急性毒性
経口
ラットLD50値として3件[685 mg/kg(USEPA/HPV (2002); List1相当)、822~884 mg/kg(化学物質の初期リスク評価書 Ver.1.0, 139 (2008)、105 mg/kg(環境省リスク評価 第7巻 (2009))]の報告の中、1件が区分3、2件が区分4に該当することから、該当数の多い区分4とした。GHS分類:区分4
経皮
ラットLD50値 は >9560 mg/kg(OECD TG402、GLP準拠)(USEPA/HPV (2002))に基づき、区分外とした。GHS分類:区分外
吸入:ガス
GHSの定義における液体である。GHS分類:分類対象外
吸入:蒸気
データなし。GHS分類:分類できない
吸入:粉じん及びミスト
データなし。GHS分類:分類できない
皮膚腐食性及び刺激性
ウサギ6匹の皮膚に本物質原液0.5 mLを24時間適用した試験(16CFR 1500.41(FHSA)、GLP準拠)で、パッチ除去24時間後にわずかな紅斑と浮腫が見られたが、7日後に消失し、皮膚一次刺激指数は0.9で、軽度の刺激性(mild irritation)との評価結果(USEPA/HPV (2002))に基づき、JIS分類基準の区分外(国連分類基準の区分3)とした。なお、ヒトでは、ボランティア24人にニトログリセリンの31、80 mgを24時間貼付し、ほぼ全員に貼付部位の紅斑が観察されたが、数時間で消退した(化学物質の初期リスク評価書 Ver.1.0, 139 (2008))との報告がある。 GHS分類:区分外
眼に対する重篤な損傷性又は眼刺激性
ウサギ(6匹)の結膜嚢に本物質原液0.1 mLを適用した試験(16CFR 1500.42(FHSA)、GLP準拠)で、非洗浄眼における唯一の影響は適用1時間後に3匹中2匹の結膜に排出物が観察されたことで、その他の観察時点では全例が正常であり、本物質は眼刺激物ではないと結論されている(USEPA/HPV (2002))ことから、区分外とした。GHS分類:区分外
呼吸器感作性
データなし。GHS分類:分類できない
皮膚感作性
モルモットのマキシマイゼーション試験において陽性率は40%(4/10)と中等度の感作性を示し、ヒトでも繰り返しの接触により少数のヒトに皮膚感作性を引き起こす可能性が高い(USEPA/HPV (2002))と記述されている。さらに、本物質はContact Dermatitis (Frosch)に感作性物質として掲載されている(Contact Dermatitis (5th, 2011))。以上の知見により、区分1とした。なお、ヒトではボランティア28人に惹起処置を含めたパッチテストにより皮膚感作性は認められなかった(化学物質の初期リスク評価書 Ver.1.0, 139 (2008))との結果、また、アレルギー性接触皮膚炎を有する4人のダイナマイト作業者にニトログリセリンのパッチテストにより陽性の結果を示した(化学物質の初期リスク評価書 Ver.1.0, 139 (2008))疫学調査の報告などがある。GHS分類:区分1
生殖細胞変異原性
ラットに13週間混餌投与による優性致死試験(生殖細胞in vivo経世代変異原性試験)で陰性(USEPA/HPV (2002))、ラットに5または13週間混餌投与による末梢血リンパ球を用いた染色体異常試験および2年間混餌投与による骨髄または腎臓細胞を用いた染色体異常試験(いずれの体細胞 in vivo変異原性試験)で陰性(USEPA/HPV (2002))の結果により区分外とした。なお、in vitro試験としては、エームス試験において陰性(化学物質の初期リスク評価書 Ver.1.0, 139 (2008))、チャイニーズハムスターの卵巣細胞を用いた遺伝子突然変異試験で陰性(USEPA/HPV (2002))が報告されている。GHS分類:区分外
発がん性
ラットの2年間混餌投与試験において、24ヵ月後に1.0%群(363~434 mg/kg bw/day)で肝細胞がん/腺腫が高頻度に観察された(化学物質の初期リスク評価書 Ver.1.0, 139 (2008))。また、別の試験では約8週齢のラットに本物質500 mg/kg/day相当用量を76週間(84週齢まで)混餌投与により、32週齢から肝細胞腺腫が出現、78週齢から肝細胞がんが出現、84週齢では肝細胞腺腫及び高分化型肝細胞がんの出現頻度は共に50~75%であり、肝細胞がんの発生は本物質の長期食餌経由によるものであることが示された(化学物質の初期リスク評価書 Ver.1.0, 139 (2008))と報告されている。一方、マウスを用いた試験では、飲水投与(0、10、40、330 mg/L)による18ヶ月間の発がん性試験で、雌で下垂体腺腫のわずかな増加が見られたが、2年間の混餌による試験では腫瘍の増加は認めらなかった(化学物質の初期リスク評価書 Ver.1.0, 139 (2008))。以上から、ラットでは腫瘍の発生が認められているものの、上記の2年間混餌投与試験は使用した動物数も少なく(各用量38匹)、他の試験も特殊な試験であり、またマウスでは腫瘍の発生に関して明確でないことから、専門家判断により「分類できない」とした。GHS分類:分類できない
生殖毒性
ラットに混餌投与による3世代生殖試験(US FDA Guidelines)において、高用量群(混餌濃度1%)では親動物(F0世代)の体重に有意な減少が見られ、高用量群の第二世代第一産仔(F1a)で性比を除く同腹仔の指標が全て低下し、高用量群の第二世代第二産仔(F1b)および第三世代第一産仔(F2a)でほとんどの指標がある程度の低下を示し、第三世代第一産仔(F2a)の雄が重度の不妊につながる精子形成不全を起こした(USEPA/HPV (2002))。さらに、ラットの器官形成期に混餌投与した発生毒性試験(US FDA Guidelines)では、横隔膜ヘルニアが母動物が体重低下を示した高用量群でのみ発生し、試験物質に起因するされている(USEPA/HPV (2002))ことから、区分2とした。また、本物質は冠動脈拡張剤として使用されている医薬品でもあり、授乳婦に投与する場合には授乳を中止させる(動物試験で授乳中への移行が報告されている)との記載(医療用医薬品集 (2010))により、「追加区分:授乳に対する又は授乳を介した影響」とした。GHS分類:区分2、追加区分:授乳に対する又は授乳を介した影響