労働者にパッチテストを実施した結果、一部に陽性反応がみられたが、2-アミノ-4-クロロフェノールとの交差感作性が示唆された (環境省リスク評価第4巻:暫定的有害性評価シート (2005)、環境省リスク評価第12巻 (2014))。
生殖細胞変異原性
【分類根拠】 (1)、(2) より、専門家判断に基づき、ガイダンスにおける分類できないに相当し、区分に該当しないとした。
【根拠データ】 (1) in vivoではマウスの優性致死試験及び小核試験で陰性の報告がある (ATSDR (1992)、CICAD 20 (2000)、Kirkland et al., Regul. Tox. Pharm., 55, 33-42 (2009))。 (2) in vitroではマウスリンフォーマ試験及び細菌の復帰突然変異試験で陰性、哺乳類培養細胞の染色体異常試験で陽性の報告がある (ATSDR (1992)、NTP TR417 (1993)、EPA Pesticide (1996)、CICAD 20 (2000)、環境省リスク評価第12巻 (2014)、NTP DB (Access on May 2019))。
発がん性
【分類根拠】 (1) の既存分類結果から、ガイダンスに従い分類できないとした。
【根拠データ】 (1) 国内外の分類機関による既存分類では、EPA (1996)で、グループDとされている。
【参考データ等】 (2) マウスに本物質を18ヵ月間経皮適用した発がん性試験において、腫瘍の発生増加はみられなかった (NTP TR417 (1993)、環境省リスク評価第12巻 (2014))。
生殖毒性
【分類根拠】 本物質の生殖発生毒性の評価・分類に資する十分な情報はなく、分類できない。なお、分類根拠データを見直し区分を変更した。
【参考データ等】 (1) ラットを用いた経皮適用による2世代生殖毒性試験において、生殖発生影響はみられていない (環境省リスク評価第12巻 (2014)、CICAD 20 (2000)、EPA Pesticide (1996)、ATSDR (1992))。しかしながら、本知見はいくつかの不備のために暫定的としている (EPA Pesticide (1996))。 (2) 妊娠ラットの妊娠11日に経口投与した発生毒性試験において、母動物の死亡率増加、児動物の生存率の減少傾向がみられた (環境省リスク評価第12巻 (2014)、CICAD 20 (2000))。しかしながら、本試験では胎児の内臓奇形の検査を実施していない等不備があるとしている (CICAD 20 (2000))。 (3) 妊娠マウスの妊娠7~14日に1用量 (400 mg/kg/day) を経口投与した発生毒性試験において、母動物の生存率低下、一腹当たりの生存胎児の平均数の僅かな減少等がみられたが、催奇形性はみられていない (環境省リスク評価第12巻 (2014)、CICAD 20 (2000))。しかしながら、本試験は1用量のみであり、また、内臓奇形の検査を実施していない等の不備があるとしている (CICAD 20 (2000))。
特定標的臓器毒性 (単回ばく露)
【分類根拠】 (1) より、ヒトでの単回ばく露の場合に血液系への影響と中枢神経系抑制が生じると考えられることから、区分1 (血液系)、区分3 (麻酔作用) とした。情報の再検討により、旧分類から分類結果を変更した。
【根拠データ】 (1) ヒトでは本物質の吸入、経口、経皮ばく露により、頭痛、眠気、吐き気、メトヘモグロビン血症を示す唇、耳、爪の青色の変色 (チアノーゼ) を伴う呼吸抑制を生じるとの記載がある (NTP TR417 (1993))。
【参考データ等】 (2) ラットの急性経口投与試験のLD50値は220~620 mg/kgの範囲であり、毒性症状として頻呼吸と筋肉痙攣、剖検では濃赤色斑を伴う肺の変色が認められた (CICAD 20 (2000))。
特定標的臓器毒性 (反復ばく露)
【分類根拠】 (1)、(2) より区分1 (血液系)、区分2 (全身毒性) とした。
【根拠データ】 (1) ラットに本物質の粉じんを1~30 mg/m3の濃度 (ガイダンス値換算: 0.0002~0.0067 mg/L、区分1の範囲) で4週間吸入ばく露 (6時間/日、5日/週) した結果、メトヘモグロビン血症がみられた (ATSDR (1992)、CICAD 20 (2000)、環境省リスク評価第12巻 (2014))。 (2) ラットに25~140 mg/kg/dayを13週間強制経口投与した結果、25 mg/kg/day (区分2の範囲) 以上の雌雄で投与に関連した死亡がみられた。死亡動物では喘鳴、呼吸困難、蒼白、腹臥位、自発運動低下がみられ、剖検の結果、肝臓、腎臓、肺、副腎皮質でうっ血がみられた (ATSDR (1992)、EPA Pesticide (1996)、CICAD 20 (2000)、環境省リスク評価第12巻 (2014))。
【参考データ等】 (3) ラットに28日間経口投与した結果、70 mg/kg/day (90日換算: 22 mg/kg/day、区分2の範囲) で肝臓の脂肪変性、210 mg/kg/day (90日換算: 65 mg/kg/day、区分2の範囲) の雄で死亡 (1例)、肝臓の脂肪変性、210 mg/kg/day (90日換算: 65 mg/kg/day、区分2の範囲) 以上で自発運動低下、白血球数増加、630 mg/kg/day (90日換算: 196 mg/kg/day、区分2の範囲) で死亡、水腫様の肝細胞腫脹がみられた。肝臓でみられた所見は不明瞭であり、NOAELを特定できないとされている (CICAD 20 (2000)、環境省リスク評価第12巻 (2014))。
誤えん有害性*
【分類根拠】 データ不足のため分類できない。
* JIS Z7252の改訂により吸引性呼吸器有害性から項目名が変更となった。