急性毒性
経口
【分類根拠】 (1)~(3) より、区分に該当しない。
【根拠データ】 (1) ラットのLD50: 14,500 mg/kg (環境省リスク評価書第13巻 (2015)、HSDB (Access on September 2019)) (2) ラットのLD50: 17,400 mg/kg (環境省リスク評価書第13巻 (2015)) (3) ラットのLD50: > 20,000 mg/kg (SIDS (2008))
経皮
【分類根拠】 (1)~(3) より、区分に該当しない。
【根拠データ】 (1) ラットのLD50: 40 g/kg (40,000 mg/kg) (DFGOT vol.3 (1992)) (2) ラットのLD50: > 40,000 mg/kg (SIDS (2008)) (3) ラットのLD50: 40,000 mg/kg (環境省リスク評価書第13巻 (2015))
吸入: ガス
【分類根拠】 GHSの定義における液体であり、ガイダンスの分類対象外に相当し、区分に該当しない。
吸入: 蒸気
【分類根拠】 データ不足のため分類できない。
吸入: 粉じん及びミスト
【分類根拠】 (1) より、区分に該当しない。
【根拠データ】 (1) ラットのLC50 (4時間、蒸気とエアロゾルの混合): > 5,330 mg/m3 (5.33 mg/L) (SIDS (2008))
皮膚腐食性及び皮膚刺激性
【分類根拠】 (1) より、区分に該当しないとした。
【根拠データ】 (1) OECD TG 404に準拠したウサギを用いた皮膚刺激性試験でごく軽度あるいは明らかな紅斑がみられたが、72時間後には全て消失した (SIDS (2008)、GESTIS (Access on September 2019)、REACH登録情報 (Access on November 2019)) 。
【参考データ等】 (2) 本物質は適用箇所の皮膚に刺激性を示す可能性がある (HSDB (Access on September 2019)) 。
眼に対する重篤な損傷性又は眼刺激性
【分類根拠】 (1)、(2) より、区分に該当しないとした。
【根拠データ】 (1) OECD TG 405に準拠したウサギを用いた眼刺激性試験で、軽度~中等度の結膜に対する刺激性反応がみられたが、72時間後には全て消失した (SIDS (2008)、GESTIS (Access on September 2019)、 REACH登録情報 (Access on November 2019))。 (2) 本物質は眼科領域において、点眼液の抗炎症成分又は溶媒として用いられ、10~30%では点眼しても影響はないが、50~90%であれば刺激を感じる (GESTIS (Access on September 2019))。
呼吸器感作性
【分類根拠】 データ不足のため分類できない。
皮膚感作性
【分類根拠】 (1)~(3) より、区分に該当しないとした。
【根拠データ】 (1) 本物質はOECD TG 406に準拠したモルモットを用いた皮膚感作性試験で陰性であり、ヒトでの感作性試験でも陰性であった (SIDS (2008)、GESTIS (Access on September 2019))。 (2) OECD TG 429相当のマウス局所リンパ節試験 (LLNA) においてSI値は3未満であり、陰性と判定された (REACH登録情報 (Access on November 2019))。 (3) 本物質はモルモットを用いた皮内投与による皮膚感作性試験で陰性であった (DFGOT vol.3 (1992))。
生殖細胞変異原性
【分類根拠】 (1)、(2) より、ガイダンスにおける分類できないに相当し、区分に該当しない。
【根拠データ】 (1) in vivoでは、腹腔内投与によるげっ歯類小核試験、優性致死試験及び姉妹染色分体交換試験 (妊娠マウス骨髄及び胎児肝臓を含む) で陰性の報告がある (DFGOT vol.3 (1992)、SIDS (2008)、環境省リスク評価書第13巻 (2015))。ラット骨髄染色体異常試験では陽性の報告があるが、細胞毒性に起因する可能性が指摘されている (DFGOT vol.3 (1992)、環境省リスク評価書第13巻 (2015))。 (2) in vitroでは、細菌の復帰突然変異試験、哺乳類培養細胞の染色体異常試験、マウスリンフォーマ試験、遺伝子突然変異試験、不定期DNA合成試験で陰性の報告がある (NTP DB (Access on September 2019)、DFGOT vol.3 (1992)、SIDS (2008)、環境省リスク評価書第13巻 (2015))。
発がん性
【分類根拠】 国内外の分類機関による既存分類はない。利用可能なヒトを対象とした報告はない。(1) より、分類できないとした。
【根拠データ】 (1) ラット、イヌ、サルの長期間経口投与試験で、発がん性の証拠は認められていない (環境省リスク評価書第13巻 (2015))。
【参考データ等】 (2) ラット又はマウスを用いた経口又は経皮投与による二段階発がん性試験において、プロモーター作用が示唆されたとの報告がある (環境省リスク評価書第13巻 (2015))。
生殖毒性
【分類根拠】 (1) より、生殖影響はみられておらず、(2)、(3) より、発生影響はみられていない。しかし、(1) はスクリーニング試験であることからデータ不足のため分類できないとした。
【根拠データ】 (1) ラットを用いた強制経口投与による簡易生殖毒性試験 (OECD TG 421) において、雌親で体重増加抑制、雄親で肝臓の絶対及び相対重量増加がみられる最高用量まで生殖能、児動物に影響はみられていない (SIDS (2008))。 (2) 雌ラットの妊娠6~15日に強制経口投与した発生毒性試験 (OECD TG 414) において、5,000 mg/kg/dayという極めて高い用量で母動物に体重増加抑制、体重減少、摂餌量減少がみられ、同用量の胎児に母動物の体重増加抑制と関連したと考えられる体重減少がみられたほか、尿管拡張、肋骨の骨化遅延がみられている。また、胎児に用量依存性のない腎盂拡張がみられているが、催奇形性はみられていない (SIDS (2008)、環境省リスク評価書第13巻 (2015))。 (3) 雌ウサギの妊娠7~28日に強制経口投与した発生毒性試験 (OECD TG 414) において、母動物に体重増加抑制がみられたが胎児に影響はみられていない (SIDS (2008))。
【参考データ等】 (4) 雌ラットの妊娠6~15日に強制経口投与した発生毒性試験において、5,000 mg/kg/dayという極めて高用量で母動物に摂餌量の減少及び体重増加の抑制、胚/胎児に早期胚吸収及び着床後胚損失の発生率増加、生存胎仔の割合の減少、胎仔の体重は軽度~中程度低下等がみられているが催奇形性はみられていない。なお、この試験においては1,000 mg/kg/dayの用量では母動物、胚/胎児共に影響はみられていない (環境省リスク評価書第13巻 (2015))。
特定標的臓器毒性 (単回ばく露)
【分類根拠】 本物質のヒトでの単回ばく露に関する報告はない。実験動物での (1) の情報より、区分2 (呼吸器) とした。
【根拠データ】 (1) ラットに本物質エアロゾル (注:SIDS Dossier (2008) にはエアロゾルと記載) を1,600 mg/m3 (1.6 mg/L、区分2相当) で4時間単回吸入ばく露した結果、死亡例、毒性症状はみられなかったが、剖検で部分的な肺水腫がみられた (SIDS (2008))。原著者によって実施された更に高濃度 (2,000~2,900 mg/m3)、長時間 (24、40時間) のばく露でも同様の所見がみられた (SIDS (2008))。
特定標的臓器毒性 (反復ばく露)
【分類根拠】 (1)~(4) より、実験動物への吸入、経口、経皮ばく露において区分2の範囲までで影響は報告されていないことから、区分に該当しないとした。
【根拠データ】 (1) ラットを用いた13週間の吸入ばく露試験 (6時間/日、7日/週) の結果、2.783 mg/L (区分2超) の雌で鼻道の呼吸上皮に偽腺形成、扁平上皮の過形成、嗅上皮で好酸性封入体の増加がみられたほかは投与に関連した影響はみられなかった (SIDS (2008)、環境省リスク評価書第13巻 (2015))。 (2) ラットに本物質の50%水溶液を1~9 mL/kg (1,100~9,900 mg/kg/day) の濃度で78週間 (5日/週) 経口投与した結果、1 mL/kg (1,100 mg/kg/day、区分2超) 以上で体重増加抑制、9 mL/kg (9,900 mg/kg/day、区分2超) の用量で軽度のヘモグロビン及びヘマトクリット値の減少、眼のレンズの屈折率に若干の変化がみられたほかは影響はみられなかった (SIDS (2008)、環境省リスク評価書第13巻 (2015))。 (3) ウサギ、イヌ、ブタに経皮適用した試験で、区分2超の用量で眼のレンズの変化、皮膚反応等がみられた (SIDS (2008))。 (4) 霊長類では本物質の眼への毒性に対する感受性は低く、ラット、ウサギ、イヌ、ブタでみられた眼への影響はヒトへの関連性はないと考えられる (SIDS (2008))。
【参考データ等】 (5) 1,000 mg/kg/dayを90日間塗布した被験者54名では、事前に予測された皮膚の反応と呼気の異臭以外には、投与群で好酸球増多症の割合が高く、若干の鎮静や散発的不眠、吐き気が副作用としてみられただけで、眼や肝機能、肺機能などへの影響はなかった (環境省リスク評価書第13巻 (2015))。
誤えん有害性*
【分類根拠】 データ不足のため分類できない。
* JIS Z7252の改訂により吸引性呼吸器有害性から項目名が変更となった。