安全データシート

フェニルヒドラジン

改訂日:2024-01-24版番号:1

1. 化学品及び会社情報

製品識別子

  • 製品名: フェニルヒドラジン
  • CB番号: CB9216819
  • CAS: 100-63-0
  • EINECS番号: 202-873-5
  • 同義語: フェニルヒドラジン

物質または混合物の関連する特定された用途、および推奨されない用途

  • 関連する特定用途: 写真薬・農薬・染料中間体,医薬品(アンチピリン)原料
  • 推奨されない用途: なし

会社ID

  • 会社名:Chemicalbook
  • 住所:北京市海淀区上地十街匯煌国際1号棟
  • 電話:400-158-6606

2. 危険有害性の要約

GHS分類

分類実施日(物化危険性及び健康有害性)
H31.3.15、政府向けGHS分類ガイダンス (H25年度改訂版 (ver1.1):JIS Z7252:2014準拠) を使用
GHS改訂4版を使用
物理化学的危険性
引火性液体   区分4
健康に対する有害性
特定標的臓器毒性 (反復ばく露)   区分1(血液系)
特定標的臓器毒性 (単回ばく露)   区分1(血液系)
発がん性   区分1B
生殖細胞変異原性   区分2
皮膚感作性   区分1
眼に対する重篤な損傷性又は眼刺激性   区分2A
皮膚腐食性及び皮膚刺激性   区分2
急性毒性(経皮)   区分2
急性毒性(経口)   区分3
分類実施日(環境有害性)
環境に対する有害性はH18年度、GHS分類マニュアル(H18.2.10版)を使用
環境に対する有害性
水生環境有害性(急性)   区分1

2.2 注意書きも含むGHSラベル要素

絵表示
GHS06GHS08GHS09
注意喚起語
危険
危険有害性情報
H400 水生生物に非常に強い毒性。
H372 長期にわたる、又は反復暴露による臓器 (全身毒性) の障害。
H350 発がんのおそれ。
H341 遺伝性疾患のおそれの疑い。
H319 強い眼刺激。
H317 アレルギー性皮膚反応を起こすおそれ。
H315 皮膚刺激。
H301 + H311 + H331 飲み込んだ場合や皮膚に接触した場合や吸入した場合は有毒。
H227 可燃性液体。
注意書き
安全対策
P280 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
P273 環境への放出を避けること。
P272 汚染された作業衣は作業場から出さないこと。
P271 屋外又は換気の良い場所でだけ使用すること。
P270 この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
P264 取扱い後は皮膚をよく洗うこと。
P260 ミスト/蒸気を吸入しないこと。
P210 熱、高温のもの、火花、裸火及び他の着火源から遠ざけること。禁煙。
P202 全ての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。
P201 使用前に取扱説明書を入手すること。
応急措置
P337 + P313 眼の刺激が続く場合:医師の診察/手当てを受けること。
P370 + P378 火災の場合:消火するために乾燥砂、粉末消火剤 (ドライケミカル) 又は耐アルコール性フォームを使用すること。
P391 漏出物を回収すること。
P301 + P310 飲み込んだ場合:直ちに医師に連絡すること。
P302 + P352 + P312 皮膚に付着した場合:多量の水と石けん(鹸)で洗うこと。 気分が悪いときは医師に連絡すること。
P304 + P340 + P311 吸入した場合:空気の新鮮な場所に移し,呼吸しやすい姿勢で休息させること。 医師に連絡すること。
P305 + P351 + P338 眼に入った場合:水で数分間注意深く洗うこと。次にコンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。
P308 + P313 ばく露又はばく露の懸念がある場合:医師の診察/手当てを受けること。
P333 + P313 皮膚刺激又は発しん(疹)が生じた場合:医師の診断/手当てを受けること。
保管
P403 換気の良い場所で保管すること。
P403 + P233 換気の良い場所で保管すること。容器を密閉しておくこと。
P405 施錠して保管すること。
廃棄
P501 内容物/容器を承認された処理施設に廃棄すること。
専門的な使用者に限定。

2.3 他の危険有害性

なし

3. 組成及び成分情報

  • 化学物質・混合物の区別: 化学物質
  • 化学特性(示性式、構造式 等): C6H8N2
  • 分子量: 108.14 g/mol
  • CAS番号: 100-63-0
  • EC番号: 202-873-5
  • 化審法官報公示番号: 3-470
  • 安衛法官報公示番号: -

4. 応急措置

4.1 必要な応急手当

一般的アドバイス
応急措置担当者は自分が暴露しないよう、適切な防護を行う。 この安全データシートを担当医に見せる。
吸入した場合
吸入後は新鮮な空気を吸うこと。ただちに医師の診察を受けること。 呼吸停止時はただちに人工呼吸を実施し、必要に応じて酸素も吸入する。
皮膚に付着した場合
皮膚に接触した場合: すべての汚染された衣類を直ちに脱ぐこと。 皮膚を流水/シャワーで洗うこと。 直ちに医師を呼ぶ。
眼に入った場合
眼に触れた後は多量の水ですすぐこと。 眼科医の診察を受けること。 コンタクトレンズをはずす。
飲み込んだ場合
飲み込んだ場合は水を飲ませる(多くても2杯)。ただちに医師の診察を受けること。1時間以内に治療が受けられないという例外的な状況のみ、嘔吐させ(相手に完全に意識のある場合のみ)、活性炭(10%懸濁液に20~40g)を投与してできるだけ早く医師の診察を受ける。

4.2 急性症状及び遅発性症状の最も重要な徴候症状

もっとも重要な既知の徴候と症状は、ラベル表示(項目2.2を参照)および/または項目11に記載されている

4.3 緊急治療及び必要とされる特別処置の指示

データなし

5. 火災時の措置

5.1 消火剤

使ってはならない消火剤
本物質/混合物に対する消火剤の制限なし
適切な消火剤
水 泡 二酸化炭素(CO2) 粉末

5.2 特有の危険有害性

炭素酸化物
窒素酸化物(NOx)
炭素酸化物
窒素酸化物(NOx)
可燃性。
蒸気は空気より重く、床に沿って広がることがある。
高熱で空気と反応して爆発性混合物を生じる
火災時に有害な燃焼ガスや蒸気を生じるおそれあり。

5.3 消防士へのアドバイス

自給式呼吸器がある場合のみ危険区域に留まってもよい。安全なゾーンまで離れるか適切な保護衣を着用して、皮膚に触れないようにすること。

5.4 詳細情報

容器を危険ゾーンから移動させて水で冷やすこと。 ガス/蒸気/ミストを水スプレージェットで抑える(除去する)。 消火水が、地上水または地下水のシステムを汚染しないようにする。

6. 漏出時の措置

6.1 人体に対する注意事項、保護具及び緊急時措置

救急隊員以外への助言: 蒸気、エアゾールを吸入してはならない。 触れないようにすること。 十分な換気を確保する。 熱や発火源から遠ざける。 危険なエリアから避難し、緊急時手順に従い、専門家に相談のこと個人保護については項目 8 を参照する。

6.2 環境に対する注意事項

物質が排水施設に流れ込まないようにする。

6.3 封じ込め及び浄化の方法及び機材

排水溝に蓋をすること。こぼれたら集めて結合させ、ポンプですくい取る。 物質の制限があれば順守のこと (セクション 7、10参照) 液体吸収剤(例. Chemizorb® )で処置すること。 正しく廃棄すること。関係エリアを清掃のこと。

6.4 参照すべき他の項目

廃棄はセクション13を参照。

7. 取扱い及び保管上の注意

7.1 安全な取扱いのための予防措置

安全取扱注意事項
換気フードの下で作業すること。吸い込まないこと。 蒸気やエアロゾルが生じないようにすること。
火災及び爆発の予防
炎、熱および発火源から遠ざける。静電気放電に対する予防措置を講ずること。
衛生対策
汚した衣類はただちに替えること。予防的な皮膚保護を講じること。本物質を取り扱った後は手と顔を洗うこと。注意事項は項目2.2を参照。

7.2 配合禁忌等を踏まえた保管条件

保管クラス
保管クラス (ドイツ) (TRGS 510): 6.1A: 可燃性、急性毒性カテゴリー1および2 / 猛毒性危険物
保管条件
密閉のこと。 換気のよい場所で保管する。 鍵をかけておくか、資格のあるまたは認可された人のみが出入りできる場所に入れておく。光に敏感である。 不活性ガス下に貯蔵する。 空気に反応する。

7.3 特定の最終用途

項目1.2に記載されている用途以外には、その他の特定の用途が定められていない

8. ばく露防止及び保護措置

8.1 管理濃度

コンポーネント別作業環境測定パラメータ
TWA: 0.1 ppm - 米国。 ACGIH限界閾値(TLV)

8.2 曝露防止

適切な技術的管理
汚した衣類はただちに替えること。予防的な皮膚保護を講じること。本物質を取り扱った後は手と顔
を洗うこと。
保護具
眼/顔面の保護
NIOSH(US)またはEN 166(EU)などの適切な政府機関の規格で試験され、認められた眼の
保護具を使用する。 保護眼鏡
皮膚及び身体の保護具
本推奨は、当社発行の安全データシート,に記載されている製品およびその指定の使用法のみに
適用される。溶解、他の物質との混合、およびEN374に記載の逸脱条件での使用については、
CE認証手袋のサプライヤに問い合わせのこと(例. KCL GmbH, D-36124 Eichenzell, Internet:
www.kcl.de)
フルコンタクト
材質: ブチルゴム
最小厚: 0.7 mm
破過時間: 480 min
試験物質:Butoject® (KCL 898)
本推奨は、当社発行の安全データシート,に記載されている製品およびその指定の使用法のみに
適用される。溶解、他の物質との混合、およびEN374に記載の逸脱条件での使用については、
CE認証手袋のサプライヤに問い合わせのこと(例. KCL GmbH, D-36124 Eichenzell, Internet:
www.kcl.de)
飛沫への接触
材質: クロロプレン
最小厚: 0.65 mm
破過時間: 120 min
試験物質:KCL 720 Camapren®
身体の保護
保護衣
呼吸用保護具
気化ガス/エアロゾル発生時に必要 次の規格に準拠しているフィルター式呼吸器保護具を推奨し
ます。DIN EN 143、DIN 14387および使用済み呼吸器保護システムに関連する他の付属規格。
環境暴露の制御
物質が排水施設に流れ込まないようにする。

9. 物理的及び化学的性質

物理的状態

形状
固体(単斜晶系プリズム)又は液体
無色
臭い
情報なし
臭いのしきい(閾)値
情報なし
pH
情報なし

融点・凝固点

19.5 ℃(ICSC (2005)、Merck (2013)) 19.6 ℃(SAX'S (2000)、SRC) 23 ℃(混触危険ハンドブック (1997))

沸点、初留点及び沸騰範囲

243.5 ℃(分解)(Merck (2013)、SAX'S (2000)、SRC) 241~242 ℃(混触危険ハンドブック (1997))

引火点

88 ℃(ICSC (2005)、混触危険ハンドブック (1997))

蒸発速度(酢酸ブチル=1)

情報なし

燃焼性(固体、気体)

情報なし

燃焼又は爆発範囲

情報なし

蒸気圧

10 Pa(20 ℃)(ICSC (2005)) 0.026 mmHg(25 ℃、実測値)(SRC)

蒸気密度

3.7(ICSC (2005)、SAX'S (2000))

比重(相対密度)

1.0978(20℃/4℃)(Merck (2013)、SAX'S (2000)、混触危険ハンドブック (1997)) 1.0986(20℃/4℃)(HODOC (1989)) 1.1(ICSC (2005))

溶解度

水: 127000 mg/L(25 ℃、実測値)(SRC) 水: 1.45 g/100mL(25 ℃)(ICSC (2005)) その他の情報: アルコール、エーテル、クロロホルム、ベンゼンと混和。石油エーテルに難溶、希釈酸に可溶。(Merck (2013))

n-オクタノール/水分配係数

log Kow = 1.25(実測値)(SRC、ICSC (2005))

自然発火温度

174 ℃(ICSC (2005)、混触危険ハンドブック (1997))

分解温度

243.5 ℃(Merck (2013)、SAX'S (2000))

粘度(粘性率)

情報なし

10. 安定性及び反応性

10.1 反応性

高熱で空気と反応して爆発性混合物を生じる
引火点より下のおよそ15ケルビンからの範囲は危険とみなされている。

10.2 化学的安定性

標準的な大気条件(室温)で化学的に安定。

10.3 危険有害反応可能性

次により発熱反応を生じる
強酸化剤
硫化物
金属酸化物
次との反応で爆発のおそれ
金属酸化物
ハロゲン化炭化水素
有機ハロゲン化合物
フッ化ペリクロリル
表面活性物質

10.4 避けるべき条件

強力な熱

10.5 混触危険物質

データなし

10.6 危険有害な分解生成物

火災の場合:項目5を参照

11. 有害性情報

急性毒性

経口
【分類根拠】 (1)より、区分3とした。
【根拠データ】 (1)ラットのLD50値:188 mg/kg(ACGIH(7th, 2001)、PATTY(6th, 2012)、NICNAS IMAP(Accessed Jun. 2018)、厚労省初期リスク評価書(2013))
経皮
【分類根拠】 (1)より、区分2とした。
【根拠データ】 (1)ウサギのLD50値:90 mg/kg(PATTY(6th, 2012)、厚労省初期リスク評価書(2013))
吸入:ガス
【分類根拠】 GHSの定義における液体である。
吸入:蒸気
【分類根拠】 データ不足のため分類できない。
吸入:粉じん及びミスト
【分類根拠】 データ不足のため分類できない。なお、(1)、(2)は飽和蒸気圧(98.7 ppm)を超えるためミスト状態と考えられるが、いずれもばく露時間の記載がないため分類に利用できない。
【参考データ等】 (1)ラットのLC50値:2.745 mg/L(610 ppm)(CICAD 19(2000)) (2)マウスのLC50値:2.093 mg/L(465 ppm)(CICAD 19(2000))

皮膚腐食性及び皮膚刺激性

【分類根拠】 (1)~(4)より、多くの所見は刺激性を示しており、区分2とした。
【根拠データ】 (1)フェニルヒドラジン塩酸塩粉末に偶発的にばく露した労働者の接触部位(腕)において、表面紅斑と水泡性の皮膚隆起が見られたとの報告がある(CICAD 19(2000)、NICNAS IMAP(Accessed Jun. 2018))。 (2)フェニルヒドラジン塩酸塩粉末に偶発的にばく露した労働者の接触部位(手袋や靴を介しての手や足)において、複数の火傷や小さな水疱が見られたとの報告がある(CICAD 19(2000)、NICNAS IMAP(Accessed Jun. 2018))。 (3)ヒトへの刺激性が複数報告されているとの情報がある(DFGOT vol.11(1995))。 (4)ウサギ、ラット、モルモットを用いた動物試験データにおいて、高い頻度で皮膚刺激(紅斑)を生じており、一部に壊死と脱落(sloughing)が観察されたとの報告がある(Fundam Appl Toxicol. 1987, 8(4), 583-94)。
【参考データ等】 (5)厚生労働省は、本物質に対して刺激性/腐食性があると結論づけている(厚労省初期リスク評価書(2013))。 (6)EU CLPでは本物質をSkin Irrit. 2に分類している。

眼に対する重篤な損傷性又は眼刺激性

【分類根拠】 (1)、(2)より、区分2とした。なお、細区分可能な情報は得られていないため、旧分類から区分を変更した。
【根拠データ】 (1)ウサギを用いた眼刺激性試験で本物質を適用したところ、重度の化膿性結膜炎が認められたとの報告がある(CICAD 19(2000))。 (2)フェニルヒドラジン及び特にその塩酸塩は眼刺激性を示すとの情報がある(DFGOT vol.11(1995))。
【参考データ等】 (3)厚生労働省は本物質の眼に対する重篤な損傷性/刺激性について、「なし」と結論している(厚労省初期リスク評価書(2013))。 (4)EU CLPでは本物質をEye Irrit. 2に分類している。

呼吸器感作性

【分類根拠】 データ不足のため分類できない。なお、呼吸器感作性を示唆する情報(1)もあるが、詳細不明のため分類判断には用いなかった。
【参考データ等】 (1)本物質を使用中の部屋に入った途端に呼吸器誘発によるアレルギー症状の再発がみられたとの報告がある(DFGOT vol. 11(1995))。

皮膚感作性

【分類根拠】 (1)~(5)より、区分1とした。
【根拠データ】 (1)本物質の皮膚感作性は、化学工業の労働者、実験技師、学生、化学者に対する臨床症状と疾患の経過によって実証されているとの報告がある(DFGOT vol.11(1995))。 (2)被験者(1名)の腕にフェニルヒドラジン結晶を適用するパッチテストを実施したところ、適用部位において18時間後に顕著な紅斑と浮腫が発生し、30時間後に水疱が形成され、54時間後には痂皮が形成されたとの報告がある(CICAD 19(2000))。 (3)フェニルヒドラジン及びその塩の固体又は水性溶液への皮膚適用後に、過敏症の反応がみられたとの報告がある(CICAD 19(2000))。 (4)既知の皮膚感作物質であるヒドラジンに既に感作されている被験者は、本物質を含むヒドラジン誘導体にも感作される、いわゆる交差感作に係る報告がある(CICAD 19(2000))。 (5)モルモットを用いた皮膚感作性試験では、7/8匹に感作を生じさせ、2/7匹は中~強程度の反応、5/7匹は弱~中等度の反応がみられたとの報告がある(DFGOT vol. 11(1995)、Br J Ind Med. 1967, 24(3), 189-202)。
【参考データ等】 (6)厚生労働省は本物質を皮膚感作性ありと結論している(厚労省初期リスク評価書(2013))。 (7)EU CLPでは本物質をSkin Sens. 1に分類している。

生殖細胞変異原性

【分類根拠】 (1)、(2)より、区分2とした。
【根拠データ】 (1)In vivoでは、マウス骨髄を用いた染色体異常試験及び小核試験で陽性、マウス末梢血赤血球を用いた小核試験で陽性、マウスの肝臓及び肺のアルカリ溶出試験で陽性、ラット肝臓のDNA付加体試験で陽性の報告がある(ACGIH(7th, 2001)、PATTY(6th, 2012)、DFGOT vol. 11(1998)、CICAD 19(2000)、厚労省初期リスク評価書(2013)、NICNAS IMAP(Accessed Jun. 2018))。 (2)In vitroでは、細菌の復帰突然変異試験、哺乳類培養細胞を用いた染色体異常試験、同小核試験、同遺伝子突然変異試験、げっ歯類の初代肝細胞を用いた不定期DNA合成試験で陽性の報告がある(ACGIH(7th, 2001)、PATTY(6th, 2012)、DFGOT vol. 11(1998)、CICAD 19(2000)、厚労省初期リスク評価書(2013))
【参考データ等】 (3)本物質は国による変異原性試験(細菌を用いた復帰突然変異試験、哺乳類培養細胞を用いた染色体異常試験)の結果、強い変異原性が認められ(安衛法既存化学物質変異原性試験結果(Accessed Jun. 2018))、「変異原性が認められた化学物質による健康障害を防止するための指針」の対象物質に指定されている(厚労省 職場のあんぜんサイト(Accessed Jun. 2018))。

発がん性

【分類根拠】 発がん性に関して、利用可能なヒトを対象とした報告はない。 (1)、(2)より本物質の発がん性の証拠は動物種1種に限られているが、複数の試験で悪性腫瘍を含む腫瘍性病変が認められ、かつ1試験で雌雄に影響が認められていること、及びEUの分類結果も踏まえて、区分1Bが妥当と判断した。なお、厚生労働省も本物質は「ヒトに対しおそらく発がん性がある」と結論している(厚労省初期リスク評価書(2013))。
【根拠データ】 (1)マウスに1 mg/匹/day(50 mg/kg/day相当)を42週間経口投与後に肺に悪性腫瘍及び総腫瘍の発生頻度増加がみられた(CICAD 19(2000)、ACGIH(7th, 2001)、DFGOT vol. 11(1989)、PATTY(6th, 2012)、厚労省初期リスク評価書(2013))。 (2)マウスに本物質塩酸塩を100 ppmの濃度で生涯飲水投与した試験で、雌雄ともに血管腫瘍(血管腫、血管肉腫)の発生頻度増加がみられた(ACGIH(7th, 2001)、DFGOT vol. 11(1989)、PATTY(6th, 2012)、厚労省初期リスク評価書(2013))。 (3)国内外の分類機関による既存分類では、ACGIH がA3(ACGIH(7th, 2001))、EU CLPではCarc. 1Bに分類している。
【参考データ等】 (4)マウスに最初5週間は0.5 mg、その後0.25 mgで全体では40週間経口投与(5日/週)した試験では、有意な腫瘍性影響はみられていない。本試験では顕著な貧血が生じたため、高用量投与で試験を実施できなかった(ACGIH(7th, 2001)、PATTY(6th, 2012)、DFGOTvol.11(1995))。

生殖毒性

【分類根拠】 データ不足のため分類できない。
【参考データ等】 (1)妊娠17~19日のラットを用いた腹腔内投与による試験では、7.5 mg/kg/dayの投与により胎児の死亡率が増加したが、親動物への影響は不明であった(NICNAS IMAP(Accessed Jun. 2018))。 (2)妊娠18~19日のラットを用いた腹腔内投与による試験では、15 mg/kg/dayの投与により胎児の死亡率が増加したが、親動物への影響は不明であった(NICNAS IMAP(Accessed Jun. 2018))。

特定標的臓器毒性(単回ばく露)

【分類根拠】 (1)、(2)より、区分1(血液系)とした。(4)より、単回ばく露ではないが、イヌの急性影響から想定される標的臓器毒性のうち、肝臓、腎臓、脾臓への影響は溶血性貧血による二次的影響と考えられる。また、精巣への影響は重篤な毒性に起因した全身状態の悪化を反映した非特異的な所見の可能性が考えられ、いずれも標的臓器としなかった。
【根拠データ】 (1)本物質のヒトにおける急性中毒症の主な影響はメトヘモグロビン血症である(DFGOT vol. 11(1998))。 (2)ヒトで液化フェニルヒドラジンに経皮ばく露後に皮膚を洗浄したにも関わらず、赤血球破壊による溶血性黄疸など全身症状がみられたとの症例報告がある(厚労省初期リスク評価書(2013))。
【参考データ等】 (3)動物種、用量は不明であるが、本物質の急性影響は神経毒性、チアノーゼ、低体温、血尿、嘔吐、痙攣、肝臓及び腎臓の変性様変化であるとの記述がある(ACGIH(7th, 2001))。 (4)イヌに20~40 mg/kgを2日間経口投与した結果、溶血性貧血、赤血球中にハインツ小体、血尿、メトヘモグロビン血症、脾腫、肝肥大、曲尿細管におけるヘモグロビンの充満を伴う腎肥大、さらに精子形成低下が認められたとの報告がある(ACGIH(7th, 2001)、PATTY(6th, 2012)、厚労省初期リスク評価書(2013))。

特定標的臓器毒性(反復ばく露)

【分類根拠】 (1)~(3)より、区分1(血液系)とした。なお、(4)、(5)はばく露時間やばく露期間が不明のため、分類に利用できない。
【根拠データ】 (1)経皮及び吸入経路を介した職業ばく露により、溶血性貧血がみられたとの複数の事例がある(ACGIH(7th, 2001)、PATTY(6th, 2012))。 (2)ボランティアに本物質の塩酸塩を30 mg/day(0.4 mg/kg)の用量で8日間経口投与後に輸血赤血球の溶血が0~10%のレベルで生じたとの報告がある(DFGOT vol. 11(1998))。 (3)赤血球増多症の治療に本物質を100 mg/dayの用量で経口投与中に黄疸、貧血及び浮腫が副作用としてみられたとの報告がある(DFGOT vol. 11(1998))。
【参考データ等】 (4)ラットに1.5 mg/m3の濃度で3~4ヵ月間吸入ばく露後に血液パラメータの軽度な変化を認めたとの報告がある(DFGOT vol. 11(1998))。 (5)ラットに21 mg/m3を6ヵ月間吸入ばく露後に血液毒性を認めたとの報告、及び210 mg/m3の短期ばく露(ばく露期間不明)では死亡例が生じ、血液毒性に加えて、肝臓、脾臓、及び脳に変性様変化を認めたとの報告がある(DFGOT vol. 11(1998))。

吸引性呼吸器有害性

【分類根拠】 データ不足のため分類できない。

12. 環境影響情報

12.1 生態毒性

魚毒性
LC50 - Danio rerio (ゼブラフィッシュ) - 0.16 - 0.25 mg/l - 96 h
(OECD 試験ガイドライン 203)
ミジンコ等の水生無脊
EC50 - Daphnia magna (オオミジンコ) - 2 - 5 mg/l - 48 h
椎動物に対する毒性
備考: (外部MSDS)
微生物毒性
EC50 - Photobacterium phosphoreum (フォトバクテリウム‐ホスホレウム) -
175.2 mg/l - 1 h
備考: (IUCLID)

12.2 残留性・分解性

生分解性
結果: 97 % - 易分解性。
(OECD 試験ガイドライン 301E)

12.3 生体蓄積性

データなし

12.4 土壌中の移動性

データなし

12.5 PBT および vPvB の評価結果

化学物質安全性評価が必要ではない/行っていないため、PBT/vPvB評価データはない。

12.6 内分泌かく乱性

データなし

12.7 他の有害影響

データなし

13. 廃棄上の注意

13.1 廃棄物処理方法

製品
内容物及び容器は、関連法規及び各自治体の条例等の規制に従い、産業廃棄物として適切に処理すること。

14. 輸送上の注意

14.1 国連番号

ADR/RID (陸上規制): 2572    IMDG (海上規制): 2572    IATA-DGR (航空規制): 2572

14.2 国連輸送名

IATA-DGR (航空規制): Phenylhydrazine
IMDG (海上規制): PHENYLHYDRAZINE
ADR/RID (陸上規制): PHENYLHYDRAZINE

14.3 輸送危険有害性クラス

ADR/RID (陸上規制): 6.1    IMDG (海上規制): 6.1    IATA-DGR (航空規制): 6.1

14.4 容器等級

ADR/RID (陸上規制): II IMDG (海上規制): II IATA-DGR (航空規制): II

14.5 環境危険有害性

該当
ADR/RID: 該当 IMDG 海洋汚染物質(該当・非該当): IATA-DGR (航空規制): 非該当

14.6 特別の安全対策

なし

14.7 混触危険物質

15. 適用法令

労働安全衛生法

名称等を表示し、又は通知すべき危険物及び有害物(法第57条、施行令第17条別表第3第1号並びに施行令第18条及び第18条の2別表第9) 強い変異原性が認められた化学物質

化学物質排出把握管理促進法 (PRTR法)

第一種指定化学物質(法第2条第2項、施行令第1条別表第1)

消防法

第4類引火性液体、第三石油類非水溶性液体(法第2条第7項危険物別表第1)

大気汚染防止法

有害大気汚染物質(中央環境審議会第9次答申)

16. その他の情報

略語と頭字語

ADR: 道路による危険物の国際輸送に関する欧州協定
CAS: ケミカルアブストラクトサービス
EC50: 有効濃度 50%
IATA:国際航空運送協会
IMDG: 国際海上危険物
LC50: 致死濃度 50%
LD50: 致死量 50%
RID: 鉄道による危険物の国際運送に関する規則
STEL: 短期暴露限度
TWA: 時間加重平均

参考文献

【1】労働安全衛生法 ウェブサイト https://www.mhlw.go.jp
【2】化学物質審査規制法(化審法)https://www.env.go.jp
【3】化学物質排出把握管理促進法(PRTR法) https://www.chemicoco.env.go.jp
【4】NITE化学物質総合情報提供システム (NITE-CHRIP)https://www.nite.go.jp/
【5】カメオケミカルズ公式サイト http://cameochemicals.noaa.gov/search/simple
【6】ChemIDplus、ウェブサイト http://chem.sis.nlm.nih.gov/chemidplus/chemidlite.jsp
【7】ECHA - 欧州化学物質庁、ウェブサイト https://echa.europa.eu/
【8】eChemPortal - OECD 化学物質情報グローバルポータル、ウェブサイトhttp://www.echemportal.org/echemportal/index?pageID=0&request_locale=en
【9】ERG - 米国運輸省による緊急対応ガイドブック、ウェブサイトhttp://www.phmsa.dot.gov/hazmat/library/erg
【10】有害物質に関するドイツ GESTIS データベース、ウェブサイトhttp://www.dguv.de/ifa/gestis/gestis-stoffdatenbank/index-2.jsp
【11】HSDB - 有害物質データバンク、ウェブサイト https://toxnet.nlm.nih.gov/newtoxnet/hsdb.htm
【12】IARC - 国際がん研究機関、ウェブサイト http://www.iarc.fr/
【13】IPCS - The International Chemical Safety Cards (ICSC)、ウェブサイトhttp://www.ilo.org/dyn/icsc/showcard.home
【14】Sigma-Aldrich、ウェブサイト https://www.sigmaaldrich.com/
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