急性毒性
経口
【分類根拠】 (1)~(7) より、区分に該当しない。
【根拠データ】 (1) ラットのLD50: > 2,000 mg/kg (AICIS IMAP (2014)) (2) ラットのLD50: 4,000~6,000 mg/kg (SIAP (2004)) (3) ラットのLD50: 5.0 mL/kg (4,430 mg/kg) (EURAR (2005)) (4) ラットのLD50: 4,435 mg/kg (AICIS IMAP (2014)) (5) ラットのLD50: 6.5 mL/kg (約5,770 mg/kg) (EURAR (2005)) (6) ラットのLD50: 5,750 mg/kg (GESTIS (Access on April 2020)) (7) ラットのLD50: 6,500 μL/kg (5,739.5 mg/kg) (HSDB (Access on April 2020))
経皮
【分類根拠】 (1)~(6) より、区分に該当しない。
【根拠データ】 (1) ラットのLD50: > 2,000 mg/kg (AICIS IMAP (2014)) (2) ウサギのLD50: > 2,000 mg/kg (AICIS IMAP (2014)) (3) ウサギのLD50: > 10,000 mg/kg (SIAP (2004)) (4) ウサギのLD50: 16 mL/kg (約14,180 mg/kg) (EURAR (2005)) (5) ウサギのLD50: 7,500 mg/kg (GESTIS (Access on April 2020)) (6) ウサギのLD50: 8,480 mg/kg (HSDB (Access on April 2020))
吸入: ガス
【分類根拠】 GHSの定義における液体であり、区分に該当しないとした。
吸入: 蒸気
【分類根拠】 データ不足のため分類できない。
吸入: 粉じん及びミスト
【分類根拠】 (1) より、区分が特定できないため、分類できない。なお、旧分類の情報源は現在確認できないため、根拠としなかった。ばく露濃度が飽和蒸気圧濃度 (1.765 mg/L) あるため、ミストが混在するものとしてmg/Lを単位とする基準値を適用した。
【根拠データ】 (1) ラットの飽和蒸気圧濃度での吸入試験 (8時間): 飽和蒸気濃度で死亡例なし (EURAR (2005)、AICIS IMAP (2014)、SIAP (2004))。 (2) 本物質の蒸気圧: 0.178 mmHg (25℃) (HSDB (Access on April 2020)) (飽和蒸気圧濃度換算値: 1.765 mg/L)
【参考データ等】 (3) マウスのLC50 (0.5時間): > 7.713 mg/L (HSDB (Access on April 2020))
皮膚腐食性及び皮膚刺激性
【分類根拠】 (1)~(5) より、区分2とした。
【根拠データ】 (1) OECD及びEUのテストガイドライン類似の方法によるウサギを用いた皮膚刺激性試験 (4時間閉塞適用) において、全ての動物が強度の紅斑及び浮腫を示し、適用24及び72時間後の紅斑及び浮腫の平均スコアはそれぞれ3.2/2.7及び2.7/1.2であった。また、1/6例では適用3日後にスコア4を呈し、皮膚表層の化学火傷がみられた (EURAR (2005)、AICIS IMAP (2014)、GESTIS (Access on April 2020))。 (2) US Federal Register (1964) ガイドラインに従いウサギの正常皮膚及び損傷皮膚に本物質を24時間閉塞適用した皮膚刺激性試験において、全ての動物が強度の紅斑及び浮腫を示し、24時間後及び72時間後の正常皮膚における紅斑及び浮腫の平均スコアはそれぞれ1.75/2及び3.25/3.25であった。なお、壊死性の変化は正常皮膚及び損傷皮膚のいずれにもみられなかった (EURAR (2005))。 (3) 人工皮膚モデル (EpiDerm) を用いたin vitro皮膚腐食性試験において3min、60minばく露後、生存率はそれぞれ99%、104%であり、腐食性物質ではないと判定されている (EURAR (2005)、REACH登録情報 (Access on June 2020))。 (4) 本物質は動物の皮膚に対して腐食性に近い刺激性を有するが、眼に対する刺激性は若干弱い (SIAP (2004))。 (5) 本物質は皮膚と眼に対し強度の刺激性を有する (HSDB (Access on April 2020))。
眼に対する重篤な損傷性又は眼刺激性
【分類根拠】 (1)~(4) より、区分に該当しないとした。新しいデータ (1)~(4) が得られたことから分類結果を変更した。
【根拠データ】 (1) OECD TG 405に準拠したウサギを用いた眼刺激性試験において、軽度の刺激性を示し、角膜混濁、虹彩、結膜発赤、結膜浮腫の適用24時間後から72時間後の平均スコアはそれぞれ0.1、0.1、0.2、0.1であり、全ての所見は3日以内に消失した (EURAR (2005)、AICIS IMAP (2014)、GESTIS (Access on April 2020))。 (2) US Federal Register (1964) ガイドラインに従いウサギを用いた眼刺激性試験 において、中等度の結膜刺激性がみられたが角膜及び虹彩への傷害はみられなかった (EURAR (2005))。 (3) ウサギの眼に本物質 (0.1 mL) を適用した眼刺激性試験で軽度あるいは明らかな結膜充血及び一部に軽度の浮腫がみられた (EURAR (2005))。 (4) OECD TG 405に準拠したウサギを用いた眼刺激性試験で24/48/72hにおける角膜及び虹彩の平均スコアは2未満、結膜発赤及び結膜浮腫の平均スコアは1未満であり、全ての反応は72時間後には消失した (REACH登録情報 (Access on June 2020))。
【参考データ等】 (5) 本物質は皮膚と眼に対し強度の刺激性を有する (HSDB (Access on April 2020))。
呼吸器感作性
【分類根拠】 データ不足のため、分類できない。
皮膚感作性
【分類根拠】 (1)~(4) より、区分1Bとした。細区分可能なデータ (1) 及び (2) が得られたことから細区分を行った。
【根拠データ】 (1) モルモットを用いた皮膚感作性試験 (マキシマイゼーション法、皮内投与 1%) において陽性 (陽性率: 26~57%) と報告されている (MAK (DFG) vol.16 (2001))。 (2) TG 429に準拠したマウス局所リンパ節試験 (LLNA) 2試験において陽性と判定され、EC3は9.7%及び18.96%と報告されている (AICIS IMAP (2014)、REACH登録情報 (Access on June 2020))。 (3) 本物質はアクリル系接着剤に対する皮膚炎を示す7人のボランティア等に対するパッチテストで陽性であった (EURAR (2005)、MAK (DFG) vol.16 (2001)、AICIS IMAP (2014)、HSDB (Access on April 2020))。 (4) モルモットを用いた皮膚感作性試験 (FCA test及びPolak法) において陽性と報告されている (EURAR (2005)、MAK (DFG) vol.16 (2001)、AICIS IMAP (2014)。
【参考データ等】 (5) 本物質にばく露される可能性のある労働者約 900人に対する調査で本物質に対する感作性あるいはアレルギー反応はみられなかった (EURAR (2005))。
生殖細胞変異原性
【分類根拠】 (1)、(2) より、区分に該当しないとした。
【根拠データ】 (1) in vivoでは、マウス骨髄細胞を用いた染色体異常試験では試験方法に問題もあり曖昧な結果との報告がある (EURAR (2005))。 (2) in vitroでは、細菌の復帰突然変異試験で陰性、ヒトリンパ球及び哺乳類培養細胞の小核試験で陰性、哺乳類培養細胞の不定期DNA合成試験で陰性、姉妹染色分体交換試験で弱陽性、マウスリンフォーマ試験で弱陽性、染色体異常試験で曖昧な結果、HPRT遺伝子突然変異試験で陰性の報告がある (IARC 122 (2019)、EURAR (2005))。
発がん性
【分類根拠】 ヒトでの発がん性に関する情報はない。(4) の通りマウスの発がん性試験でみられた皮膚腫瘍は本物質の刺激性によるものとする評価もあるが、(1)、(2) より最新のIARCの分類結果に基づき区分2とした。
【根拠データ】 (1) 国内外の分類機関による既存分類では、IARCでグループ2B (IARC 122 (2019))、産衛学会で2B (産業衛生学会誌許容濃度の勧告 (2019年提案) に分類されている。 (2) 雄マウス (C3H/HeJ) に本物質を一生涯経皮適用した発がん性試験では、高用量の適用で、皮膚の扁平上皮乳頭腫及び扁平上皮乳頭腫又はがんの合計の発生率、皮膚の乳頭腫、角化扁平上皮がん、悪性黒色腫、及び皮膚の線維肉腫の発生率の有意な増加が認められた (IARC 122 (2019)、 EURAR (2005))。 (3) 雄マウス (NMRI) に本物質を2年間経皮適用した発がん性試験では、本物質投与に続いて既知プロモーター (12-O-tetradecanoylphorbol-13-acetate) 処置の有無に関わらず皮膚腫瘍の発生頻度の有意な増加はみられなかった (IARC 122 (2019)、 EURAR (2005))。
【参考データ等】 (4) EUのリスク評価書では、マウスを用いた経皮発がん性試験でみられた皮膚の腫瘍は本物質の強い刺激性によるものであり、一過性の刺激を伴う低濃度の経皮発がん性試験では腫瘍は観察されなかったこと、本物質の加水分解生成物であるアクリル酸及び2-エチルヘキサノールでは腫瘍が認められなかったことから、本試験は本物質を発がん性物質とみる十分な証拠にはならないとしている (EURAR (2005))。また、GESTISでもマウスを用いた経皮発がん性試験でみられた皮膚腫瘍の増加は局所刺激によりもので遺伝毒性によるものではないとしている (GESTIS (Access on April 2020))。
生殖毒性
【分類根拠】 (1) のデータのみであり、データ不足のため分類できないとした。
【根拠データ】 (1) 雌ラットの妊娠6~20日に吸入ばく露した発生毒性試験において、母動物毒性 (体重増加抑制、摂餌量減少) 用量においても胚/胎児に影響はみられていない (EURAR (2005)、AICIS IMAP (2014)、HSDB (Access on April 2020))。
特定標的臓器毒性 (単回ばく露)
【分類根拠】 本物質のヒトでの単回ばく露に関する報告はない。(1)~(3) より区分3 (麻酔作用、気道刺激性) とした。
【根拠データ】 (1) 本物質のラットの単回経口投与試験では1,810 mg/kg (区分2の範囲) 以上で立毛、2,803 mg/kg (区分2超の範囲) 以上でふらつきや腹臥位、4,444 mg/kg (区分2超の範囲) で下痢の症状がみられ、致死量以下で無関心や昏睡もみられた (EURAR (2005)、AICIS IMAP (2014)、REACH登録情報 (Access on June 2020))。 (2) 本物質のマウスの単回経口投与試験では5,000 mg/kg (区分2超の範囲) で自発運動量の減少、運動失調、腹式呼吸の症状がみられた (EURAR (2005)、REACH登録情報 (Access on June 2020))。 (3) 本物質のラットの単回吸入ばく露試験では、飽和蒸気 (濃度不明) で鼻や眼への刺激が示されたとの報告がある (EURAR (2005)、AICIS IMAP (2014)、REACH登録情報 (Access on June 2020))。
特定標的臓器毒性 (反復ばく露)
【分類根拠】 本物質のヒトでの反復ばく露に関する報告はない。(1) より、実験動物において区分2の用量で鼻腔への影響がみられたとの情報があったことから、区分2 (鼻腔) とした。
【根拠データ】 (1) 本物質のラットの90日間吸入暴露試験において、30 ppm (0.225 mg/L、区分2の範囲) 以上で嗜眠、眼瞼下垂、嗅上皮の限局性又はびまん性変性、100 ppm (0.750 mg/L、区分2の範囲) で鼻腔前部の嗅粘膜変性がみられた (EURAR (2005)、AICIS IMAP (2014))。
誤えん有害性*
【分類根拠】 データ不足のため分類できない。
* JIS Z7252の改訂により吸引性呼吸器有害性から項目名が変更となった。本有害性項目の内容に変更はない。