急性毒性
経口
ラットのLD50値として、雄で2100 mg/kg、雌で634 mg/kg(IUCLID (2000))と報告され、雄が区分外、雌が区分4に該当する。危険性の高い雌のデータを採用し区分4とした。GHS分類:区分4
経皮
ラットLD50値は >2000 mg/kg (IUCLID (2000))であり、2000 mg/kgで死亡例が発生している。GHS分類:区分外(国連分類基準:区分5または区分外)
吸入:ガス
GHSの定義における固体である。GHS分類:分類対象外
吸入:蒸気
データなし。GHS分類:分類できない
吸入:粉じん及びミスト
ラットLC50値は ≥5.27 mg/L/4h [OECD TG 403; GLP](IUCLID (2000))であり、GHS区分外に該当する。なお、当該物質は粉塵として投与されたと記載されている(IUCLID (2000))ので、粉塵の基準値を適用した。GHS分類:区分外
皮膚腐食性及び刺激性
ウサギの皮膚に試験物質500 mgを4時間の半閉塞適用した試験(OECD TG 404)において、全動物の全観察時点で刺激性評点は0であり、一次刺激性なし。(no primary irritant effects)との結果(BUA Report 115 (1995))があり、GHS区分外に該当する。GHS分類:区分外
眼に対する重篤な損傷性又は眼刺激性
ウサギの眼に試験物質100 mgを適用24時間後に洗浄した試験(OECD TG 405)において、全動物の全観察時点で刺激性評点は0であり、眼に対する刺激性なし。(no irritant effects)との結果(BUA Report 115 (1995))があり、GHS区分外に該当する。GHS分類:区分外
呼吸器感作性
データなし。GHS分類:分類できない
皮膚感作性
モルモットのマキシマイゼーション試験(OECD TG406、GLP)において、試験物質濃度50%、25%、および5%による惹起で陽性率はそれぞれ45%(9/20)、50%(10/20)、および20%(4/20)と用量依存性が認められ、感作性あり(sensitizing)と報告されている(BUA Report 115 (1995)、IUCLID (2000))。その結果、本物質はヒトにおいても接触アレルギー物質の可能性がある(potential contact allergen for humans)と見なさねばならない(BUA Report 115 (1995))との記載があり、GHS区分1に該当する。なお、MAKBATではSh(MAK/BAT (2010))と評価されている。GHS分類:区分1
生殖細胞変異原性
ラットの経口投与による肝臓を用いたDNA結合試験(GLP準拠)(体細胞 in vivo 遺伝毒性試験)で陰性(IUCLID (2000)の報告があるが、他に生殖細胞および体細胞を用いたin vivo試験のデータがないため分類できない。なお、in vitro試験では、エームス試験(NTP DB(Access on Dec. 2011) 、IUCLID (2000))、V79細胞を用いた染色体異常試験とSCE試験(IUCLID (2000))で陽性、V79細胞でのHGPRTとラット初代肝細胞のUDS試験で陰性の結果が得られている。GHS分類:分類できない
発がん性
IARCによる発がん性評価がGroup3(IARC Suppl.7(1987))であることから「分類できない」とした。なお、ラットおよびマウスに2年間経口投与した試験において、ラットでは陰核腺の腺腫とがんを合わせた発生率が有意に上昇し、マウスでは用量依存性に甲状腺腫瘍、肝細胞がん、細気管支/肺胞上皮腺腫の発生率が有意に上昇したとの報告がある(IARC 27(1982))。EU分類ではCarc. Cat. 3; R40(EC-JRC(ESIS) (Access on Dec. 2011))である。GHS分類:分類できない
生殖毒性
妊娠ラットの器官形成期に経口投与した発生毒性試験(OECD TG414: GLP)において、母獣に体重増加抑制が認められた中・高用量群で仔の体重のわずかな減少以外に仔の発生に対する悪影響は報告されていない(IUCLID (2000))。しかし、親動物の交配前からの投与による性機能および生殖能に対する影響に関してはデータがなく不明のため「分類できない」とした。GHS分類:分類できない
特定標的臓器毒性(単回ばく露)
ラット雌雄の急性経口毒性試験において、LD50値は雄が2100 mg/kg、雌が634 mg/kgと報告され、雌雄とも毒性症状として麻酔状態、全身倦怠が記載されている(IUCLID (2000))ことに基づき、区分3(麻酔作用)とした。また、雌ではガイダンス値区分2相当の用量で、さらに被毛の乱れ、体重減少が観察され、死亡例が発生したが、標的臓器を特定できないことから、区分2(全身毒性)とした。GHS分類:区分2(全身毒性)、区分3(麻酔作用))
特定標的臓器毒性(反復ばく露)
ラットおよびマウスの8週間混餌投与試験(試験濃度:0、0.03、0.1、0.3、1.0、3.0 %)において、両動物種ともガイダンス値範囲を超える0.3%(90日換算:264 mg/kg/day)以上の群で死亡が発生し、マウスの雌のみ0.03%(26.5 mg/kg/day)群でも死亡の発生が報告されている(NTP TR 143 (1978))。この0.03%群の雌マウスの死亡については、濃度がより高い0.1%群で死亡がなく、かつ、マウスの103週間混餌投与試験(試験濃度:0.1、0.2 %)では試験濃度と死亡率との間に有意な関連がなかった(NTP TR 143 (1978))とされていることから、投与の影響とは考え難い。また、その他の影響として体重増加抑制が報告されているのみで詳細な情報もなく「分類できない」とした。GHS分類:分類できない
吸引性呼吸器有害性
データなし。GHS分類:分類できない