安全データシート

硫酸水素

改訂日:2024-01-24版番号:1

1. 化学品及び会社情報

製品識別子

  • 製品名: 硫酸水素
  • CB番号: CB9675634
  • CAS: 7664-93-9
  • EINECS番号: 231-639-5
  • 同義語: 硫,濃硫酸

物質または混合物の関連する特定された用途、および推奨されない用途

  • 関連する特定用途: 肥料・繊維・無機薬品・金属製錬・製鋼・紡織・製紙・食料品工業等での原料・助剤・排水処理剤等 (NITE-CHRIPより引用)
  • 推奨されない用途: なし

会社ID

  • 会社名:Chemicalbook
  • 住所:北京市海淀区上地十街匯煌国際1号棟
  • 電話:400-158-6606

2. 危険有害性の要約

GHS分類

分類実施日(物化危険性及び健康有害性)
R5.3.31、政府向けGHS分類ガイダンス(令和3年度改訂版(Ver2.1))を使用
物理化学的危険性
金属腐食性化学品   区分1
健康に対する有害性
特定標的臓器毒性 (反復ばく露)   区分1(呼吸器)
特定標的臓器毒性 (単回ばく露)   区分1(呼吸器)
眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性   区分1
皮膚腐食性/刺激性   区分1
急性毒性(吸入:粉塵、ミスト)   区分2
分類実施日(環境有害性)
ガイダンスVer.1.1 (GHS 4版, JIS Z7252:2014)
環境に対する有害性
水生環境有害性 長期(慢性)   区分1
水生環境有害性 短期(急性)   区分3

2.2 注意書きも含むGHSラベル要素

絵表示
GHS05
注意喚起語
危険
危険有害性情報
H314 重篤な皮膚の薬傷及び眼の損傷。
H290 金属腐食のおそれ。
注意書き
安全対策
P280 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
P264 取扱い後は皮膚をよく洗うこと。
P234 他の容器に移し替えないこと。
応急措置
P390 物的被害を防止するためにも流出したものを吸収すること。
P363 汚染された衣類を再使用する場合には洗濯をすること。
P305 + P351 + P338 眼に入った場合:水で数分間注意深く洗うこと。次にコンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。
P303 + P361 + P353 皮膚(又は髪)に付着した場合:直ちに汚染された衣類を全て脱ぐこと。皮膚を水【又はシャワー】で洗うこと。
P301 + P330 + P331 飲み込んだ場合:口をすすぐこと。無理に吐かせないこと。
保管
P406 耐腐食性/耐腐食性内張りのある耐腐食性容器に保管すること。
P405 施錠して保管すること。
廃棄
P501 内容物/容器を承認された処理施設に廃棄すること。

2.3 他の危険有害性

なし

3. 組成及び成分情報

  • 化学物質・混合物の区別: 化学物質
  • 化学特性(示性式、構造式 等): H2O4S
  • 分子量: 98.08 g/mol
  • CAS番号: 7664-93-9
  • EC番号: 231-639-5
  • 化審法官報公示番号: 1-430
  • 安衛法官報公示番号: -

4. 応急措置

4.1 必要な応急手当

一般的アドバイス
応急措置担当者は自分が暴露しないよう、適切な防護を行う。 この安全データシートを担当医に見せる。
吸入した場合
吸入後は新鮮な空気を吸うこと。ただちに医師の診察を受けること。
皮膚に付着した場合
皮膚に接触した場合: すべての汚染された衣類を直ちに脱ぐこと。 皮膚を流水/シャワーで洗うこと。 直ちに医師を呼ぶ。
眼に入った場合
眼に触れた後は多量の水ですすぐこと。 ただちに眼科医の診察を受けること。 コンタクトレンズをはずす。
飲み込んだ場合
飲み込んだ後は水を飲ませ(多くてもグラス2杯)、嘔吐を避ける(穿孔のリスクあり) 直ちに医師を呼ぶ。中和させようとしないこと。

4.2 急性症状及び遅発性症状の最も重要な徴候症状

もっとも重要な既知の徴候と症状は、ラベル表示(項目2.2を参照)および/または項目11に記載されている

4.3 緊急治療及び必要とされる特別処置の指示

データなし

5. 火災時の措置

5.1 消火剤

使ってはならない消火剤
本物質/混合物に対する消火剤の制限なし
適切な消火剤
現場の状況と周辺環境に応じて適切な消火手段を用いる。

5.2 特有の危険有害性

周辺の火災で有害な蒸気を放出することがある。
不可燃性である。
硫黄酸化物

5.3 消防士へのアドバイス

自給式呼吸器がある場合のみ危険区域に留まってもよい。安全なゾーンまで離れるか適切な保護衣を着用して、皮膚に触れないようにすること。

5.4 詳細情報

ガス/蒸気/ミストを水スプレージェットで抑える(除去する)。 消火水が、地上水または地下水のシステムを汚染しないようにする。

6. 漏出時の措置

6.1 人体に対する注意事項、保護具及び緊急時措置

救急隊員以外への助言: 蒸気、エアゾールを吸入してはならない。 触れないようにすること。 十分な換気を確保する。 危険なエリアから避難し、緊急時手順に従い、専門家に相談のこと個人保護については項目 8 を参照する。

6.2 環境に対する注意事項

物質が排水施設に流れ込まないようにする。

6.3 封じ込め及び浄化の方法及び機材

排水溝に蓋をすること。こぼれたら集めて結合させ、ポンプですくい取る。 物質の制限があれば順守のこと (セクション 7、10参照) 液体吸収剤と中和物質 (例. Chemizorb® H⁺, Merck Art. No. 101595) で処置すること。正しく廃棄すること。関係エリアを清掃のこと。

6.4 参照すべき他の項目

廃棄はセクション13を参照。

7. 取扱い及び保管上の注意

7.1 安全な取扱いのための予防措置

注意事項は項目2.2を参照。

7.2 配合禁忌等を踏まえた保管条件

保管クラス
保管クラス (ドイツ) (TRGS 510): 8B: 不燃性、腐食性危険物
保管条件
金属容器禁止。密閉のこと。

7.3 特定の最終用途

項目1.2に記載されている用途以外には、その他の特定の用途が定められていない

8. ばく露防止及び保護措置

8.1 管理濃度

コンポーネント別作業環境測定パラメータ
OEL-C: 1 mg/m3 - 日本産業衛生学会 許容濃度等の勧告
TWA: 0.2 mg/m3 - 米国。 ACGIH限界閾値(TLV)

8.2 曝露防止

適切な技術的管理
汚した衣類は脱いで水に浸けること。 皮膚の予防処置 本物質を扱った後は手と顔を洗うこと。
保護具
眼/顔面の保護
NIOSH(US)またはEN 166(EU)などの適切な政府機関の規格で試験され、認められた眼の
保護具を使用する。 密着性の高い安全ゴーグル
皮膚及び身体の保護具
本推奨は、当社発行の安全データシート,に記載されている製品およびその指定の使用法のみに
適用される。溶解、他の物質との混合、およびEN374に記載の逸脱条件での使用については、
CE認証手袋のサプライヤに問い合わせのこと(例. KCL GmbH, D-36124 Eichenzell, Internet:
www.kcl.de)
フルコンタクト
材質: バイトン®
最小厚: 0.7 mm
破過時間: 480 min
試験物質:Vitoject? (KCL 890 / Aldrich Z677698, Size M)
本推奨は、当社発行の安全データシート,に記載されている製品およびその指定の使用法のみに
適用される。溶解、他の物質との混合、およびEN374に記載の逸脱条件での使用については、
CE認証手袋のサプライヤに問い合わせのこと(例. KCL GmbH, D-36124 Eichenzell, Internet:
www.kcl.de)
飛沫への接触
材質: ブチルゴム
最小厚: 0.7 mm
破過時間: 120 min
試験物質:Butoject® (KCL 898)
身体の保護
耐酸性の防護衣類
呼吸用保護具
気化ガス/エアロゾル発生時に必要 次の規格に準拠しているフィルター式呼吸器保護具を推奨し
ます。DIN EN 143、DIN 14387および使用済み呼吸器保護システムに関連する他の付属規格。
環境暴露の制御
物質が排水施設に流れ込まないようにする。

9. 物理的及び化学的性質

物理的状態

物理状態
液体(GHS判定)
無色~濃茶色(純度による)
臭い
無臭

融点/凝固点

10.94 ℃(GESTIS(2022)) 10.4 ℃(Lewis(2001)) 3~10.49 ℃(化学物質安全性データブック(1997))

沸点、初留点及び沸騰範囲

290 ℃(GESTIS(2022)) ~290 ℃(340℃にて分解。)(Merck(2013)) 315~338 ℃(Lewis(2001))

可燃性

データなし

爆発下限界及び爆発上限界/可燃限界

データなし

引火点

非可燃性物質(GESTIS(2022))

自然発火点

データなし

分解温度

340 ℃(Merck(2013))

pH

データなし

動粘性率

≒24 mPa.s(20℃)(GESTIS(2022))

溶解度

水: (完全に混合可能)(GESTIS(2022)) 水: (混和する)(ICSC(2016))

n-オクタノール/水分配係数

データなし

蒸気圧

<10 Pa(20℃)(ほとんどない)(ICSC(2018)) <0.1 Pa(GESTIS(2022)) 0.13 kPa(化学物質安全性データブック(1997))

密度及び/又は相対密度

1.8305 g/cm³(20℃)(CRC(2018)) 1.84 g/cm³(20℃)(GESTIS(2022)) 1.84 g/cm³(純物質)(Lewis(2001))

相対ガス密度

データなし

粒子特性

データなし

10. 安定性及び反応性

10.1 反応性

データなし

10.2 化学的安定性

標準的な大気条件(室温)で化学的に安定。

10.3 危険有害反応可能性

過酸化水素
過塩素酸塩
アミン
塩素酸塩
臭素酸
鉄(III)化合物
ケイ化リチウム
窒化物
ピクリン酸塩
過酸化物
アニリン
有機窒素化合物
ニトリル
アセチリド
有機溶剤
可燃性物質
炭化物
硝酸塩
過マンガン酸塩
オキシハロゲン化合物
ハロゲン-ハロゲン化合物
水素化物
リン
リンの酸化物
金属合金
金属
アルカリ土類化合物
酸類
塩基
アルカリ土類金属
アセトニトリル
アルデヒド類
アンモニア
アルカリ化合物
アルカリ金属
次の物質との反応で爆発や有毒ガス発生の危険あり

10.4 避けるべき条件

情報なし

10.5 混触危険物質

動物/植物細胞金属と接触すると水素ガスを発生する。

10.6 危険有害な分解生成物

火災の場合:項目5を参照

11. 有害性情報

急性毒性

経口
【分類根拠】 (1)より、区分に該当しない(国連分類基準の区分5)。なお、新たな評価に基づき分類結果を変更した。
【根拠データ】 (1)ラットのLD50:2,140 mg/kg(AICIS IMAP (2015)、SIAR (2001)、HSDB in PubChem (Accessed Sep. 2022))
経皮
【分類根拠】 データ不足のため分類できない。
吸入: ガス
【分類根拠】 GHSの定義における液体であり、区分に該当しない。
吸入: 蒸気
【分類根拠】 データ不足のため分類できない。
吸入: 粉じん及びミスト
【分類根拠】 (1)より、区分2とした。なお、ばく露濃度は飽和蒸気圧濃度(0.000314 mg/L)より高いため、ミストと判断した。
【根拠データ】 (1)ラットのLC50(4時間):0.375 mg/L(OECD TG 403)(AICIS IMAP (2015)、SIAR (2001)、US AEGL (2009)、HSDB in PubChem (Accessed Sep. 2022))

皮膚腐食性及び皮膚刺激性

【分類根拠】 (1)~(3)より、区分1とした。
【根拠データ】 (1)濃硫酸による皮膚火傷が多数報告されている(SIAR (2001))。 (2)硫酸は皮膚、粘膜及び角膜の腐食性又は壊死までも生じる高度の刺激性を有する(DFG MAK (2001))。 (3)硫酸は腐食性及び刺激性を有し、十分な濃度でばく露した後には皮膚、眼及び消化管に直接的な局所影響を生じる。高濃度でのばく露は組織を急速に破壊し、重度の火傷を生じる(AICIS IMAP (2015))。
【参考データ等】 (4)EUではSkin Corr. 1Aに分類されている(CLP分類結果 (Accessed Sep. 2022)。

眼に対する重篤な損傷性又は眼刺激性

【分類根拠】 (1)、(2)より、区分1とした。
【根拠データ】 (1)皮膚腐食性/刺激性で区分1である。 (2)硫酸は腐食性及び刺激性を有し、十分な濃度でばく露した後には皮膚、眼及び消化管に直接的な局所影響を生じる。高濃度でのばく露は組織を急速に破壊し、重度の火傷を生じる(AICIS IMAP (2015))。

呼吸器感作性

【分類根拠】 データ不足のため分類できない。

皮膚感作性

【分類根拠】 (1)、(2)より、区分に該当しない。
【根拠データ】 (1)一般に皮膚の重度の刺激や火傷は接触アレルギーが起こりやすい状況をつくることが知られているが、硫酸ばく露後の皮膚刺激や火傷による二次的な皮膚感作性の報告はない(SIAR (2001)、AICIS IMAP (2015))。 (2)様々な金属の硫酸塩(硫酸ニッケル、硫酸コバルト等)が日常のアレルギー検査に使用されるが、陽性反応は金属の陽イオンに関連して生じ、硫酸塩による反応ではないことから、非アレルギー性であると推定される(SIAR (2001))。

生殖細胞変異原性

【分類根拠】 データ不足のため分類できない。
【参考データ等】 (1)In vitroでは、ネズミチフス菌と大腸菌を用いた復帰突然変異試験で陰性、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞を用いた染色体異常試験で陽性の結果が得られているが、培養液の低pHに起因することが明らかにされている(SIAR (2001)、IARC 100F (2012))。

発がん性

【分類根拠】 (1)の既存分類結果からは本物質を含む強無機酸ミストは区分1Aとなるが(2)~(4)より、ミスト(エアロゾル)の吸入曝露による気道の障害が認められる場合に限られることから、分類できないとした。
【根拠データ】 (1)国内外の評価機関による既存分類として、硫酸を含む強無機酸のミストに対して、IARCでグループ1に(IARC 100F (2012))、NTPでKに(NTP RoC 15th. (2021))、ACGIHでA2に(ACGIH (2004))、それぞれ分類されている。 (2)IARCは硫酸を含む強無機酸のミストへの職業ばく露はヒトに発がん性を有する(グループ1)と結論した。この分類はミスト(ないしエアロゾル)に対し適用されるもので、硫酸それ自体に対するものではない。十分に高濃度の硫酸エアロゾルは鼻咽頭領域及び/又は喉頭領域に好発的に沈着し、そこで傷害、炎症及び修復を繰り返し生じる。その結果、細胞増殖が生じ、他の発がん物質と連動して影響(硫酸ばく露との関連性の弱い影響:反復的な刺激性影響)を生じると推測される。このような好発部位への沈着と極度の局所誘発性影響の推測を可能にする例として、ラットの28日間反復吸入ばく露試験(4)において、喉頭の扁平上皮化生と持続的増殖としてみられている(AICIS IMAP (2015))。 (3)ラット、マウス及びモルモットの異なる3動物種を用いた硫酸エアロゾル吸入による発がん性試験では発がん影響は検出されなかった。硫酸溶液のラット及びマウスへの慢性的な強制経口投与又は気管内投与後に腫瘍発生のわずかな増加がみられたとの報告があるが、これらの結果からは本物質の発がん性について明確な結論を導くことができない。いくつかの疫学研究では硫酸を含む無機酸ミストへのばく露と喉頭がんの発生頻度増加との間に相関があると示唆されている(AICIS IMAP (2015)、SIAR (2001))。 (4)雌ラットを用いた硫酸ミストの28日間吸入ばく露試験(6時間/日、5日/週)では、0.3 mg/m3(ガイダンス値換算:0.000067 mg/L/6 hr)で喉頭の扁平上皮化生、1.38 mg/m3(同0.0003 mg/L/6 hr)以上では喉頭上皮の細胞増殖が認められた(AICIS IMAP (2015)、US AEGL (2009)、SIAR (2001))。

生殖毒性

【分類根拠】 (1)、(2)より、明らかな発生毒性は生じないと考えられる。一方、分類に利用可能な生殖毒性試験報告はないが、(3)より、区分に該当しないとした。
【根拠データ】 (1)マウスを用いた吸入ばく露による発生毒性試験(妊娠6~15日)において、母動物に摂餌量減少(第1日のみ)及び肝臓重量減少がみられる高用量(19.3 mg/m3)まで、胎児に発生影響はみられなかったとの報告がある(US AEGL (2009)、SIAR (2001)、ATSDR (1998))。 (2)ウサギを用いた吸入ばく露による発生毒性試験(妊娠6~18日)において、母動物に亜急性鼻炎/気管支炎の発生頻度の増加が低用量(5.7 mg/m3)から用量に相関してみられ、高用量群では初日のみ体重増加抑制もみられた。胎児には軽微な変化として骨格変異(頭蓋骨の非骨化領域のサイズが小さい)がみられたのみであったとの報告がある(US AEGL (2009)、SIAR (2001)、ATSDR (1998))。 (3)実験動物を用いた硫酸の経口、経皮又は吸入ばく露による生殖毒性に関する報告は入手できなかった。しかし、硫酸は刺激性/腐食性影響を有するため、経口及び経皮経路で生殖影響を試験することは適切ではない。硫酸は接触部位で直接作用する毒物である。酸そのものが吸収されて全身に分布するわけではないと考えられる。したがって、いずれの経路によってもばく露後に硫酸が雌雄の生殖器官に硫酸として到達するとは考えにくい。イオン化した硫酸イオンは含硫アミノ酸の正常な代謝産物として尿中に過剰排泄されることもあり、毒性学的に特別な役割を果たすことはないと考えられるとの報告がある(SIAR (2001))。

特定標的臓器毒性 (単回ばく露)

【分類根拠】 (1)~(3)より、区分1(呼吸器)とした。
【根拠データ】 (1)硫酸を吸入したヒトでは鼻汁分泌、くしゃみ、喉と胸骨の後ろの灼熱感に続き、咳、呼吸困難(時に声帯の攣縮を伴う)、気管支炎の症例報告がある。高濃度ばく露では血液の混じった鼻汁及び喀痰、喀血及び胃炎がみられた。これらの他、硫酸に吸入ばく露した結果、呼吸器症状を発症した症例報告は多数ある(DFG MAK (2001))。 (2)ボランティアを用いた単回吸入ばく露試験において、0.38 mg/m3以上の硫酸にばく露中に深く吸入しながら運動したヒトで咳が出たとの報告、0.45 mg/m3の硫酸にばく露24時間後のボランティアで気道反応の亢進がみられたとの報告、0.45 mg/m3ばく露と1.0 mg/m3ばく露で喉の刺激を生じたとの報告等がある。硫酸濃度が3 mg/m3以上のばく露ではラ音と気管支収縮を生じたとの報告がある(DFG MAK (2001))。 (3)多数の急性吸入毒性試験がラット、マウス、ウサギ及びモルモットで実施され、気道の局所刺激性がみられた。影響は接触部位に限られるため、いずれの試験においても全身毒性の証拠は得られない。硫酸エアロゾル吸入ばく露後に気道でみられた主な所見は、モルモットでは肺の出血、浮腫、無気肺(肺の部分崩壊又は不完全拡張)、肺胞壁の肥厚、ラット及びマウスでは肺の出血及び浮腫、鼻甲介、気管及び喉頭の潰瘍である。これらの病変は硫酸の腐食性/刺激性に関連した影響である(AICIS IMAP (2015))。

特定標的臓器毒性 (反復ばく露)

【分類根拠】 (1)~(4)より、区分1(呼吸器)とした。
【根拠データ】 (1)硫酸のミストの反復又は長時間吸入により気道の炎症を生じ、慢性気管支炎をきたすおそれがある。熱酸や発煙硫酸の濃縮蒸気又はミストの吸入は肺組織への重度の傷害を伴い急速な意識喪失を生じる可能性がある(AICIS IMAP (2015))。 (2)ラット(雌)を用いた28日間反復吸入(ミスト)ばく露試験(6時間/日、5日/週)において、0.3 mg/m3(ガイダンス換算値:0.000067 mg/L/6h、区分1の範囲)以上で喉頭の扁平上皮化生がみられ、1.38 mg/m3(ガイダンス換算値:0.0003 mg/L/6h、区分1の範囲)以上で喉頭上皮の細胞増殖がみられたとの報告がある(AICIS IMAP (2015)、US AEGL (2009)、SIAR (2001))。 (3)ラット(雄)を用いた82日間反復吸入ばく露試験(8時間/日)において、2 mg/m3(ガイダンス換算値:0.0018 mg/L/6h、区分1の範囲)以上で肺胞上皮細胞(主に肺胞管)の肥大がみられたとの報告がある(US AEGL (2009))。 (4)サルを用いた78週間反復吸入(ミスト)ばく露試験において、約0.4 mg/m3(0.0004 mg/L/6h、区分1の範囲)以上で肺の構造(細気管支上皮の過形成・肥厚)と機能(換気能の低下)への有害影響が軽度にみられ、2.43 mg/m3(0.00243 mg/L/6h、区分1の範囲)以上で明瞭にみられたとの報告がある(ACGIH (2003))。

誤えん有害性*

【分類根拠】 データ不足のため分類できない。

* JIS Z7252の改訂により吸引性呼吸器有害性から項目名が変更となった。

12. 環境影響情報

12.1 生態毒性

ミジンコ等の水生無脊
止水式試験 EC50 - Daphnia magna (オオミジンコ) - > 100 mg/l - 48 h
椎動物に対する毒性
(OECD 試験ガイドライン 202)
藻類に対する毒性
止水式試験 ErC50 - Desmodesmus subspicatus (緑藻) - > 100 mg/l - 72 h
(OECD 試験ガイドライン 201)

12.2 残留性・分解性

生分解性の判定方法は無機物質には適用されない。

12.3 生体蓄積性

データなし

12.4 土壌中の移動性

データなし

12.5 PBT および vPvB の評価結果

化学物質安全性評価が必要ではない/行っていないため、PBT/vPvB評価データはない。

12.6 内分泌かく乱性

データなし

12.7 他の有害影響

環境への放出は必ず避けなければならない。
廃水処理プラントで中和可能
土壌や水系に多量に入った場合は、飲用水を危険にさらす。
生物学的酸素欠乏をひきおこさない。
希釈型であっても注意すること。
pHの変化により有害な作用。
生物学的影響

13. 廃棄上の注意

13.1 廃棄物処理方法

製品
内容物及び容器は、関連法規及び各自治体の条例等の規制に従い、産業廃棄物として適切に処理すること。

14. 輸送上の注意

14.1 国連番号

ADR/RID (陸上規制): 1830    IMDG (海上規制): 1830    IATA-DGR (航空規制): 1830

14.2 国連輸送名

IATA-DGR (航空規制): Sulphuric acid
IMDG (海上規制): SULPHURIC ACID
ADR/RID (陸上規制): SULPHURIC ACID

14.3 輸送危険有害性クラス

ADR/RID (陸上規制): 8    IMDG (海上規制): 8    IATA-DGR (航空規制): 8

14.4 容器等級

ADR/RID (陸上規制): II IMDG (海上規制): II IATA-DGR (航空規制): II

14.5 環境危険有害性

非該当
ADR/RID: 非該当 IMDG 海洋汚染物質(該当・非該当): IATA-DGR (航空規制): 非該当

14.6 特別の安全対策

なし

14.7 混触危険物質

動物/植物細胞金属と接触すると水素ガスを発生する。

15. 適用法令

労働安全衛生法

特定化学物質第3類物質(施行令別表第3第3号・特定化学物質障害予防規則第2条第1項第6号) 名称等を表示すべき危険物及び有害物(法第57条第1項、施行令第18条第1号、第2号別表第9) 名称等を通知すべき危険物及び有害物(法第57条の2、施行令第18条の2第1号、第2号別表第9)、リスクアセスメント対象物(法第57の3) 腐食性液体(労働安全衛生規則第326条) 作業場内表示義務(法第101条の4)

労働基準法

疾病化学物質(法第75条第2項、施行規則第35条別表第1の2第4号1)【硫酸(皮膚障害、前眼部障害、気道・肺障害又は歯牙酸蝕)】

化学物質排出把握管理促進法(PRTR法)

該当しない

毒物及び劇物取締法

劇物(法第2条別表第2)

大気汚染防止法

特定物質 (法第17条第1項、施行令第10条)

水質汚濁防止法

指定物質(法第2条第4項、施行令第3条の3)

海洋汚染防止法

有害液体物質(Y類同等の物質)(環境省告示第148号第2号)

船舶安全法

腐食性物質(危規則第3条危険物告示別表第1)

航空法

腐食性物質(施行規則第194条危険物告示別表第1)

港則法

その他の危険物・腐食性物質(法第20条第2項、規則第12条、危険物の種類を定める告示別表)

道路法

車両の通行の制限(施行令第19条の13、(独)日本高速道路保有・債務返済機構公示第12号・別表第2)

麻薬及び向精神薬取締法

麻薬向精神薬原料(法第2条第7項、別表第4)

16. その他の情報

略語と頭字語

TWA: 時間加重平均
STEL: 短期暴露限度
RID: 鉄道による危険物の国際運送に関する規則
LD50: 致死量 50%
LC50: 致死濃度 50%
IMDG: 国際海上危険物
IATA:国際航空運送協会
EC50: 有効濃度 50%
CAS: ケミカルアブストラクトサービス
ADR: 道路による危険物の国際輸送に関する欧州協定

参考文献

【1】労働安全衛生法 ウェブサイト https://www.mhlw.go.jp
【2】化学物質審査規制法(化審法)https://www.env.go.jp
【3】化学物質排出把握管理促進法(PRTR法) https://www.chemicoco.env.go.jp
【4】NITE化学物質総合情報提供システム (NITE-CHRIP)https://www.nite.go.jp/
【5】カメオケミカルズ公式サイト http://cameochemicals.noaa.gov/search/simple
【6】ChemIDplus、ウェブサイト http://chem.sis.nlm.nih.gov/chemidplus/chemidlite.jsp
【7】ECHA - 欧州化学物質庁、ウェブサイト https://echa.europa.eu/
【8】eChemPortal - OECD 化学物質情報グローバルポータル、ウェブサイトhttp://www.echemportal.org/echemportal/index?pageID=0&request_locale=en
【9】ERG - 米国運輸省による緊急対応ガイドブック、ウェブサイトhttp://www.phmsa.dot.gov/hazmat/library/erg
【10】有害物質に関するドイツ GESTIS データベース、ウェブサイトhttp://www.dguv.de/ifa/gestis/gestis-stoffdatenbank/index-2.jsp
【11】HSDB - 有害物質データバンク、ウェブサイト https://toxnet.nlm.nih.gov/newtoxnet/hsdb.htm
【12】IARC - 国際がん研究機関、ウェブサイト http://www.iarc.fr/
【13】IPCS - The International Chemical Safety Cards (ICSC)、ウェブサイトhttp://www.ilo.org/dyn/icsc/showcard.home
【14】Sigma-Aldrich、ウェブサイト https://www.sigmaaldrich.com/
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