急性毒性
経口
【分類根拠】 (1)より、区分4とした。
【根拠データ】 (1)ラットのLD50:1,600 mg/kg(ACGIH(1997)、PATTY(6th, 2012))。
経皮
【分類根拠】 (1)、(2)より、区分外(国連分類基準の区分5又は区分外に相当)とした。
【根拠データ】 (1)ラットのLD50:>2,000 mg/kg(OECD TG423)(NICNAS IMAP(2018)、REACH登録情報(Accessed Oct. 2018)) (2)ウサギのLD50:>2,000 mg/kg(NICNAS IMAP(2018)、REACH登録情報(Accessed Oct. 2018))
吸入:ガス
【分類根拠】 GHSの定義における固体である。
吸入:蒸気
【分類根拠】 データ不足のため分類できない。
吸入:粉じん及びミスト
【分類根拠】 データ不足のため分類できない。
皮膚腐食性及び皮膚刺激性
【分類根拠】 ガイドライン及びGLP準拠のデータである(1)において、刺激性スコア及び所見(slightly)に基づき区分外(国連分類基準の区分3)とした。なお、(2)(4)は試験詳細が不明、(3)はそれに加えて試験期間が不適切であり、採用しなかった。新たな情報源を採用することで区分を変更した。
【根拠データ】 (1)ウサギ(n=3)を用いた皮膚刺激性試験(OECD Guideline 404、GLP準拠、半閉塞、4時間)においてslightly irritating(紅斑スコア:1.78、浮腫スコア:1.44)との報告がある(REACH登録情報(Accessed Oct. 2018)、NICNAS IMAP(Accessed Oct. 2018))。
【参考データ等】 (2)ウサギを用いた試験において、本物質10%溶液(日焼け止めローション)を皮膚に塗布すると紅斑と瘢痕を生じたとの報告がある(PATTY(6th, 2012))。 (3)ウサギを用いた試験において、本物質原液の1日以上の適用で重度のやけどや壊死を引き起こしたとの報告がある(PATTY(6th, 2012))。 (4)本物質は皮膚刺激性を有するとの記述がある(HSDB(2015))。
眼に対する重篤な損傷性又は眼刺激性
【分類根拠】 (1)より、区分2Bとした。なお、新たな情報源を採用することで区分を変更した。
【根拠データ】 (1)ウサギ(n=3/sex)を用いた眼刺激性試験において軽度から中程度の結膜刺激(6/6)、角膜混濁(1/6)、角膜潰瘍(5/6)、虹彩変化(2/6)が発生したが、7日間で回復したとの報告がある(NICNAS IMAP(Accessed Oct. 2018))。
呼吸器感作性
【分類根拠】 データ不足のため分類できない。
皮膚感作性
【分類根拠】 (1)、(2)より、区分1とした。なお、新たな情報源を採用することで区分を変更した。
【根拠データ】 (1)モルモット(n=10)を用いた感作性試験(OECD TG406)において本物質6.2%溶液(ピーナッツ油)を皮内投与したところ、50%が反応したとの報告がある(NICNAS IMAP(Accessed Oct. 2018)、REACH登録情報(Accessed Oct. 2018)、J. Am. Col. Toxicol., 4, 31-63.(1985))。 (2)モルモット(n=8)を用いた感作性試験(Freund's complete adjuvant test)において本物質3.9%水溶液を皮内投与したところ、50%が反応したとの報告がある(NICNAS IMAP(Accessed Oct. 2018)、REACH登録情報(Accessed Oct. 2018)、J. Am. Col. Toxicol., 4, 31-63.(1985))。
【参考データ等】 (3)本物質を含有する複数のネイル製のヒト連続パッチテスト(HRIPT、n=50-51)において感作性は見られなかったとの報告があるが、本物質の含有量は不明である(NICNAS IMAP(Accessed Oct. 2018)、Cosmetic Ingredient Review(CIR)Expert Panel Repot(2015)) (4)EU CLPではSkin Sens.1に分類している。
生殖細胞変異原性
【分類根拠】 データ不足のため分類できない。
【根拠データ】 (1)In vivoでは、ラットに最大40 mg/kg/dayで6ヵ月間経皮適用後に遺伝毒性はみられなかったとの記述があるが、詳細不明である(Cosmetic Ingredient Review(CIR)Expert Panel Repot(2015)) (2)In vitroでは、細菌を用いた復帰突然変異試験で陰性の報告がある(J. Am Coll. Toxicol., 4(1985))。
発がん性
【分類根拠】 発がん性に関して、利用可能なヒトを対象とした報告はない。 (1)でラット経口投与で前胃に高率に悪性腫瘍発生が認められ、低用量でも前腫瘍性病変がみられた。1種のみの発がん性の証拠であり、(2)の状況も考慮し区分2とした。
【根拠データ】 (1)ラット(n= 26(雄)、20(雌))に本物質を20,000 ppmで2年間混餌投与した結果、前胃に乳頭腫(雄50%、雌23%)、又は扁平上皮がん(雄77%、雌20%)が認められ、用量を4,000 ppmに下げて2年間混餌投与した場合には、前胃に乳頭状ないし結節状の過形成はみられたが、腫瘍の発生増加は認められなかった(NICNAS IMAP(Accessed Oct. 2018)、Cosmetic Ingredient Review(CIR)Expert Panel Repot(2015))。 (2)国内外の分類機関による既存分類はない。
【参考データ等】 (3)中期発がん性試験としては、ラットにイニシエーター(N-ニトロソジエチルアミン等)処置後に本物質を4,000 ppmで24~26週間混餌投与した結果、前胃乳頭腫の頻度増加を認めたとの報告がある(CIR Expert Panel(2014))。 (4)ラットにイニシエーター(MNNG:N-methyl-N'-nitro-N-nitrosoguanidine)処置後に本物質を最大20,000 ppmで51週間混餌投与したが、本物質併用群ではイニシエーター単独投与群に比べて、前胃腫瘍の発生頻度の上昇はみられなかったとの報告がある(CIR Expert Panel(2014))。
生殖毒性
【分類根拠】 (1)の本物質製品を用いた生殖毒性データから、母動物に皮膚症状がみられる用量で、母動物に分娩困難、児動物に生後の死亡率増加、成長抑制などがみられた。母動物には皮膚症状と啼鳴以外に全身毒性の記述がない。よって、母動物の一般毒性影響が明らかではない状況で、母動物に分娩障害、出生児の生存率及び成長への悪影響がみられたことから、区分2とした。
【根拠データ】 (1)ラットの妊娠期間を通して、本物質2%含有製品を本物質換算用量として12~120 mg/kg/dayで経皮投与した試験で、F0の全投与群に皮膚刺激症状(皮膚の発赤、肥厚、痂皮形成)、40 mg/kg/day以上で啼鳴、交配後25日までの非分娩例が40及び120 mg/kg/day群の雌各6例に、120 mg/kg/dayで体重増加抑制、雌4例に哺育5日までに全児死亡が認められた。F1世代では120 mg/kg/day群の母動物から生まれた出生児の群において、死亡率の増加、体重減少、症状(活動性低下、蒼白、接触時の冷感)が認められたが、母動物に毒性が顕著に発現する用量での所見であった(CIR Expert Panel(2014))。
【参考データ等】 (2)本物質2%含有製品を妊娠ラット又は妊娠ウサギに経皮投与した発生毒性試験において、ラットで80 mg/kg/dayまで、ウサギで40 mg/kg/dayまでの用量では奇形発生はみられないとの報告がある(CIR Expert Panel(2014))。
特定標的臓器毒性(単回ばく露)
【分類根拠】 データ不足のため分類できない。
特定標的臓器毒性(反復ばく露)
【分類根拠】 (1)、(2)のデータから、経口ばく露では実験動物の経口投与試験から区分に該当する影響はなく、(3)のデータから経皮ばく露では実験動物に対し局所影響のみで全身性影響はみられておらず、利用可能な情報からは分類できない。
【根拠データ】 (1)ラットを用いた5~7週間の混餌投与試験(200~50,000 ppm)で、1,000 ppm以上の雄、5,000 ppm以上の雌で体重増加抑制がみられたが、餌中の本物質に対する嗜好性低下による影響と考えられており、50,000 ppm投与群まで臓器に組織変化はみられなかった(J. Am. Col. Toxicol., 4, 31-63.(1985))。 (2)ウサギを用いた5~9週間の混餌投与試験(最大100,000 ppm)で、最高用量で体重低下がみられたが、臓器に組織変化はみられなかった(J. Am. Col. Toxicol., 4, 31-63.(1985))。 (3)経皮適用試験ではモルモットの黒色皮膚を脱色させたとの報告や、ウサギの皮膚に壊死を生じたとの報告がある(PATTY(6th, 2012)、ACGIH(7th, 2001))。
【参考データ等】 (4)本物質に職業ばく露された作業者8人中2人に皮膚の過剰な脱色による白色皮膚が認められたとの報告がある(ACGIH(7th, 2001)、PATTY(6th, 2012))。
吸引性呼吸器有害性
【分類根拠】 データ不足のため分類できない。