急性毒性
経口
ラットのLD50値として、351 mg/kg (雌)、426 mg/kg (雄) (SIDS (2008))、2,600 mg/kg (PATTY (6th, 2012)、JECFA FAS (1973))、3,470 mg/kg (雄、雌) (SIDS (2008))、4,300 mg/kg (PATTY (6th, 2012)、ACGIH (7th, 2001)) との5件の報告がある。2件が区分4に、3件が区分外 (国連分類基準の区分5) に該当するため、最も多くのデータが該当する区分外 (国連分類基準の区分5) とした。
経皮
ウサギのLD50値として、500 mg/kg (雄、雌) との報告 (PATTY (6th, 2012)、SIDS (2008)、ACGIH (7th, 2001)) 及びラットのLD50値として、1,669 mg/kg (雌) との報告 (SIDS (2008)) がある。それぞれ区分3及び区分4に該当するため、LD50値の最小値が該当する区分3とした。
吸入:ガス
GHSの定義における液体である。
吸入:蒸気
データ不足のため分類できない。ラットの8時間飽和蒸気ばく露試験の結果、死亡例がみられなかった (LC0 (8時間) > 3,850 ppm (4時間換算値:> 5,445 ppm)) との報告 (SIDS (2008)、ACGIH (7th, 2001)) があるが、このデータのみではLC50値がどの区分に該当するかを特定できないため、分類できないとした。なお、飽和蒸気による試験であるとの記載に基づき、ミストを含まないものとしてppmを単位とする基準値を適用した。新たな情報源 (SIDS (2008)) を追加し、区分を見直した。
吸入:粉じん及びミスト
データ不足のため分類できない。ラットのLC50値 (1時間) として、> 19.7 mg/L (4時間換算値:> 4.9mg/L) との報告 (SIDS (2008)) があるが、区分を特定できないため、分類できないとした。なお、LC50値が飽和蒸気圧濃度 (11.7 mg/L) より高いため、ミストの基準値を適用した。
皮膚腐食性及び皮膚刺激性
モルモットに本物質の原液0.5 mLを適用した結果、2時間後に軽度から中等度の浮腫、中等度から重度の紅斑及び壊死がみられ、24時間後及び48時間後に壊死がみられたことから、腐食性ありとされている (SIDS (2008))。また、ウサギに本物質の原液0.01 mLを24時間非閉塞適用した結果、壊死がみられたとの報告がある (SIDS (2008)、ACGIH (7th, 2001)、PATTY (6th, 2012))。以上の結果から区分1とした。なお、本物質はEU DSD分類で「C; R34」、EU CLP分類で「Skin Corr. 1B H314」に分類されている。
眼に対する重篤な損傷性又は眼刺激性
ウサギに本物質の原液0.005 mLを適用した眼刺激性試験において、重度の眼障害がみられたとの報告 (SIDS (2008)) や、腐食性ありとの報告 (IUCLID (2000)) がある。なお、本物質は皮膚刺激性/腐食性の分類で区分1に分類されている。以上の結果から、区分1とした。
呼吸器感作性
データ不足のため分類できない。なお、ヒトにおいて喘息様症状の報告が1例あるが (ACGIH (7th, 2001))、詳細不明であるため区分に用いるには不十分なデータと判断した。
皮膚感作性
データ不足のため分類できない。なお、モルモットを用いたマキシマイゼーション試験において感作性はみられなかったとの報告があるが (IUCLID (2000))、詳細不明であるため区分に用いるには不十分なデータと判断した。
生殖細胞変異原性
ガイダンスの改訂により「区分外」が選択できなくなったため、「分類できない」とした。すなわち、in vivoでは、チャイニーズハムスターの小核試験で陰性 (SIDS (2008)、PATTY (6th, 2012))、in vitroでは、細菌の復帰突然変異試験、哺乳類培養細胞の姉妹染色分体交換試験で陰性である (SIDS (2008)、NTP DB (Access on September 2104)、ACGIH (7th, 2001)、PATTY (6th, 2012))。
なお、旧分類に記載されていたIUCLIDの情報 (in vivoの優性致死試験、in vivo及びin vitro染色体異常試験) については、物質が異なるため分類対象から外した。
発がん性
国際評価機関等による発がん分類はない。ラットに長期 (生涯) 混餌投与した試験において、前胃に前癌病変として乳頭腫や過形成が認められたとの記載 (PATTY (6th, 2012)) があるが、詳細不明であり、データ不足のため分類できない。
生殖毒性
データ不足のため分類できない。
ラット、マウス、ハムスター及びウサギを用いたプロピオン酸カルシウムの経口経路 (混餌) での催奇形性試験において、母動物の生存、胎児の生存及び同腹児数に影響がみられず、胎児の骨格の異常も認められていない (PATTY (6th, 2012)、SIDS (2008))。以上のように催奇形性は認められないが、生殖能に関する十分な情報がないことから分類できないとした。