安全データシート

塩酸1,4-フェニレンジアミン

改訂日:2024-01-24版番号:1

1. 化学品及び会社情報

製品識別子

  • 製品名: 塩酸1,4-フェニレンジアミン
  • CB番号: CB7221873
  • CAS: 624-18-0
  • EINECS番号: 210-834-9
  • 同義語: 塩酸1,4-フェニレンジアミン

物質または混合物の関連する特定された用途、および推奨されない用途

  • 関連する特定用途: 白黒及びカラー写真の現像液、分析試薬、酸化防止剤 (NITE-CHRIPより引用)
  • 推奨されない用途: なし

会社ID

  • 会社名:Chemicalbook
  • 住所:北京市海淀区上地十街匯煌国際1号棟
  • 電話:400-158-6606

2. 危険有害性の要約

GHS分類

分類実施日(物化危険性及び健康有害性)
JIS Z7252:2019準拠 (GHS改訂6版を使用)
R2.3.13、政府向けGHS分類ガイダンス (H25年度改訂版 (ver1.1)) を使用
物理化学的危険性
-
健康に対する有害性
特定標的臓器毒性 (反復ばく露)   区分2 (心臓、筋肉)
特定標的臓器毒性 (単回ばく露)   区分1 (心臓、腎臓、筋肉)
皮膚感作性   区分1A
呼吸器感作性   区分1
眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性   区分2B
急性毒性 (経口)   区分3
分類実施日(環境有害性)
H23年度、政府向けGHS分類ガイダンス (H22.7版)・国連GHS文書 (改訂4版) (R1年度、分類実施中)
環境に対する有害性
-

2.2 注意書きも含むGHSラベル要素

絵表示
GHS06GHS09
注意喚起語
危険
危険有害性情報
H317 アレルギー性皮膚反応を起こすおそれ。
H301 + H311 + H331 飲み込んだ場合や皮膚に接触した場合や吸入した場合は有毒。
H410 長期継続的影響によって水生生物に非常に強い毒性。
H319 強い眼刺激。
注意書き
安全対策
P280 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
P273 環境への放出を避けること。
P272 汚染された作業衣は作業場から出さないこと。
P271 屋外又は換気の良い場所でだけ使用すること。
P270 この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
P264 取扱い後は皮膚をよく洗うこと。
P261 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーの吸入を避けること。
応急措置
P391 漏出物を回収すること。
P337 + P313 眼の刺激が続く場合:医師の診察/手当てを受けること。
P333 + P313 皮膚刺激又は発しん(疹)が生じた場合:医師の診断/手当てを受けること。
P305 + P351 + P338 眼に入った場合:水で数分間注意深く洗うこと。次にコンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。
P304 + P340 + P311 吸入した場合:空気の新鮮な場所に移し,呼吸しやすい姿勢で休息させること。 医師に連絡すること。
P302 + P352 + P312 皮膚に付着した場合:多量の水と石けん(鹸)で洗うこと。 気分が悪いときは医師に連絡すること。
P301 + P310 + P330 飲み込んだ場合:直ちに医師 に連絡すること。口をすすぐこと。
保管
P405 施錠して保管すること。
P403 + P233 換気の良い場所で保管すること。容器を密閉しておくこと。
廃棄
P501 内容物/容器を承認された処理施設に廃棄すること。

2.3 他の危険有害性

なし

3. 組成及び成分情報

  • 化学物質・混合物の区別: 化学物質
  • 別名: 1,4-Benzenediaminedihydrochloride
  • 化学特性(示性式、構造式 等): C6H8N2 · 2HCl
  • 分子量: 181.06 g/mol
  • CAS番号: 624-18-0
  • EC番号: 210-834-9
  • 化審法官報公示番号: -
  • 安衛法官報公示番号: -

4. 応急措置

4.1 必要な応急手当

一般的アドバイス
医師に相談する。 この安全データシートを担当医に見せる。
吸入した場合
吸い込んだ場合、新鮮な空気の場所に移す。 呼吸していない場合には、人工呼吸を施す。 医師に相談する。
皮膚に付着した場合
石けんと多量の水で洗い流す。 直ちに被災者を病院に連れて行く。 医師に相談する。
眼に入った場合
多量の水で15分以上よく洗浄し、医師の診察を受けること。
飲み込んだ場合
意識がない場合、口から絶対に何も与えないこと。 口を水ですすぐ。 医師に相談する。

4.2 急性症状及び遅発性症状の最も重要な徴候症状

もっとも重要な既知の徴候と症状は、ラベル表示(項目2.2を参照)および/または項目11に記載されている

4.3 緊急治療及び必要とされる特別処置の指示

データなし

5. 火災時の措置

5.1 消火剤

適切な消火剤
水噴霧、耐アルコール泡消火剤、粉末消火剤、二酸化炭素を使用すること。

5.2 特有の危険有害性

可燃性。
塩化水素ガス
窒素酸化物(NOx)
炭素酸化物

5.3 消防士へのアドバイス

消火活動時には必要に応じて 自給式呼吸装置を装着する。

5.4 詳細情報

データなし

6. 漏出時の措置

6.1 人体に対する注意事項、保護具及び緊急時措置

呼吸保護(服)を着用。 粉じんの発生を避ける。 蒸気、ミスト、またはガスの呼吸を避ける。 十分な換気を確保する。 安全な場所に避難する。 粉じんを吸い込まないよう留意。個人保護については項目 8 を参照する。

6.2 環境に対する注意事項

安全を確認してから、もれやこぼれを止める。 物質が排水施設に流れ込まないようにする。 環境への放出は必ず避けなければならない。

6.3 封じ込め及び浄化の方法及び機材

粉じんを発生させないように留意して回収し、廃棄する。 掃いてシャベルですくいとる。 廃棄に備え適切な容器に入れて蓋をしておく。

6.4 参照すべき他の項目

廃棄はセクション13を参照。

7. 取扱い及び保管上の注意

7.1 安全な取扱いのための予防措置

安全取扱注意事項
皮膚や眼への接触を避けること。 粉じんやエアゾルを発生させない。
火災及び爆発の予防
粉じんが発生する場所では、換気を適切に行う。
衛生対策
皮膚、眼、そして衣服との接触を避ける。 休憩前や製品取扱い直後には手を洗う。注意事項は項目2.2を参照。

7.2 配合禁忌等を踏まえた保管条件

保管クラス
保管クラス (ドイツ) (TRGS 510): 6.1C: 可燃性、急性毒性カテゴリー3 / 毒性化合物または慢性効果を引き起こす化合物
保管条件
容器を密閉し、乾燥した換気の良い場所に保管する。光に敏感である。不活性ガス下に貯蔵する。

7.3 特定の最終用途

項目1.2に記載されている用途以外には、その他の特定の用途が定められていない

8. ばく露防止及び保護措置

8.1 管理濃度

コンポーネント別作業環境測定パラメータ
許容濃度が設定されている物質を含有していない。

8.2 曝露防止

適切な技術的管理
皮膚、眼、そして衣服との接触を避ける。 休憩前や製品取扱い直後には手を洗う。
保護具
眼/顔面の保護
顔面シールドおよび保護メガネ NIOSH(US)またはEN 166(EU)などの適切な政府機関の規
格で試験され、認められた眼の保護具を使用する。
皮膚及び身体の保護具
手袋を着用して取扱う。 使用前に、必ず手袋を検査する。 (手袋外面に触れずに)適切に手袋
を脱ぎ、本製品の皮膚への付着を避ける。 適用法令およびGLPに従い、使用後に汚染手袋を廃
棄する。 手を洗い、乾燥させる。
選ばれた防護手袋は、EU指令2016/425の仕様と、それから派生する規格EN374を満たすもので
なければならない。
フルコンタクト
材質: ニトリルゴム
最小厚: 0.11 mm
破過時間: 480 min
試験物質:Dermatril® (KCL 740 / Aldrich Z677272, Size M)
飛沫への接触
材質: ニトリルゴム
最小厚: 0.11 mm
破過時間: 480 min
試験物質:Dermatril® (KCL 740 / Aldrich Z677272, Size M)
データソース:KCL GmbH, D-36124 Eichenzell, 電話 +49 (0)6659 87300, e-mail sales@kcl.de,
試験方法: EN374
EN374とは違った条件の下で、溶液の中、または他の物質と混ぜて使われる場合は、EC認可手
袋の供給業者に問い合わせる。 この勧告は単なる助言であり、予想される用途の特定状況に精
通した産業衛生専門家並びに安全管理者により評価されなければならない。 任意の使用方法に
ついて許可を受けていると理解すべきではない。
身体の保護
化学防護服, 特定の作業場に存在する危険物質の濃度および量に応じて、保護装置のタイプを選
択しなければならない。
呼吸用保護具
リスクアセスメントによりろ過式呼吸用保護具が適切であると示されている場所では、工学的
制御のバックアップとして、N99型(US)またはP2型(EN 143)呼吸用保護具カートリッジ付
き全面形呼吸用保護具を使用する。呼吸用保護具が唯一の保護手段である場合、全面形送気マ
スクを使用する。 NIOSH(US)またはCEN(EU)などの適切な政府機関の規格で試験され、
認められた呼吸用保護具および部品を使用する。
環境暴露の制御
安全を確認してから、もれやこぼれを止める。 物質が排水施設に流れ込まないようにする。 環
境への放出は必ず避けなければならない。

9. 物理的及び化学的性質

物理的状態

物理状態
固体 (20℃、1気圧) (GHS判定)
白色~わずかに赤色
臭い
データなし

融点/凝固点

275℃ (ICSC (1999))

沸点、初留点及び沸騰範囲

データなし

可燃性

可燃性 (ICSC (1999))

爆発下限界及び爆発上限界/可燃限界

該当しない

引火点

該当しない

自然発火点

該当しない

分解温度

データなし

pH

データなし

動粘性率

データなし

溶解度

水: 199,000 mg/L (25℃) (推定値) (PHYSPROP Database (2019))

n-オクタノール/水分配係数

-0.39 (EST) (PHYSPROP Database (2019))

蒸気圧

データなし

密度及び/又は相対密度

データなし

相対ガス密度

該当しない

粒子特性

データなし

10. 安定性及び反応性

10.1 反応性

データなし

10.2 化学的安定性

推奨保管条件下では安定。

10.3 危険有害反応可能性

データなし

10.4 避けるべき条件

データなし

10.5 混触危険物質

強酸化剤

10.6 危険有害な分解生成物

火災の場合:項目5を参照

11. 有害性情報

急性毒性

経口
【分類根拠】 (1) より、区分3とした。
【根拠データ】 (1) ラットのLD50:147 mg/kg (NICNAS IMAP (Access on June 2019))
経皮
【分類根拠】 データ不足のため分類できない。
吸入: ガス
【分類根拠】 GHSの定義における固体であり、ガイダンスにおける分類対象外に相当し、区分に該当しない。
吸入: 蒸気
【分類根拠】 データ不足のため分類できない。
吸入: 粉じん及びミスト
【分類根拠】 データ不足のため分類できない。

皮膚腐食性及び皮膚刺激性

【分類根拠】 (1)、(2) より、本物質の遊離塩基であるp-フェニレンジアミン (CAS番号 106-50-3) が区分に該当しないと判断されていることから、区分に該当しないとした。
【根拠データ】 (1) ウサギにp-フェニレンジアミン 500 mgを投与した試験 (24時間適用) において非刺激性 (non irritant) と報告されている (BUA 97 (1992))。 (2) 本物質の局所刺激性に関するデータは提供されていないが、本物質の代わりに塩酸塩を適用して感作性を検証することができるため、刺激性も同様に弱いか、中程度と予想される (GESTIS (Access on May 2019))。
【参考データ等】 (3) p-フェニレンジアミンの50%親水軟膏を5人のボランティアに投与し、軽度の刺激を認めたと報告されている (DFGOT vol.6 (1994))。 (4) 皮膚の所見に関しては、接触の濃度と接触時間によって非刺激から中程度刺激まで変動する50%懸濁液を用いたウサギの皮膚の試験は明確な反応を明らかにしたが、ヒトの皮膚への刺激は軽度であった。これらの知見に基づいて、本物質は眼に対して中程度の刺激性、皮膚には軽度刺激性と評価された (GESTIS (Access on May 2019))。

眼に対する重篤な損傷性又は眼刺激性

【分類根拠】 (1)、(2) より、本物質の遊離塩基であるp-フェニレンジアミン (CAS番号 106-50-3) が区分2Bと判断されていることから、区分2Bとした。
【根拠データ】 (1) ウサギに原体を投与したドレイズ法で軽度刺激性 (slightly irritant) と報告されている (BUA 97 (1992))。 (2) 本物質の局所刺激性に関するデータは提供されていないが、本物質の代わりに塩酸塩を適用して感作性を検証することができるため、刺激性も同様に弱いか、中程度と予想される (GESTIS (Access on May 2019))。
【参考データ等】 (3) ウサギに30 mgを投与した試験で結膜の発赤及び浮腫、角膜混濁を認めるが、7日以内に回復したと報告されている (BUA 97 (1992))。 (4) EU-CLP分類でEye Irrit. 2 (H319) に分類されている (EU CLP分類 (Access on July 2019))。 (5) ウサギの眼への固形物又は飽和溶液の適用は明らかな刺激を引き起こしたが、希釈液 (2.5%) は刺激性を示さなかった (GESTIS (Access on May 2019))。

呼吸器感作性

【分類根拠】 (1) より、p-フェニレンジアミン (CAS番号 106-50-3) が区分1と判断されていることから、区分1とした。
【根拠データ】 (1) p-フェニレンジアミンは皮膚及び呼吸器に対して強い感作性物質であり、喘息を誘発する恐れがあるとの記載がある (PATTY (6th, 2012))。

皮膚感作性

【分類根拠】 (1)~(4) より本物質の遊離塩基であるp-フェニレンジアミン (CAS番号 106-50-3) が区分1Aと判断されていることから、区分1Aとした。
【根拠データ】 (1) p-フェニレンジアミンは⽇本産業衛生学会により、感作性物質 (皮膚:1群) に分類されている (産衛誌52巻 (2010))。 (2) p-フェニレンジアミンは複数のモルモット皮膚感作性試験において陽性率100%と報告されている (DFGOT vol 6 (1994))。 (3) p-フェニレンジアミンはヒトでの感作性試験 (repeated insult patch test) において陽性率100%と報告されている (DFGOT vol.14 (2000))。 (4) p-フェニレンジアミンはマウス局所リンパ節試験 (LLNA) においてEC3が2以下 (0.06%及び 0.20%) と報告されている (SCCS (2006))。

生殖細胞変異原性

【分類根拠】 (1)より、専門家判断に基づき、ガイダンスにおける分類できないに相当し、区分に該当しないとした。
【根拠データ】 (1) in vivoではラットの腹腔内投与及びマウスの経口投与による小核試験で陰性の報告がある (SCCS (2012))。 (2) in vitroでは、細菌の復帰突然変異試験、マウスリンフォーマTK試験及び哺乳類培養細胞の小核試験で陽性、哺乳類培養細胞のHPRT試験で陰性の報告がある (SCCS (2012)、NTP DB (Access on May 2019))。

発がん性

【分類根拠】 (1)、(2) より、 ガイダンスの分類できないに相当し、区分に該当しないとした。
【根拠データ】 (1) 国内外の分類機関による既存分類では、本物質の遊離塩基であるp-フェニレンジアミン (CAS番号 106-50-3) が、IARCでグループ3 (IARC Suppl.7 (1987))、ACGIHでA4 (ACGIH (7th, 2001)) に分類されている。 (2) 本物質をラット及びマウスに2年間混餌投与した発がん性試験で、両動物種雌雄とも統計学的に有意な腫瘍の発生は認められなかった(NTP TR174 (1979)。

生殖毒性

【分類根拠】 本物質自体のデータはない。また、本物質の遊離塩基であるp-フェニレンジアミンについてはデータ不足で分類できないとしている (p-フェニレンジアミン (CAS番号106-50-3) の分類結果を参照のこと)。したがって、データ不足で分類できない。
【根拠データ】 (1) 雌ラットの妊娠6~19日にp-フェニレンジアミンを強制経口投与した発生毒性試験 (OECD TG 414) において、 骨化遅延がみられた (SCCS (2012))。 (2) 雌ラットの妊娠6~15日にp-フェニレンジアミンを強制経口投与した試験において、母動物毒性 (体重増加抑制、摂餌量減少、死亡) がみられたが、催奇形性、胚/胎児毒性はみられていない (SCCS (2012)、ACGIH 7th, (2001))。
【参考データ等】 (3) 雌マウスの妊娠5~7日、8~10日又は11~14日にp-フェニレンジアミンを皮下投与した試験において、催奇形性はみられていない (SCCS (2012))。

特定標的臓器毒性 (単回ばく露)

【参考データ等】 (5) マウスにp-フェニレンジアミン35、70 mg/kgを経鼻胃管投与した試験で、投与後24時間以内に血中CPK活性が有意に増加し、24時間後に骨格筋微細線維の壊死がみられた (DFGOT vol.6 (1994))。
【分類根拠】 本物質自体のヒト及び実験動物での単回ばく露に関する報告はない。本物質の遊離塩基であるp-フェニレンジアミン (CAS番号 106-50-3) に関しては、ヒトでは (1) 及び (2) を代表例として、単回経口摂取により横紋筋融解症と腎不全を生じた例が複数報告されている。また、(3) でp-フェニレンジアミンを主成分とする染毛剤を事故又は意図的に経口摂取したヒトに心筋炎がみられた症例がある。(4) で本物質はp-フェニレンジアミンと同様の影響を生じる可能性があるとされていることから、区分1 (筋肉、心臓、腎臓) とした。
【根拠データ】 (1) p-フェニレンジアミン5,000 mg (70 mg/kg) を経口摂取した40歳男性が、呼吸困難、顔面と舌の浮腫を示した後に、横紋筋融解症、血中のLDH、AST、ALT活性増加、急性腎不全、赤褐色尿を生じた (DFGOT vol.6 (1994))。 (2) p-フェニレンジアミンの水溶液カップ1杯を誤飲した50歳男性が、腹痛、顔面浮腫、呼吸困難を示した後に、横紋筋融解症、血中のLDH、AST、クレアチンホスホキナーゼ (CPK)、アルドラーゼ活性増加、急性腎不全、濃褐色尿を生じた (DFGOT vol.6 (1994))。 (3) ヒトではp-フェニレンジアミンを主成分とする染毛剤の事故及び意図的な経口摂取後に、血管神経浮腫、横紋筋融解症、腎不全がみられた症例や、心筋炎がみられた症例が報告されている (SCCS (2012))。 (4) 動物実験で、本物質はp-フェニレンジアミンと同様の影響を生じる可能性があることが確認されている (GESTIS (Access on June 2019))。

特定標的臓器毒性 (反復ばく露)

【分類根拠】 (1)~(3) より、実験動物に本物質の遊離塩基であるp-フェニレンジアミン (CAS番号 106-50-3) を投与した結果、本物質換算で区分2の範囲で心臓、筋肉への影響がみられていることから、区分2 (心臓、筋肉) とした。用量換算の結果、p-フェニレンジアミンと区分が異なった。なお、旧分類の分類根拠のうち原因物質が不明確 (混合物) であるものを除き、新たな情報源の情報を加えて検討した結果、旧分類から分類結果を変更した。
【根拠データ】 (1) ラットにp-フェニレンジアミン5~40 mg/kg/dayを14日間経口投与した結果、5 mg/kg/day (90日換算値: 0.8 mg/kg/day (本物質換算: 1.3 mg/kg/day)、区分1の範囲) 以上でLDH活性増加、10 mg/kg/day (90日換算値: 1.6 mg/kg/day (本物質換算: 2.6 mg/kg/day)、区分1の範囲) 以上でALT、AST、クレアチンホスホキナーゼ活性の増加、甲状腺重量増加、40 mg/kg/day (90日換算値: 6.2 mg/kg/day (本物質換算: 10.4 mg/kg/day)、区分2の範囲) で肝臓重量増加、骨格筋のわずかな筋肉変性がみられた (SCCS (2012))。 (2) ラットにp-フェニレンジアミン2~16 mg/kg/dayを13週間経口投与した結果、8 mg/kg/day (本物質換算: 13 mg/kg/day、区分2の範囲) 以上で肝臓及び腎臓重量増加が、16 mg/kg/day (本物質換算: 27 mg/kg/day、区分2の範囲) で骨格筋のわずかな筋肉変性がみられた (環境省リスク評価第3巻: 暫定的有害性評価シート (2004)、SCCS (2012))。 (3) ウサギに本物質10 mg/kg/day (本物質換算: 17 mg/kg/day、区分2の範囲) を90日間経口投与した結果、心筋実質の変化 (浮腫、筋線維の膨化、細胞質の均質化、横紋の消失) が認められた (ACGIH (7th, 2001))。
【参考データ等】 (4) p-フェニレンジアミン及びp-フェニレンジアミンの誘導体は筋毒性を引き起こす可能性があることがよく知られている (SCCS (2012))。 (5) ヒトに関する情報として、p-フェニレンジアミンを含む市販の染毛剤を定期的に使用していた51歳の女性で肝腫大と脾臓の肥大が見られ、入院後死亡までの11週間に進行性神経障害を発症したとの報告 (IARC 16 (1978)、ACGIH (7th, 2001))、p-フェニレンジアミンを含む染毛剤を使用し消化器と神経症状が観察されたとの報告 (ACGIH (7th, 2001))、p-フェニレンジアミンを含む染毛剤の5年間に亘る職業ばく露を受けた作業者が黄疸と肝臓の亜急性萎縮により死亡したとの報告 (ACGIH (7th, 2001)) 等がある。

誤えん有害性*

【分類根拠】 データ不足のため分類できない。

* JIS Z7252の改訂により吸引性呼吸器有害性から項目名が変更となった。

12. 環境影響情報

12.1 生態毒性

データなし

12.2 残留性・分解性

データなし

12.3 生体蓄積性

データなし

12.4 土壌中の移動性

データなし

12.5 PBT および vPvB の評価結果

化学物質安全性評価が必要ではない/行っていないため、PBT/vPvB評価データはない。

13. 廃棄上の注意

13.1 廃棄物処理方法

製品
免許を有する廃棄物処理業者に、余剰物で再使用不可の溶液として処理を依頼する。 可燃性溶剤に溶解または混合し、アフターバーナーとスクラバーが備えられた化学焼却炉で焼却する。汚染容器及び包装製品入り容器と同様に処分する。

14. 輸送上の注意

14.1 国連番号

ADR/RID (陸上規制): 1673    IMDG (海上規制): 1673    IATA-DGR (航空規制): 1673

14.2 国連輸送名

IATA-DGR (航空規制): Phenylenediamines
IMDG (海上規制): PHENYLENEDIAMINES
ADR/RID (陸上規制): PHENYLENEDIAMINES

14.3 輸送危険有害性クラス

ADR/RID (陸上規制): 6.1    IMDG (海上規制): 6.1    IATA-DGR (航空規制): 6.1

14.4 容器等級

ADR/RID (陸上規制): III IMDG (海上規制): III IATA-DGR (航空規制): III

14.5 環境危険有害性

該当
ADR/RID: 該当 IMDG 海洋汚染物質(該当・非該当): IATA-DGR (航空規制): 非該当

14.6 特別の安全対策

なし

14.7 混触危険物質

強酸化剤

15. 適用法令

労働安全衛生法

該当しない

化学物質排出把握管理促進法 (PRTR法)

該当しない

毒物及び劇物取締法

劇物(指定令第2条)【84 フエニレンジアミン及びその塩類】

道路法

車両の通行の制限(施行令第19条の13、(独)日本高速道路保有・債務返済機構公示第12号・別表第2)【3 フエニレンジアミン及びその塩類】

航空法

毒物類・毒物(施行規則第194条危険物告示別表第1)【【国連番号】2811 その他の毒物(固体)(有機物)】

船舶安全法

毒物類・毒物(危規則第3条危険物告示別表第1)【【国連番号】2811 その他の毒物(固体)(有機物)】

16. その他の情報

略語と頭字語

TWA: 時間加重平均
STEL: 短期暴露限度
RID: 鉄道による危険物の国際運送に関する規則
LD50: 致死量 50%
LC50: 致死濃度 50%
IMDG: 国際海上危険物
IATA:国際航空運送協会
EC50: 有効濃度 50%
CAS: ケミカルアブストラクトサービス
ADR: 道路による危険物の国際輸送に関する欧州協定

参考文献

【1】労働安全衛生法 ウェブサイト https://www.mhlw.go.jp
【2】化学物質審査規制法(化審法)https://www.env.go.jp
【3】化学物質排出把握管理促進法(PRTR法) https://www.chemicoco.env.go.jp
【4】NITE化学物質総合情報提供システム (NITE-CHRIP)https://www.nite.go.jp/
【5】カメオケミカルズ公式サイト http://cameochemicals.noaa.gov/search/simple
【6】ChemIDplus、ウェブサイト http://chem.sis.nlm.nih.gov/chemidplus/chemidlite.jsp
【7】ECHA - 欧州化学物質庁、ウェブサイト https://echa.europa.eu/
【8】eChemPortal - OECD 化学物質情報グローバルポータル、ウェブサイトhttp://www.echemportal.org/echemportal/index?pageID=0&request_locale=en
【9】ERG - 米国運輸省による緊急対応ガイドブック、ウェブサイトhttp://www.phmsa.dot.gov/hazmat/library/erg
【10】有害物質に関するドイツ GESTIS データベース、ウェブサイトhttp://www.dguv.de/ifa/gestis/gestis-stoffdatenbank/index-2.jsp
【11】HSDB - 有害物質データバンク、ウェブサイト https://toxnet.nlm.nih.gov/newtoxnet/hsdb.htm
【12】IARC - 国際がん研究機関、ウェブサイト http://www.iarc.fr/
【13】IPCS - The International Chemical Safety Cards (ICSC)、ウェブサイトhttp://www.ilo.org/dyn/icsc/showcard.home
【14】Sigma-Aldrich、ウェブサイト https://www.sigmaaldrich.com/
免責事項:

本MSDS中の情報は指定された製品にのみ適用され、特に規定がない限り、本製品とその他の物質の混合物には適用されません。本MSDSは、製品使用者の適切な専門的なトレーニングを受けた者にのみ製品安全情報を提供します。本MSDSの使用者は、本SDSの適用性について独自に判断しなければならない。本MSDSの著者は、本MSDSの使用によるいかなる傷害にも責任を負わない。

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1,4-ジアミノ-2,3-ジクロロアントラキノン SDS 二塩化N,N-ジメチル-M-フェニレンジアンモニウム SDS ビスマルクブラウン SDS 1-アミノ-4-[[3-[(4,6-ジクロロ-1,3,5-トリアジン-2-イル)アミノ]-4-スルホフェニル]アミノ]-9,10-ジヒドロ-9,10-ジオキソ-2-アントラセンスルホン酸 SDS 1,2,4,5-ベンゼンテトラアミン·4塩酸塩 SDS 1,3-フェニレンジアミン二塩酸塩 SDS 2,5-ジクロロ-1,4-フェニレンジアミン SDS 塩酸1,4-フェニレンジアミン SDS N,N-ジメチル-1,4-ベンゼンジアミン·塩酸塩 SDS アミドール SDS