急性毒性
経口
GHS分類: 区分外 ラットのLD50値として、2,190 mg/kg (ACGIH (7th, 2013)) との報告に基づき区分外 (国連分類基準の区分5) とした。
経皮
GHS分類: 区分4 ウサギのLD50値として、1,300 mg/kg (ACGIH (7th, 2013)) との報告に基づき、区分4とした。
吸入:ガス
GHS分類: 分類対象外 GHSの定義における液体である。
吸入:蒸気
GHS分類: 区分4 ラットのLC50値 (4時間) として、3,140 ppmとの報告 (ACGIH (7th, 2013)) に基づき、区分4とした。なお、LC50値が飽和蒸気圧濃度 (4,421 ppm) の90%より低いため、ミストを含まないものとしてppmを単位とする基準値を適用した。
吸入:粉じん及びミスト
GHS分類: 分類できない データ不足のため分類できない
皮膚腐食性及び皮膚刺激性
GHS分類: 区分外 ウサギに本物質原液を4時間適用した試験 (49 CFR 173.240) において、全例 (6匹) に刺激性を示す明らかな症状はみられなかった (US EPA/HPV Challenge program (2005)) との報告や、ウサギに対して軽度の刺激性 (ACGIH (7th, 2001))、刺激性なし (ACGIH (7th, 2013)) との報告があることから区分外と判断した。
眼に対する重篤な損傷性又は眼刺激性
GHS分類: 区分2B ウサギを用いた眼刺激性試験 (ドレイズ法) の報告が2報において、本物質の原液0.1 mLをウサギの結膜嚢に適用した結果、刺激性は浮腫を伴わない結膜発赤に限られ24時間以内に完全に消失したとの報告や、中等度の結膜炎がみられたが72時間以内に回復したとの報告がある (US EPA/HPV Challenge program (2005)、ACGIH (7th, 2001))。以上の結果から区分2Bとした。
呼吸器感作性
GHS分類: 分類できない データ不足のため分類できない。
皮膚感作性
GHS分類: 区分外 モルモットを用いたビューラー試験 (EPA/OPP 81-6、GLP準拠) において、本物質の30%水溶液を適用した試験群および対照群とも惹起後24および48時間の皮膚反応を認めず、陽性率は両群とも0% (それぞれ0/10および0/5) であり、陽性対照群では惹起後24および48時間に全ての部位で紅斑を認め陽性率100% (10/10) であったことから、本物質の30%水溶液は感作性なしと結論されている (US EPA/HPV Challenge program (2005)、HSDB (2015)、ACGIH (7th, 2013))。以上の結果から、区分外とした。
生殖細胞変異原性
GHS分類: 分類できない ガイダンスの改訂により「区分外」が選択できなくなったため、「分類できない」とした。すなわち、in vivoでは、ラットの優性致死試験で陰性及びambiguous (あいまいな結果)、マウス、ラットの骨髄細胞を用いる小核試験で陰性、マウス、ラットの肝不定期DNA合成試験で陰性である (US EPA Challenge program (2005)、ACGIH (7th, 2013))。In vitroでは、細菌の復帰突然変異試験で陰性、哺乳類培養細胞の遺伝子突然変異試験、染色体異常試験、不定期DNA合成試験で陽性である (NITE安全性試験 (2009)、US EPA Challenge program (2005)、ACGIH (7th, 2013))。以上より、in vitroで陽性結果があるが、in vivoの複数の試験系で陰性のため、区分2が妥当とは判断されなかった。
発がん性
GHS分類: 分類できない データ不足のため分類できない。なお、本物質の経口経路 (飲水) によるプロモーター作用検出試験 (ベンゾピレンでイニシエーション) において、雌で胃の乳頭腫の発生率増加がみられ (雄は増加せず)、プロモーター作用の可能性についての記述がある (ACGIH (7th, 2013))。
生殖毒性
GHS分類: 分類できない 妊娠ラットの器官形成期 (妊娠6~15日) に強制経口投与した発生毒性試験において、母動物に体重増加抑制、摂餌量低下がみられる用量 (393、568 mg/kg/day) においても、胎児に発生毒性影響は認められなかった (ACGIH (7th, 2013)、U.S. HPV Challenge Program Test Plan (2005))。しかし、本物質の生殖能への影響に関して、マウスを用いた吸入経路でのニトロエタンとの併用ばく露よる3世代試験報告の情報がある (ACGIH (7th, 2013)) だけで、本物質の分類に利用可能なデータはなく、データ不足のため分類できない。
特定標的臓器毒性(単回ばく露)
GHS分類: 区分2 (中枢神経系) ヒトに関する情報はない。実験動物では、ラット、マウスの2,150 mg/kgの経口投与 (区分2超の用量に相当) で筋協調運動の失調、運動性低下 (ACGIH (7th, 2013)、US EPA/HPV Challenge program (2005))、ラットUDS試験の2,000 mg/kg (区分2相当の用量) 経口投与で立毛、嗜眠、マウス小核試験の1,500 mg/kg (区分2相当の用量) 経口投与で嗜眠、振戦 (US EPA/HPV Challenge program (2005))、ラットの11.45 mg/L (区分2相当の用量) 吸入ばく露で、活動低下、ウサギの1,300 mg/kg (区分2相当の用量) 経皮ばく露で、過敏、協調運動失調が認められている (ACGIH (7th, 2013)、US EPA/HPV Challenge program (2005))。以上の症状から、過敏や振戦が認められるため、本物質には中枢神経系影響があり、区分2 (中枢神経系) とした。
特定標的臓器毒性(反復ばく露)
GHS分類: 分類できない ヒトに関する情報はない。 実験動物では、ラットを用いた28日間強制経口投与毒性試験 (OECD TG 407、GLP) において、500 mg/kg/day (90日換算: 155.5 mg/kg/day) で流涎、赤色眼脂、赤色鼻汁及び赤色尿がみられた (NITE安全性試験 (2009))。これらの所見は分類根拠とする影響ではなく、また区分2の範囲外の用量であった。 ラットを用いた4週間吸入ばく露試験 (84/449/EEC, B.8) において、1,500 ppm (ガイダンス値換算: 1.21 mg/L) で上部気道の刺激に伴う一般状態の異常、被毛の汚れ、閉瞼、活動性亢進 (一過性で、FOB観察において有意な変化ではなかった)、爪先立ち歩行、円背位姿勢、体重増加抑制、摂餌量減少、白血球百分率の変化 (分節核好中球増加、リンパ球減少)、ALP・無機リン・胆汁酸・ALT増加、胸腺絶対・相対重量減少、肝臓絶対・相対重量増加、腸骨・膝窩リンパ節で髄質の形質細胞増加がみとめられた (US EPA Challenge program (2005)、ACGIH (7th, 2013))。これらの所見は区分2の範囲外の用量であるが上限 (1.0 mg/L) 近傍であった。 したがって、データ不足のため分類できないとした。
吸引性呼吸器有害性
GHS分類: 分類できない データ不足のため分類できない。