急性毒性
経口
【分類根拠】
(1)、(2)より、区分4とした。
【根拠データ】
(1)ラット(雄)のLD50:1338 mg/kg(OECD TG 401、GLP)(CLH Report (2016))
(2)ラット(雌)のLD50:888 mg/kg(OECD TG 401 GLP)(CLH Report (2016))
経皮
【分類根拠】
(1)より、区分に該当しない。
【根拠データ】
(1)ラットのLD50:> 2,000 mg/kg(OECD TG 402、GLP)(CLH Report (2016))
吸入: ガス
【分類根拠】
GHSの定義における固体であり、区分に該当しない。
吸入: 蒸気
【分類根拠】
データ不足のため分類できない。
吸入: 粉じん及びミスト
【分類根拠】
データ不足のため分類できない。
【参考データ】
(1)ラットのLC50:> 1.88 mg/L(OECD TG 403、GLP)(CLH Report (2016))
(2)ラットのLC50:> 3.53 mg/L(OECD TG 402、GLP)(CLH Report (2016))
皮膚腐食性及び皮膚刺激性
【分類根拠】
(1)、(2)より、区分に該当しない。
【根拠データ】
(1)ウサギ(n=6)を用いた皮膚刺激性試験(OECD TG 404相当、GLP、半閉塞、4時間適用、72時間観察)において、2例で1時間後に軽微な紅斑がみられたが、24時間以内に回復したとの報告がある(ECHA RAC Opinion (2018)、CLH Report (2016))。
(2)本物質は皮膚刺激性物質ではない(EFSA (2013))。
眼に対する重篤な損傷性又は眼刺激性
【分類根拠】
(1)、(2)より、区分に該当しない。
【根拠データ】
(1)ウサギ(n=6)を用いた眼刺激性試験(OECD TG 405相当、GLP)において、みられた影響は7日以内に回復した(角膜混濁スコアの平均:0.4、虹彩炎スコアの平均:0、結膜発赤スコアの平均:0.9、結膜浮腫スコアの平均:0.3)との報告がある(ECHA RAC Opinion (2018)、CLH Report (2016))。
(2)本物質は眼刺激性物質ではない(EFSA (2013))。
呼吸器感作性
【分類根拠】
データ不足のため分類できない。
皮膚感作性
【分類根拠】
(1)、(2)より、区分に該当しない。
【根拠データ】
(1)モルモット(n=20)を用いたMaximisation試験(OECD TG 406、GLP、皮内投与:2.5%溶液)において、陽性率は0%(0/20例)であったとの報告がある(ECHA RAC Opinion (2018)、CLH Report (2016))。
(2)本物質は皮膚感作性物質ではない(EFSA (2013))。
生殖細胞変異原性
【分類根拠】
(1)、(2)より、区分に該当しない。
【根拠データ】
(1)In vivoでは、マウスの骨髄の赤血球を用いた小核試験(OECD TG474、GLP:2日間強制経口投与)において、最大1,000 mg/kg/dayまで陰性であった(EU CLP CLH (2018)、EPA HHRA (2013))。
(2)In vitroでは、細菌を用いた復帰突然変異試験(OECD TG471、GLP)、チャイニーズハムスターの肺由来細胞(CHL/IU)を用いた染色体異常試験(OECD TG473、GLP)、及びチャイニーズハムスターの卵巣細胞(CHO)を用いた遺伝子変異試験(OECD TG476、GLP)で、いずれも代謝活性化系の有無に関わらず陰性であった(EU CLP CLH (2018)、EPA HHRA (2013))。
発がん性
【分類根拠】
(1)、(2)より動物種2種で発がん性の証拠が認められないこと、(3)よりEUにおけるEFSAのがん原性を有さなない見解及びCLH Report で発がん性の区分に該当しないとされた見解を踏まえ、区分に該当しないとした。
【根拠データ】
(1)ラットを用いた2年間(104週間)混餌投与による慢性毒性/発がん性併合試験(OECD TG453、GLP)において、最高用量群(雄/雌:300 /300→200 ppm:13.3/12.6 mg/kg/day)では甲状腺ろ胞上皮の腺腫の発生率に軽度増加(雄10%(非有意)、雌8%(有意))がみられたが、発生率は試験実施ラボの背景データの範囲内であった(EU CLP CLH (2018)、EPA HHRA (2013))。
(2)マウスを用いた78週間混餌投与による発がん性試験(OECD TG451、GLP)において、最高用量群(雄/雌:350/350 ppm:)で組織球肉腫の発生率に僅かな増加(雄4%、雌6%)がみられたが、いずれも試験実施ラボ並びに米国データベースのHCDの範囲内であった(EU CLP CLH (2018)、EPA HHRA (2013))。
(3)本物質はがん原性を有さない(EU EFSA (2013))。本物質はラット及びマウスの動物2種の試験結果に基づき、発がん性物質の区分に該当しない(EU CLP CLH (2016))。
生殖毒性
【分類根拠】
(1)~(4)より、ラットとウサギを用いた発生毒性試験において、2種ともに軽微な母動物毒性の用量において、共通した外表奇形(小眼症、曲尾/短尾)を含めて様々な催奇形性影響が再現性をもってみられていることから区分1Bとした。
【根拠データ】
(1)雌ラットを用いた強制経口投与による発生毒性試験(OECD TG414、GLP)において、母動物に体重増加抑制がみられる高用量(30 mg/kg/day)で、胎児に低体重及び奇形(小眼症、血管奇形(動脈/動脈弓の異常))の発生頻度増加がみられた。より高用量の用量設定試験(50~500 mg/kg/day)においても、顕著な母動物毒性(体重増加抑制、妊娠子宮重量低値、膣出血等)のみられる用量(100 mg/kg/day)で、胎児毒性(一腹当たりの生存胎児数の減少、胎児吸収/死亡率の増加、胎児の低体重)及び奇形発生(小眼症、曲尾/短尾)がみられたとの報告がある(EU CLP CLH (2018))。
(2)別の雌ラットを用いた強制経口投与による発生毒性試験(OECD TG414、GLP)において、母動物に体重増加抑制がみられる高用量(50 mg/kg/day)で、胎児に奇形発生(口蓋裂、二分肋骨、胸骨分節癒合など骨格奇形)がみられた。より高用量の予備試験(100~1,000 mg/kg/day)においても、顕著な母動物毒性がみられる用量(100 mg/kg/day)で胎児に外表奇形(短尾/曲尾、小眼症等)の発生がみられたとの報告がある(EU CLP CLH (2018))。
(3)本物質は発生毒性試験において、奇形(ラットで小眼症及び曲尾/短尾、ウサギで短尾、ラットとウサギで口蓋裂)を誘発するとの報告がある(EU EFSA (2013))。
(4)本物質投与後に特異的な奇形(主に小眼症と曲尾/短尾)がみられた。小眼症は発生毒性試験の4試験のうち3試験においてみられ、うち2試験では複数の妊娠腹から発生したことから、催奇形性の懸念が増幅される。この影響は他の毒性影響による二次性の非特異的な影響とは考え難いとの報告がある(EU CLP CLH (2018))。
【参考データ等】
(5)ラットを用いた混餌投与による二世代生殖毒性試験(OECD TG416、GLP)では、F0雌親動物に体重増加抑制及び摂餌量減少、脾臓・肝臓・腎臓重量の増加がみられる高用量(300 mg/kg/day)まで、F0雄の高用量群にみられた精巣上体尾部精子濃度の減少以外にF0及びF1雌雄親動物の生殖指標に影響はみられなかった。児動物にはF0親動物の毒性用量(100及び300 mg/kg/day)でF1及びF2に生後の低体重及び体重増加抑制と膣開口の遅延(成長遅延による二次的影響、F1雌のみ)がみられたとの報告がある(EU CLP CLH (2018)、EFSA (2013))。
(6)EUではRepr. 1Bに分類されている(CLP分類(Accessed 2022))。