急性毒性
経口
ラットを用いた経口投与試験のLD50値7,600 mg/kg(Patty(5th, 2001))から区分外とした。
経皮
ウサギを用いた経皮投与試験のLD50値>10,200 mg/kg(Patty(5th, 2001))、12,600 mg/kg(IUCLID(2000))から区分外とした。
吸入
吸入(ミスト): ラットを用いた4時間吸入ばく露試験で、「2.1 mg/Lで死亡が確認されなかった」(Patty(5th, 2001))旨の記述からLC50値は>2.1 mg/Lと考えられる。本物質の飽和蒸気圧濃度(20℃)0.27 mg/Lより、粉じん基準を適用すると、区分を特定できないので分類できない。
吸入(蒸気): データがないので分類できない。
吸入(ガス): GHS定義上の液体であるため、ガスでの吸入は想定されず、分類対象外とした。
皮膚腐食性・刺激性
ウサギを用いた皮膚刺激性試験で「severe irritation」(Patty(5th, 2001))との記述があるが、試験時間が不明であり、一次文献の入手も不可である。IUCLID(2000)では、ウサギを用いた皮膚刺激性試験で、「moderate」と「slightly irritating」の結果が記述されている。「moderate」(IUCLID(2000))の評価の試験は24時間試験であり、4時間での刺激性の程度が不明なので採用できない。また、「slightly irritating」(IUCLID(2000))の評価の試験はDraize試験であり、PII=1.0と記述されているが、試験物質の濃度が不明である。いずれも試験条件の詳細が不明であり、評価結果も分かれているため、分類できない。
眼に対する重篤な損傷・刺激性
ウサギを用いた眼刺激性試験で、「眼への滴下24時間後に、虹彩炎や軽い結膜炎を引き起こすが、48時間で回復する」(Patty(5th, 2001))旨の記述があり、また、IUCLID(2000)では、ウサギを用いた2例の眼刺激性試験について、それぞれ「mild」、「slightly irritating」と評価している。以上より、区分2Bとした。
呼吸器感作性又は皮膚感作性
皮膚感作性:動物については、モルモットを用いたBuehler試験で「not sensitizing」(IUCLID(2000))との記述がある一方、「本物質はsensitizingとみなせる」(IUCLID(2000))旨の記述がある。ヒトについては、「ばく露された作業者にアレルギー性皮膚炎がみられた」(IUCLID(2000))旨の記述がある。いずれもList2の情報であり、ヒトと動物で評価が分かれているので分類できない。
呼吸器感作性:データがないので分類できない。
生殖細胞変異原性
in vitro変異原性試験(マウスリンフォーマ試験)で「陰性」(IUCLID(2000))、in vitro遺伝毒性試験(CHO細胞を用いた姉妹染色分体交換試験))で「陰性」(IUCLID(2000))の記述があるが、in vivo試験のデータがないので分類できない。
発がん性
主要な国際的評価機関による評価がなされておらず、データもないので分類できない。
生殖毒性
ラットを用いた14日間吸入ばく露試験で、「催奇形性のNOAELは最高用量の88.6 ppm(0.37 mg/L)である」(IUCLID(2000))旨の記述がある。また、マウスを用いた10日間吸入ばく露試験(GLP)でも、「催奇形性のNOAELは88.6 ppm(0.37 mg/L)である」(IUCLID(2000))旨の記述がある。しかし、一次文献の入手が困難であり詳細は不明である。また、生殖機能に対する影響についてのデータがないので分類できない。
特定標的臓器・全身毒性(単回ばく露)
ラットを用いた経口投与試験で、「臨床症状として、自発運動の抑制、立毛、かなりの体重減少がみられたが、剖検においては病理学的変化はみとめられなかった」(Patty(5th, 2001))旨、記述されている。また、ラットを用いた4時間吸入ばく露試験において、区分2のガイダンス値の範囲内で「けいれん、過呼吸がばく露3分後にみられ、出血性鼻炎や流涎が観察された」(Patty(5th, 2001))旨の記述がある。以上より、区分2(中枢神経系)とした。
特定標的臓器・全身毒性(反復ばく露)
ラットを用いた28日間吸入ばく露試験において、区分2のガイダンス値の範囲内のばく露量で、「雄のラットで炭化水素性腎症(hydrocarbon nephropathy)に関連した軽度の尿細管変性等が発現した」(IUCLID(2000))旨の記述がある。また、マウスを用いた28日間吸入ばく露試験において、「肝臓重量がばく露量に依存して増加し、区分2のガイダンス値の範囲内のばく露量で、雌雄ともに肝臓腫大、退色、肝細胞肥大が確認された」(IUCLID(2000))旨の記述がある。腎臓の症状は雄ラットに特異的な影響といえるので採用しない。以上より、区分2(肝臓)とした。
吸引性呼吸器有害性
データがないため分類できない。