急性毒性
経口
【分類根拠】 (1)~(6) より、区分に該当しないとした。 なお、新たな情報源の使用により、旧分類から分類結果を変更した。
【根拠データ】 (1) ラットのLD50: 雌: 2,000 mg/kg、雄: 3,300 mg/kg (食安委 農薬評価書 (2009)) (2) ラットのLD50: 雌: 2,000 mg/kg、雄: 3,302 mg/kg (農薬抄録 (2009)) (3) ラットのLD50: 雌: 2,200 mg/kg、雄: 3,100 mg/kg (食安委 農薬評価書 (2009)、農薬工業会「日本農薬学会誌」第14巻第1号 (1989)、農薬抄録 (2009)) (4) ラットのLD50: 2,200 mg/kg (GESTIS (Access on June 2020)) (5) ラットのLD50: 2,200~2,877 mg/kg (HSDB (Access on June 2020)) (6) ラットのLD50: 2,780 mg/kg (EPA Pesticides RED (1995)、食安委 農薬評価書 (2009)、農薬抄録 (2009))
経皮
【分類根拠】 (1)~(5) より、区分に該当しないとした。
【根拠データ】 (1) ウサギのLD50: > 2,000 mg/kg (食安委 農薬評価書 (2009)、農薬抄録 (2009)、HSDB (Access on June 2020)) (2) ウサギのLD50: 10,000 mg/kg (EPA Pesticides RED (1995)) (3) ウサギのLD50: > 10,000 mg/kg (GESTIS (Access on June 2020)) (4) ラットのLD50: 3,170 mg/kg (HSDB (Access on June 2020)) (5) ラットのLD50: > 4,000 mg/kg (食安委 農薬評価書 (2009)、農薬抄録 (2009))
吸入: ガス
【分類根拠】 GHSの定義における液体であり、区分に該当しない。
吸入: 蒸気
【分類根拠】 データ不足のため分類できない。
吸入: 粉じん及びミスト
【分類根拠】 (1)、(2) より、区分に該当しないとした。 なお、新たな情報源の使用により、旧分類から分類結果を変更した。 ばく露濃度が飽和蒸気圧濃度 (4.8E-004 mg/L) よりも高いため、ミストとしてmg/Lを単位とする基準値を適用した。
【根拠データ】 (1) ラットのLC50 (4時間): > 1.75 mg/L (EPA Pesticides RED (1995)、食安委 農薬評価書 (2009)、農薬抄録 (2009)、GESTIS (Access on June 2020)、HSDB (Access on June 2020)) (2) ラットのLC50 (4時間): > 4.33 mg/L (食安委 農薬評価書 (2009)、農薬抄録 (2009)、HSDB (Access on June 2020))、4.33 mg/Lは発生可能な最高濃度であり、死亡例なし (農薬抄録 (2009)) (3) 本物質の蒸気圧: 3.14E-005 mmHg (25℃) (HSDB (Access on May 2020)) (飽和蒸気圧濃度換算値: 4.8E-004 mg/L)
皮膚腐食性及び皮膚刺激性
【分類根拠】 (1)~(3) より、区分に該当しないとした。
【根拠データ】 (1) 本物質はEPA OPP 81-5に準拠したウサギを用いた皮膚刺激性試験で、非刺激物と報告されている (EPA Pesticides RED (1995))。 (2) 本物質のウサギを用いた皮膚刺激性試験が実施され、皮膚に対して軽度の刺激性が認められた (食安委 農薬評価書 (2009)、農薬工業会「日本農薬学会誌」第14巻第1号 (1989)、農薬抄録 (2009))。 (3) 本物質のウサギを用いた皮膚刺激性試験では軽度の刺激性が認められた (食安委 農薬評価書 (2009)、農薬工業会「日本農薬学会誌」第14巻第1号 (1989)、農薬抄録 (2009))。
【参考データ等】 (4) 本物質のS体 (CAS番号 87392-12-9) のウサギを用いた皮膚刺激性試験が実施され、皮膚に対して軽度の刺激性が認められた (食安委 農薬評価書 (2009)、農薬抄録 (2009))。
眼に対する重篤な損傷性又は眼刺激性
【分類根拠】 (1)~(3) より、区分に該当しないとした。
【根拠データ】 (1) 本物質はEPA OPP 81-4に準拠したウサギを用いた眼刺激性試験で、非刺激物と報告されている (EPA Pesticides RED (1995))。 (2) 本物質のウサギを用いた眼刺激性試験が実施され、軽度の刺激性が認められた (食安委 農薬評価書 (2009))。 (3) 本物質のウサギを用いた眼刺激性試験では刺激性は認められなかった(食安委 農薬評価書 (2009)、農薬工業会「日本農薬学会誌」第14巻第1号 (1989))。
【参考データ等】 (4) 本物質のS体 (CAS番号 87392-12-9) のウサギを用いた眼刺激性試験が実施され、軽度の刺激性が認められた (食安委 農薬評価書 (2009))。
呼吸器感作性
【分類根拠】 データ不足のため分類できない。
皮膚感作性
【分類根拠】 (1)、(2) より、区分1とした。
【根拠データ】 (1) 本物質はEPA OPP 81-6に準拠したモルモットを用いた皮膚感作性試験で、感作性陽性と報告されている (EPA Pesticides RED (1995))。 (2) 本物質のモルモットを用いた皮膚感作性試験 (ビューラー法及びOptimization法) で、いずれも陽性と報告されている (食安委 農薬評価書 (2009)、農薬工業会「日本農薬学会誌」第14巻第1号 (1989)、農薬抄録 (2009))。
【参考データ等】 (3) 本物質のS体 (CAS番号 87392-12-9) のモルモットを用いた皮膚感作性試験 (マキシマイゼーション法) で、陽性と報告されている (食安委 農薬評価書 (2009)、農薬工業会「日本農薬学会誌」第14巻第1号 (1989))。
生殖細胞変異原性
【分類根拠】 (1)、(2) より、区分に該当しないとした。
【根拠データ】 (1) in vivoでは、経口投与によるマウスの優性致死試験、ラットの肝臓を用いた不定期DNA合成試験、ハムスターの骨髄細胞を用いた核異常試験において陰性の報告がある (食安委 農薬評価書 (2009)、EPA Pesticides RED (1995)、農薬抄録 (2009))。 (2) in vitroでは、細菌の復帰突然変異試験及び哺乳類培養細胞を用いた遺伝子突然変異試で陰性、哺乳類培養細胞を用いた染色体異常試験において陽性、陰性の報告がある (同上)。
発がん性
【分類根拠】 (1)~(4) よりEPAの評価では、肝臓で細胞増殖を誘発しない用量でNLとされており、(2) も考慮して分類できないとした。
【根拠データ】 (1) 国内外の分類機関による既存分類では、EPAでNL (Not Likely to be Carcinogenic to Humans) (EPA Annual Cancer Report 2019 (Access on September 2020):2017年分類) に分類されている。 (2) 雌雄のラットに本物質を2年間混餌投与した慢性毒性/発がん性併合試験において、雌で肝細胞腺腫及び肝細胞腺腫とがんの合計の発生率の有意な増加が認められた (食安委 農薬評価書 (2009))。 (3) 雌雄のマウスに本物質を18ヵ月間混餌投与した発がん性試験では、投与に関連して発生頻度の増加した腫瘍性病変はなかった (食安委 農薬評価書 (2009))。 (4) EPAは1994年に雌ラットでみられた肝腫瘍に基づき、本物質をグループC (possible human carcinogen) に分類した。しかし、2017年にS-メトラクロールに関する追加のメカニズム研究を考慮に入れて本物質の発がん性を再評価した。その結果、EPAは本物質を経口投与したラットの肝腫瘍の発生は、肝細胞の核内受容体 (CAR) の活性化と、それに続く遺伝子発現の変化、一過性の細胞増殖の増加、肝細胞病巣の増加、及び肝細胞毒性 (肝臓重量増加と肝臓肥大) によって開始されることを発見した。その結果、EPAは本物質及びS-メトラクロールを肝臓で細胞増殖を誘発しない用量でNL (Not Likely to be Carcinogenic to Humans) に分類した (Federal Register Vol.84, No.47 (2019))
生殖毒性
【分類根拠】 (1)~(3) より、区分に該当しないとした。
【根拠データ】 (1) ラットを用いた混餌による2世代繁殖試験において、親動物毒性 (P世代では異常はみられず、F1世代の雄で甲状腺相対重量増加、雌で摂餌量減少) がみられる用量 (1,000 ppm) で、児動物ではF1世代の雌雄、F2世代の雌で体重増加抑制がみられている (食安委 農薬評価書 (2009))。 (2) 雌ラットの妊娠6~15日に強制経口投与した発生毒性試験において、母動物毒性 (摂餌量減少) がみられる用量においても胎児に影響はみられていない (食安委 農薬評価書 (2009))。 (3) 雌ウサギの妊娠6~18日に強制経口投与した発生毒性試験において、母動物毒性 (縮瞳、膣出血、体重増加抑制、摂餌量減少) がみられる用量においても胎児に影響はみられていない (食安委 農薬評価書 (2009))。
【参考データ等】 (4) 雌ラットの妊娠6~15日に強制経口投与した発生毒性試験において母動物毒性 (死亡 (4/25例)、唾液分泌亢進、流涙、強直性あるいは間代性痙攣、体重増加抑制、摂餌量減少) がみられる用量 (1,000 mg/kg/day) において、胎児に低体重、坐骨の骨化遅延等がみられている (食安委 農薬評価書 (2009))。
特定標的臓器毒性 (単回ばく露)
【分類根拠】 (3)~(5) の急性毒性試験において神経症状がみられているが症状の発現用量が不明であったり、最低用量で影響がみられており区分を特定できない。しかし、(1)、(2) の一般薬理試験の情報から、区分1 (中枢神経系) とした。なお、新たな情報源を用い、データを見直したため旧分類から分類結果を変更した。
【根拠データ】 (1) マウスを用いた強制経口投与による一般薬理試験 (用量:0、200、600、1,000 mg/kg) において、最低用量である200 mg/kg (区分1の範囲) 以上で中枢神経系への影響 (200 mg/kgで発現した症状は不明。この試験において中枢神経系への影響を示す所見: 痙攣、洗顔運動、過敏反応、挙尾反応及びその後の抑制傾向。回転カゴ試験で自発運動量の低下) がみられている (食安委 農薬評価書 (2009))。 (2) マウス、ラットを用いた強制経口投与による一般薬理試験 (用量: 0、30、100、300、1,000 mg/kg) において、マウスでは、100 mg/kg (区分1の範囲) 以上で中枢神経系への影響 (100 mg/kgで発現した症状は不明。この試験において挙尾、痙縮、痙攣、探索行動・自発運動・触刺激反応・疼痛反応の抑制、散瞳等) 、ラットでは1,000 mg/kgで触刺激反応の亢進がみられている (食安委 農薬評価書 (2009))。食安委 農薬評価書 (2009) では、ラットよりマウスで感受性が高いとしている。 (3) ラットを用いた単回経口投与毒性試験 (LD50値: 雄: 3,300 mg/kg、雌: 2,000 mg/kg) において、雄では2,500 mg/kg (区分2超) 以上、雌では2,000 mg/kg (区分2の範囲) 以上で死亡がみられ、症状として軟便、縮瞳、流涙、流涎、虚脱、呼吸困難、円背位、振戦、歩行失調、強直性痙攣、正向反射消失、接触に対する過敏反応等がみられている (食安委 農薬評価書 (2009)、農薬抄録 (2009))。症状の発現した用量は不明であったが、少なくとも死亡発現用量では、これらの症状の主なものはみられたものと考えられる。 (4) ウサギを用いた単回経皮投与毒性試験 (LD50値: > 2,000 mg/kg) において、2,000 mg/kg (区分2の範囲) で死亡はみられず、自発運動低下、歩行失調が認められている (食安委 農薬評価書 (2009)、農薬抄録 (2009))。 (5) ラットを用いた単回吸入ばく露試験 (LC50: > 4.33 mg/L) において、4.33 mg/L (区分2の範囲) で死亡はみられず、自発運動低下、立毛が認められている (食安委 農薬評価書 (2009)、農薬抄録 (2009))。
特定標的臓器毒性 (反復ばく露)
【分類根拠】 本物質のヒトでの反復ばく露に関する報告はない。実験動物の経口経路の試験では、(1)、(2) より、区分2までの用量で標的臓器を特性できる毒性所見がないことから、経口経路では区分に該当しないと考えられる。しかし、他経路での毒性情報がないことから、分類できないとした。
【根拠データ】 (1) ラットの90日間混餌投与試験では、3,000 ppm (雄/雌: 210/259 mg/kg/day相当、いずれも区分2超) の雄で総タンパク質、グロブリン増加、A/G比減少、尿中白血球数増加、腎尿細管好塩基性変化、膵腺房細胞萎縮がみられたとの報告がある (食安委 農薬評価書 (2009))。 (2) ラットの2年間混餌投与試験では、3,000 ppm (雄/雌: 141/180 mg/kg/day相当、いずれも区分2超) で変異肝細胞巣 (総数) の増加、さらに雄では肝比重量増加、雌では変異肝細胞巣 (好酸性細胞) の増加がみられたとの報告がある (食安委 農薬評価書 (2009))。
誤えん有害性*
【分類根拠】 データ不足のため分類できない。
* JIS Z7252の改訂により吸引性呼吸器有害性から項目名が変更となった。本有害性クラスの内容に変更はない。