急性毒性
経口
GHS分類: 区分4
ラットのLD50値として、846 mg/kg (雄)、591 mg/kg (雌) (EPA RED (2006))、1,000~1,600 mg/kg (DFGOT vol.2 (1991)) との報告に基づき、区分4とした。
経皮
GHS分類: 分類できない
データ不足のため分類できない。
吸入:ガス
GHS分類: 分類対象外
GHSの定義における固体である。
吸入:蒸気
GHS分類: 分類対象外
GHSの定義における固体である。
吸入:粉じん及びミスト
GHS分類: 分類できない
データ不足のため分類できない。
皮膚腐食性及び皮膚刺激性
GHS分類: 区分1
ヒトに対して、1%溶液 (pH 11.2~11.6) で重度の刺激性 (PATTY (6th, 2012))、1%あるいは5%溶液で重度の刺激性が認められたとの報告がある (DFGOT vol.2 (1991))。また、詳細は不明であるが、ウサギの皮膚刺激性試験においても重度の刺激性が認められたとの報告がある (DFGOT vol.2 (1991))。1%溶液でもpHが11.5前後であり、重度の刺激性がみられていることから、区分1とした。
眼に対する重篤な損傷性又は眼刺激性
GHS分類: 区分1
ヒトに対して、1%溶液 (pH 11.2~11.6) で重度の刺激性 (PATTY (6th, 2012))、0.5%溶液で角膜壊死が認められたとの報告がある (DFGOT vol.2 (1991))。また、詳細は不明であるが、ウサギの眼刺激性試験においても中等度の刺激性が認められたとの報告がある (JMPR (1999))。腐食性の可能性が示唆されることから、区分1とした。
呼吸器感作性
GHS分類: 分類できない
データ不足のため分類できない。
皮膚感作性
GHS分類: 区分外
モルモットを用いた皮膚感作性試験 (ビューラー法) において、陰性との報告がある (PATTY (6th, 2012))。また、ヒト (男女各100人) のパッチテスト (0.1~5%水溶液) で感作性なしとの記載 (PATTY (6th, 2012)) がある。その他、詳細は不明であるが、モルモットの皮膚感作性試験 (詳細不明) で陰性との報告 (EPA RED (2006)) や、モルモットとヒトに皮膚感作性はないとの評価 (JMPR (1999)) がある。よって、区分外とした。
生殖細胞変異原性
GHS分類: 分類できない
ガイダンスの改訂により区分外が選択できなくなったため、分類できないとした。すなわち、in vivoでは、ラット、マウスの優性致死試験、ラットの骨髄細胞を用いた染色体異常試験で陰性、ラット、マウスのDNA損傷試験では陽性、陰性の結果である (IARC 73 (1999))。In vitroでは、細菌の復帰突然変異試験で陰性、哺乳類培養細胞の遺伝子突然変異試験、マウスリンフォーマ試験で陽性、染色体異常試験で陽性、姉妹染色分体交換試験で陽性、陰性の結果である (IARC 73 (1999)、DFGOT vol.2 (1991)、NTP TR301 (1986)、NTP DB (Access on October 2016))。In vivo体細胞遺伝毒性試験で陽性結果があるが、再現性が認められていない。
発がん性
GHS分類: 区分2
ラットの混餌投与による2つの発がん性試験、及びマウスの混餌投与による1つの発がん性試験報告があり、ラットの2試験では膀胱腫瘍の頻度増加が雄で顕著に認められている (IARC 73 (1999)、PATTY (6th, 2012))。一方、マウスでは発がん性の証拠はなかった。IARCは実験動物では発がん性の十分な証拠があるとして、グループ2Bに分類した (IARC 73 (1999))。よって、本項は区分2とした。
生殖毒性
GHS分類: 区分外
本物質の遊離塩基体 (o-フェニルフェノール: OPP) をラットに混餌投与した2世代試験では、500 mg/kg/day の高用量で親動物に一般毒性影響 (雌雄に体重増加抑制、雄に尿汚染、膀胱結石、腎臓・膀胱・尿管の組織変化) がみられたが、生殖能への影響は認められなかった (PATTY (6th, 2012))。OPPを妊娠ラット、又は妊娠ウサギに強制経口投与 (ラット: 妊娠6~15日、ウサギ: 妊娠7~19日) した発生毒性試験では、母動物毒性としてラットでは体重増加抑制及び摂餌量減少がみられた700 mg/kg/dayまで、ウサギでは死亡 (13%)、消化管の肉眼所見及び腎臓における組織変化がみられた250 mg/kg/dayまで、いずれも胎児に異常は認められなかった (PATTY (6th, 2012))。この他、妊娠マウスに本物質を最大400 mg/kg/day、OPPを最大2,100 mg/kg/dayの用量で妊娠7~15日に強制経口投与した試験でも、母動物、胎児ともに体重の低値がみられたのみであった (DFGOT vol. 2 (1991))。
以上、本物質の遊離塩基体を実験動物に高用量経口投与しても一般毒性影響のみの発現で、生殖発生影響は全く検出されなかった。OPPのナトリウム塩である本物質も体内では容易に解離してOPPを生成するものと考えられることから、本項は区分外とした。