急性毒性
経口
【分類根拠】 データ不足のため分類できない。
経皮
【分類根拠】 データ不足のため分類できない。
吸入: ガス
【分類根拠】 GHSの定義における液体であり、ガイダンスでは分類対象外に相当し、区分に該当しない。
吸入: 蒸気
【分類根拠】 データ不足のため分類できない。
吸入: 粉じん及びミスト
【分類根拠】 データ不足のため分類できない。
皮膚腐食性及び皮膚刺激性
【分類根拠】 (1)~(3) より、区分1とした。
【根拠データ】 (1) 本物質の皮膚、気道、眼への接触は重度の刺激性、火傷、肺水腫を引き起こす可能性がある (ACGIH (7th, 2018))。 (2) 粘膜と皮膚に対して刺激性あるいは腐食性を有し,眼に対して重度の損傷の恐れがある (GESTIS (Access on July 2019))。 (3) クロムを含有する化合物にばく露された作業者において皮膚の潰瘍や刺激性皮膚炎が報告されている (IARC 49 (1990))。
【参考データ等】 (4) EU-CLP分類でSkin Corr. 1A (H314) に分類されている (EU CLP分類(Access on July 2019))。
眼に対する重篤な損傷性又は眼刺激性
【分類根拠】 (1)~(4) より、区分1とした。
【根拠データ】 (1) 本物質の皮膚、気道、眼への接触は重度の刺激性、火傷、肺水腫を引き起こす可能性がある (ACGIH (7th, 2018))。 (2) 空中に浮遊する六価クロム化合物にヒトが職業性ばく露された場合の影響には、気道や眼の刺激が含まれる。また、六価クロム化合物のばく露は、喘息を誘発する可能性もある (食品安全委員会 清涼飲料水評価書六価クロム (2018))。 (3) 粘膜と皮膚に対して刺激性あるいは腐食性を有し,眼に対して重度の損傷の恐れがある (GESTIS (Access on July 2019))。 (4) 皮膚腐食性 (区分1) に区分されている。
呼吸器感作性
【分類根拠】 (1)~(3) より区分1Aとした。
【根拠データ】 (1) 空中に浮遊する六価クロム化合物にヒトが職業性ばく露された場合の影響には気道や眼の刺激が含まれる。また、六価クロム化合物のばく露は、喘息を誘発する可能性もある (食品安全委員会 清涼飲料水評価書六価クロム (2018))。 (2) クロム化合物は皮膚及び呼吸器感作原として知られており、感作が成立すると3価及び6価いずれのクロム化合物でも惹起が成立する (ACGIH (7th, 2018))。 (3) クロム化合物から放出されるクロムは産衛学会によって気道第2群に指定されている (産衛学会感作性分類基準 (暫定) の提案理由書 (2010))。
皮膚感作性
【分類根拠】 (1)~(3) より区分1Aとした。
【根拠データ】 (1) クロム化合物から放出されるクロムはアレルギー性皮膚炎の原因となる (IARC 49 (1990))。 (2) クロム化合物は皮膚及び呼吸器感作原として知られており、感作が成立すると3価及び6価いずれのクロム化合物でも惹起が成立する (ACGIH (7th, 2018))。 (3) クロム化合物から放出されるクロムは産衛学会によって皮膚第1群に指定されている (産衛学会感作性分類基準 (暫定) の提案理由書 (2010))。
【参考データ等】 (4) EU-CLP分類でSkin Sens. 1 (H317) に分類されている (EU CLP分類 (Access on July 2019))。
生殖細胞変異原性
【分類根拠】 (1)、(2) より、本物質のin vivoデータはないが、in vitro試験での陽性の結果及び六価クロム化合物の結果より、区分1Bとした。
【根拠データ】 (1) in vivoでは、本物質の試験データはない。六価クロム化合物に関して、マウス及びラットに腹腔内投与した遺伝子突然変異試験、染色体異常試験、小核試験及びDNA損傷試験で陽性の結果、マウスに強制経口投与したDNA損傷試験で陽性、マウスに飲水投与した小核試験でほぼ陰性の結果が得られている (食品安全委員会清涼飲料水評価書 (2018))。 (2) in vitroでは、細菌の復帰突然変異試験で陽性の報告がある (IARC 49 (1990)、HSDB (Access on July 2019))。六価クロム化合物に関して、細菌を用いた復帰突然変異試験は陽性及び陰性であったが、哺乳類培養細胞を用いた染色体異常試験、不定期DNA 合成試験及び形質転換試験では陽性の結果が得られている (食品安全委員会清涼飲料水評価書 (2018))。
【参考データ等】 (3) 国内外の分類機関による既存分類では、EU CLPでMuta.1Bに分類されている (EU CLP分類 (Access on June 2019))。 (4) 本物質へのヒトのばく露が遺伝性障害につながる可能性があると結論付けるのに十分な証拠があると報告されている (GESTIS (Access on July 2019))。 (5) 六価クロム化合物は細菌で変異原性、哺乳類細胞で染色体異常を引き起こし、クロム酸塩の生産に従事する労働者のリンパ球における染色体異常の頻度の増加に関連することが報告されている (HSDB (Access on July 2019))。
発がん性
【分類根拠】 (1) の既存分類結果からガイダンスに従い区分1Aとした。
【根拠データ】 (1) 国内外の分類機関による既存分類では、六価クロム化合物として、IARCでグループ1 (IARC 100C (2012))、ACGIHでA1 (ACGIH (7th, 2018))、EUでCarc.1B (EU CLP分類 (Accecc on July 2019)) に分類されている。
生殖毒性
【分類根拠】 本物質に関する情報はないが、(1) より区分2とした。
【根拠データ】 (1) 日本産業衛生学会がクロム及びクロム化合物に対して生殖毒性物質第3群 (区分2相当) に分類している (産衛学会許容濃度の提案理由書 (2014))。
特定標的臓器毒性 (単回ばく露)
【分類根拠】 本物質のヒト及び実験動物での単回ばく露に関する報告はないが、(1)~(3) より区分1 (中枢神経系、呼吸器、心血管系、血液系、肝臓、腎臓) とした。消化管に関しては、局所刺激の影響と考えられることから標的臓器としなかった。
【根拠データ】 (1) 本物質は水と反応して容易に加水分解し、クロム酸 (CAS番号 7738-94-5) と塩酸 (CAS番号 7647-01-0) を生じる。蒸気の吸入により、気道で完全に加水分解してクロム酸及び塩酸を生じるとともに、塩素 (CAS番号 7782-50-5)、三塩化クロム (CAS番号 10025-73-7、三価クロム化合物) も生成する可能性がある (GESTIS (Access on July 2019)、ACGIH (7th, 2018))。クロム酸、塩酸、塩素はいずれもヒト又は実験動物で呼吸器への影響が報告されている。 (2) 本物質は皮膚、気道及び眼との接触で重度の刺激、熱傷を生じ、高濃度のばく露では肺水腫を生じる可能性があるとの記載 (ACGIH (7th, 2018)) 及び本物質の吸入により気道に重度の刺激と腐食性を生じることが予想され、喉頭と肺の水腫の危険が考えられるとの記載 (GESTIS (Access on July 2019)) がある。 (3) 事故による本物質の経口摂取の場合には、クロム酸と同様に、消化管、腎臓、中枢神経系、血液系、肝臓及び心臓への影響が生じる可能性があるとの記載がある (GESTIS (Access on July 2019))。
【参考データ等】 (4) クロム酸 (H2CrO4) は、無水クロム酸 (CrO3、三酸化クロム、CAS番号 1333-82-0) の水溶液である。無水クロム酸は2014年度GHS分類において、区分1 (中枢神経系、呼吸器、心血管系、血液系、肝臓、腎臓) と分類されている。
特定標的臓器毒性 (反復ばく露)
【分類根拠】 (1)、(2) より、本物質は反応性が高く、本物質の毒性が他の六価クロム化合物の毒性と類似するかどうかは明らかでないが、少なくとも加水分解により生成するクロム酸等による影響が生じると考えられる。(3)、(4) のクロム酸の情報に基づき、ヒトの吸入ばく露により呼吸器への影響が生じると考えられることから、区分1 (呼吸器) とした。
【根拠データ】 (1) 本物質は水と反応し容易に加水分解し、クロム酸と塩酸を生じる。蒸気の吸入により、気道で完全に加水分解してクロム酸 (CAS番号 7738-94-5) と塩酸 (CAS番号 7647-01-0) を生じるとともに、塩素 (CAS番号 7782-50-5)、三塩化クロム (CAS番号 10025-73-7、三価クロム化合物) も生成する可能性がある (GESTIS (Access on July 2019))。 (2) 酸塩化物の反応性は高く、クロム (III) 化合物の生成程度は推定できないことから、より反応性の低い六価クロム化合物と同様の代謝が起こるとは限らない (GESTIS (Access on July 2019))。 (3) クロム酸について、クロムめっき工場でクロム酸にばく露された作業者43名の呼吸器症状、肺機能、鼻腔粘膜を調べた研究において、鼻腔粘膜の潰瘍、鼻中隔穿孔等がみられたとの情報がある (CICAD 78 (2013))。 (4) クロム酸について、ラットに無水クロム酸ミストを 8ヵ月間吸入ばく露した結果、3.5 mg/m3以上で呼吸器に腐食性影響がみられた (EU-RAR (2005)) との報告、あるいはマウスに無水クロム酸を約 3.9 mg/m3の濃度で12ヵ月間にわたり間欠的にばく露した結果、肺気腫、並びに鼻中隔穿孔を生じた (CICAD 78 (2013)) との報告があり、ヒトでの呼吸器障害を支持する知見が得られている。
【参考データ等】 (5) 無水クロム酸 (CAS番号 1333-82-0) は2014年度GHS分類事業において区分1 (呼吸器) に分類されている。
誤えん有害性*
【分類根拠】 データ不足のため分類できない。
* JIS Z7252の改訂により吸引性呼吸器有害性から項目名が変更となった。