急性毒性
経口
ラットのLD50値: 6,100、 5,200、> 5,000、5,900 mg/kg (SIDS (2003))、7,350 mg/kg (ACGIH (7th, 2001))、7,510 mg/kg (DFGOT vol 5 (1993)) より区分外とした。
経皮
ウサギのLD50値、13,000及び14,100 mg/kg (SIDS (2003)) に基づいて区分外とした。
吸入:ガス
GHSの定義における液体である。
吸入:蒸気
ラットのLC50値: > 6 mg/L/4h (> 1,626 ppm) あるいは> 24 mg/L/1h (> 3,252 ppm/4h) (SIDS (2003) からは区分を特定できないが、マウス雄のLC50値: 6,038 - 7,559 ppm/6h=7,395 - 9,258 ppm/4h (GLP準拠; (SIDS (2003)) に基づき区分4とした。なお、試験濃度が飽和蒸気圧濃度16,435 ppm (60.6 mg/L) の90%より低いので、分類にはミストを含まないものとして ppmV を単位とする基準値を適用した。
吸入:粉じん及びミスト
データ不足のため分類できない。
皮膚腐食性及び皮膚刺激性
ウサギの皮膚に24時間適用したドレイズ試験において明らかな刺激性を認めず、極めて軽度の刺激で皮膚一次刺激指数2の結果 (SIDS (2003)) に基づきJIS分類基準の区分外 (国連分類基準の区分3に該当) とした。
眼に対する重篤な損傷性又は眼刺激性
ウサギを用いた複数の試験でいずれも刺激性が低い、又は軽度との結果 (SIDS (2003)) に基づき、区分2Bとした
呼吸器感作性
呼吸器感作性: データ不足のため分類できない。
皮膚感作性
皮膚感作性: データ不足のため分類できない。モルモットを用いた試験 (modified Maguire test) (SIDS (2003)) で皮膚感作性なしの結果 (SIDS (2003)) が得られているが、OECDで承認された試験法ではなく、陽性率など詳細も不明なため分類できないとした。
生殖細胞変異原性
分類ガイダンスの改訂により「区分外」が選択できなくなったため、「分類できない」とした。すなわち、In vivoでは、マウスの骨髄赤血球を用いた小核試験で陰性と報告されている (SIDS (2003)、ACGIH (7th, 2013))。さらに、in vitroでは、エームス試験、チャイニーズハムスターの細胞株 (CHO、V79) を用いた遺伝子突然変異試験、染色体異常試験及び小核試験のいずれも陰性である (SIDS (2003)、ACGIH (7th, 2013))。
発がん性
分類ガイダンスの改訂に従い、ACGIH (7th, 2013) でA4に分類されているため、分類できないとした。
生殖毒性
マウスに経口ばく露 (SIDS (2003))、ラットには吸入ばく露による2世代生殖試験 (ACGIH (7th, 2013)、SIDS (2003)) において、ラットの高用量 (3,000 ppm) 群でのみ性周期延長、受胎率低下、児の生存数・同腹児数の低下などが認められたが、この所見については同用量で親動物に現れた鎮静症状の持続や対照群に比べ21%の体重減少などの著しい毒性に伴う影響として記述されているので、分類の根拠としなかった。その他の用量及びマウスの2世代試験では性機能及び生殖能に対する悪影響は認められていない。一方、ラット及びウサギの器官形成期に吸入ばく露した試験 (SIDS (2003))、また、ラット、マウス、及びウサギの妊娠期間に経口ばく露した試験 (SIDS (2003)) では、一部の試験で骨化遅延を認めたのみで、催奇形性を含め胎児の発生に対する悪影響はみられなかった。以上の結果から、複数の動物種と複数のばく露経路による試験でいずれも生殖及び発生に対する悪影響が示されなかったことから区分外とした。
特定標的臓器毒性(単回ばく露)
急性毒性試験における麻酔作用に関連する症状として、ラットの経口投与では傾眠、協調障害性歩行、運動失調 (ECETOC TR95 (2005))、吸入ばく露では横臥位、無反応、中枢神経抑制 (SIDS (2003))、また、ウサギの経皮投与では軽度の脱力、嗜眠から深麻酔の状態まで程度の異なる麻酔兆候 (ECETOC TR95 (2005)) がそれぞれ記載されている。これらの結果に基づき、区分3 (麻酔作用) とした。
特定標的臓器毒性(反復ばく露)
ラット、マウス及びウサギに高濃度の吸入ばく露により一過性の中枢神経抑制、肝臓に軽度の組織学的変化などが認められている (SIDS (2003)) が、13週間 (6時間/日) 吸入ばく露による各試験のNOEL又はNOAELは、ラットで300 ppm (1.11 mg/L) 及び1,000 ppm (3.68 mg/L)、マウスで1,000 ppm (3.68 mg/L)、ウサギで1,000 ppm (3.68 mg/L) であった (SIDS (2003))。NOELがいずれもガイダンス値範囲を超えていることから、吸入経路では区分外に該当する。また、経口及び経皮投与の場合も、ラットの35日間経口投与試験のNOELが919 mg/kg/日 (90日換算: 357 mg/kg/day) (SIDS (2003))、ウサギの90日間経皮投与試験のNOELが2 mL/kg/day (1,840 mg/kg/day) (SIDS (2003)) といずれもガイダンス値範囲を超えており、区分外に該当する。以上より、吸入、経口及び経皮の3経路とも区分外に該当していることから、区分外とした。
吸引性呼吸器有害性
データ不足のため分類できない。