急性毒性
経口
【分類根拠】 (1)~(3) より、区分4とした。
【根拠データ】 (1) ラットのLD50: 雌: 1,510 mg/kg、雄: 1,660 mg/kg (JMPR (2012)、食安委 農薬評価書 (2013)、農薬抄録 (2011)) (2) ラットのLD50: 雌: 1,620 mg/kg、雄: 2,000 mg/kg (JMPR (2012)、食安委 農薬評価書 (2013)、農薬抄録 (2011)、HSDB (Access on June 2020)) (3) ラットのLD50: 1,620 mg/kg (GESTIS (Access on June 2020))
経皮
【分類根拠】 (1)~(5) より、区分4とした。
【根拠データ】 (1) ウサギのLD50: 雌: 1,500~2,000 mg/kg、雄: > 2,000 mg/kg (JMPR (2012)) (2) ラットのLD50: 1,380 mg/kg (GESTIS (Access on June 2020)) (3) ラットのLD50: > 2,000 mg/kg (JMPR Report (2012)) (4) ラットのLD50: 雌: 4,000 mg/kg、雄: > 4,000 mg/kg (食安委 農薬評価書 (2013)、HSDB (Access on June 2020)) (5) ラットのLD50: > 4,000 mg/kg (JMPR (2012))
吸入: ガス
【分類根拠】 GHSの定義における固体であり、区分に該当しない。
吸入: 蒸気
【分類根拠】 データ不足のため分類できない。
吸入: 粉じん及びミスト
【分類根拠】 (1)~(3) より、区分4とした。 なお、ばく露濃度が飽和蒸気圧濃度 (9.7E-011 mg/L) よりも高いため、粉じんとしてmg/Lを単位とする基準値を適用した。
【根拠データ】 (1) ラットのLC50 (鼻部ばく露、4時間): 雄: 1.26 mg/L、雌: 2.60 mg/L (食安委 農薬評価書 (2013)、農薬抄録 (2011)、HSDB (Access on June 2020)) (2) ラットのLC50 (4時間): 1.26 mg/L (GESTIS (Access on June 2020)) (3) ラットのLC50 (4時間): ≥ 1.26 mg/L (JMPR Report (2012)) (4) 本物質の蒸気圧: 9.1E-012 mmHg (25℃) (HSDB (Access on June 2020)) (飽和蒸気圧濃度換算値: 9.7E-011 mg/L)
皮膚腐食性及び皮膚刺激性
【分類根拠】 (1)、(2) より、区分に該当しないとした。
【根拠データ】 (1) 本物質のウサギを用いた24時間半閉塞適用による皮膚刺激性試験及びOECD TG 404に準拠した皮膚刺激性試験において一部の動物に紅斑が認められたのみであり、非刺激物と判定されている (JMPR (2012)、農薬工業会 Fed. Chem. Toxic. vol.28 no.5 (1990))。 (2) 本物質のウサギを用いたを用いた眼刺激性試験及び皮膚刺激性試験において刺激性は認められなかった (食安委 農薬評価書 (2013)、農薬抄録 (2011))。
眼に対する重篤な損傷性又は眼刺激性
【分類根拠】 (1)~(3) より、区分に該当しないとした。
【根拠データ】 (1) 本物質のOECD TG 405に準拠した眼刺激性試験において、虹彩及び結膜への刺激が認められ、適用10日までに回復し、非刺激物と判定されている (JMPR (2012)、農薬工業会 Fed. Chem. Toxic. vol.28 no.5 (1990))。 (2) 本物質のウサギを用いた眼刺激性試験において、軽度の虹彩刺激、結膜発赤、眼瞼及び瞬膜の浮腫、分泌物が認められたが、適用3日までに回復し、非刺激物と判定されている (JMPR (2012))。 (3) 本物質のウサギを用いた眼刺激性試験及び皮膚刺激性試験において刺激性は認められなかった (食安委 農薬評価書 (2013)、農薬抄録 (2011))。
呼吸器感作性
【分類根拠】 データ不足のため、分類できない。
皮膚感作性
【分類根拠】 (1)~(3) より、区分に該当しないとした。
【根拠データ】 (1) 本物質のOECD TG 429に準拠したマウス局所リンパ節試験 (LLNA) でSI値は3を上回らず、陰性と判定されている (JMPR (2012))。 (2) 本物質のEPA OPP 81-6に準拠したモルモットを用いた皮膚感作性試験 (ビューラー法、適用濃度 50%) で、陰性と報告されている (JMPR (2012)、農薬抄録 (2011))。 (3) 本物質のOECD TG 406に準拠したモルモットを用いた皮膚感作性試験 (マキシマイゼーション法、皮内投与 1%) で陰性と報告されている (JMPR (2012)、農薬抄録 (2011))。
生殖細胞変異原性
【分類根拠】 (1)、(2) より、区分に該当しないとした。
【根拠データ】 (1) in vivoでは、マウス単回経口投与による小核試験で陰性の報告がある (食安委 農薬評価書 (2013)、農薬抄録 (2011)、JMPR (2012))。 (2) in vitroでは、細菌の復帰突然変異試験で陰性、哺乳類培養細胞を用いた遺伝子突然変異試験で陰性 (食安委 農薬評価書 (2013)、農薬抄録 (2011)、JMPR (2012))、染色体異常試験で陰性の報告がある (食安委 農薬評価書 (2013)、農薬抄録 (2011))。
発がん性
【分類根拠】 (1)~(3) より、区分に該当しないとした。
【根拠データ】 (1) 国内外の分類機関による既存分類では、EPAでNL (Not Likely To Be Carcinogenic To Humans) (EPA Annual Cancer Report 2019 (Access on October 2020):1999年分類) に分類されている。 (2) 雌雄のラットに本物質を2年6ヵ月間混餌投与した慢性毒性/発がん性併合試験では、発がん性は認められなかった (食安委 農薬評価書 (2013))。 (3) 雌雄のラット及びマウスに本物質を2年間混餌投与した発がん性試験では、発がん性は認められなかった (食安委 農薬評価書 (2013))。
【参考データ等】 (4) (3) のラットの2年間発がん性試験では、10,000 ppm 投与群の雄において、稀な腫瘍である皮膚腫瘍 (毛包腫)の発生頻度増加が認められたが、毛包由来と考えられる腫瘍 (毛母腫、毛包上皮腫、毛包腫及び角化棘細胞腫)の発生頻度の合計に統計学的な有意差は認められず、これらの毛包系腫瘍の発現は投与に関連した影響ではないと考えられた (食安委 農薬評価書 (2013))。
生殖毒性
【分類根拠】 (1)~(3) より、区分1Bとした。
【根拠データ】 (1) ラットを用いた混餌投与による2世代繁殖試験において、360 ppm (P世代雄: 24、雌:36、F1世代雄: 24、雌33 mg/kg/day) の雌親動物 (P及びF1) で哺育期間中の摂餌量減少、P及びF1世代 で生産児数の減少 (F1a: 対照群11.2匹、8.8匹、F1b: 対照群11.7匹、7.4匹、F2a: 対照群10.8匹、9.6匹、F2b: 対照群11.2匹、8.2匹) がみられている (食安委 農薬評価書 (2013)、農薬抄録 (2011)、JMPR (2012))。生産児数の減少について、農薬抄録 (2011) では交尾率、受胎率、妊娠率、出産率及び妊娠期間に影響がみられないことから着床後早期に及ぼす影響と考察している。食安委 農薬評価書 (2013) では繁殖能に影響は認められなかったとしている。 (2) 雌ウサギの妊娠7~19 日に強制経口投与した発生毒性試験において、母動物毒性 (痙攣による切迫屠殺 (1例)、体重増加抑制 (対照群の94%)、摂餌量減少) 用量 (20 mg/kg/day) で、早産 (1例)、全胎児死亡 (1例)、着床痕のみ (1例)) がみられ、胎児死亡数増加 (対照群: 0匹/腹、20 mg/kg/day: 0.55匹/腹) がみられている (食安委 農薬評価書 (2013)、農薬抄録 (2011))。 (3) 雌ラットの妊娠6~15日に強制経口投与した発生毒性試験において、母動物毒性 (死亡 (1/20例)、膣出血のため屠殺 (子宮内死亡胎児及び流産と考えられ屠殺:8/20例)、膣出血、活動性亢進、不穏な動き、粗毛、弛緩状態等) 用量 (250 mg/kg/day) で胎児に死亡胎児数増加、腎盂及び尿管拡張の発生頻度増加 (対照群: 0.9%、250 mg/kg/day: 15.7%) がみられているが催奇形性はみられていない (食安委 農薬評価書 (2013)、農薬抄録 (2011))。
【参考データ等】 (4) EU CLP分類ではRepr. 1Bに分類されている (EU CLP分類 (Access on June 2020))。
特定標的臓器毒性 (単回ばく露)
【分類根拠】 (1)~(4) より、区分1 (中枢神経系) とした。
【根拠データ】 (1) ラットの単回経口投与試験において、1,000 mg/kg (区分2の範囲) 以上で鎮静、神経過敏、流涎、流涙、腹臥、立毛がみられた (食安委 農薬評価書 (2013)、農薬抄録 (2011))。 (2) ラットの単回経口投与試験において、雄: 1,000 mg/kg及び雌: 1,600 mg/kg (いずれも区分2の範囲) 以上で、活動性低下、平衡失調、うずくまり、腹臥、横臥、振戦、痙攣、間代性痙攣、痙攣性横転、反射亢進、立毛、ダルリンプル徴候、眼球突出、眼及び口吻部の赤色痂皮形成、不規則呼吸がみられた (食安委 農薬評価書 (2013)、農薬抄録 (2011))。 (3) ラットの単回経皮適用試験において、雄:4,000 mg/kg (区分2超) 及び雌: 2,000 mg/kg (区分2上限) 以上で、過敏反応、鎮静、痙攣、昏迷、平衡失調、うずくまり、爪先歩き、腹位、振戦、ひきつり、腹部退縮、腹側部退縮、痙攣性跳躍、挙尾、立毛、眼瞼拡大、流涎、血尿、攻撃的挙動、咀嚼行動、削痩がみられた (食安委 農薬評価書 (2013)、農薬抄録 (2011))。 (4) ラットの4時間吸入ばく露試験 (ダスト、鼻部ばく露) において、雄: 0.19 mg/L及び雌: 0.12 mg/L (いずれも区分1の範囲) 以上で、眼瞼下垂、断続的振戦、間代性痙攣、機能亢進、立毛、流涎、鎮静がみられた (食安委 農薬評価書 (2013)、農薬抄録 (2011))。
【参考データ等】 (5) 本物質を20%含有する製剤 (BASTA) を約300 mL摂取した65歳の男性で、摂取の4時間半後に言語障害と全身性振戦がみられた (HSDB (Access on June 2020))。 (6) 上記BASTA (本物質を20%含有) を500 mL服用した69歳の女性及び200 mLを服用した87歳の男性で、痙攣がみられた (HSDB (Access on June 2020))。
特定標的臓器毒性 (反復ばく露)
【分類根拠】 (1)~(3) より、区分1 (中枢神経系) とした。
【根拠データ】 (1) 本物質を用いたラット28日間吸入ばく露試験 (6時間/日、エアロゾルばく露と推定) の結果、雄では25 mg/m3 (ガイダンス値換算: 0.008 mg/L、区分1の範囲) 以上、雌では50 mg/m3 (ガイダンス値換算: 0.016 mg/L、区分1の範囲) で鎮静状態、緊張性/間代性痙攣、振戦、よろめき歩行、興奮、攻撃性、血尿がみられたと報告されている (食安委 農薬評価書 (2013))。 (2) 本物質を用いたラット28日間吸入ばく露試験 (6時間/日、5日間/週、エアロゾルばく露) の結果、 100 mg/m3 (ガイダンス値換算: 0.031 mg/L、区分2の範囲) の雌雄で易刺激性、不穏及び活動性低下、反復性の頭部の動きがみられたと報告されている (食安委 農薬評価書 (2013))。 (3) 本物質をイヌに1年間混餌投与した結果、8.5 mg/kg/day (区分1の範囲) の雌雄各1例で死亡 (死亡例で心筋壊死による心及び循環器系の衰弱)、流涎、運動亢進、嗜眠、自発運動低下、振戦、失調性歩行、頻尿、強直性/間代性痙攣等がみられたと報告されている (食安委 農薬評価書 (2013))。
【参考データ等】 (4) 本物質をラット、マウスに90日間混餌投与した試験では、区分2超の用量で中枢神経系への影響が報告されている (食安委 農薬評価書 (2013))
誤えん有害性*
【分類根拠】 データ不足のため分類できない。
* JIS Z7252の改訂により吸引性呼吸器有害性から項目名が変更となった。本有害性クラスの内容に変更はない。