急性毒性
経口
GHS分類: 分類できない データ不足のため分類できない。なお、ラットのLD50値として、77.5 mg/kg (RTECS) との報告があるが、List 3の情報源であり、原著不明のため、この値のみでは分類できない。
経皮
GHS分類: 分類できない データ不足のため分類できない。
吸入:ガス
GHS分類: 分類対象外 GHSの定義における固体である。
吸入:蒸気
GHS分類: 分類対象外 GHSの定義における固体である。
吸入:粉じん及びミスト
GHS分類: 区分3 ラットのLC50値 (4時間) として、960 mg/m3 (換算値:0.96 mg/L) (雌雄) (ACGIH (7th, 2015))、1,800 mg/m3 (換算値:1.80 mg/L) (雌雄) (ACGIH (7th, 2015)) の2件の報告がある。1件は区分3に該当し、1件は区分4に該当する。有害性の高い区分を採用し、区分3とした。なお、旧分類に使用していたデータ (DFGOT Vol. 3 (1991)) は、LC50値として明記されていないため、不採用とした。
皮膚腐食性及び皮膚刺激性
GHS分類: 区分1 ヒトにおいて重度の皮膚刺激性 (HSDB (Access on June 2016))、腐食性を示す可能性 (ACGIH (7th, 2015)) が報告されていることから、区分1に分類した。
眼に対する重篤な損傷性又は眼刺激性
GHS分類: 区分1 ヒトで重度の眼刺激性を示すことが報告されていることから (DFGOT (1992)、HSDB (Access on June 2016))、区分1に分類した。
呼吸器感作性
GHS分類: 分類できない データ不足のため分類できない。
皮膚感作性
GHS分類: 分類できない データ不足のため分類できない。
生殖細胞変異原性
GHS分類: 分類できない データ不足のため分類できない。
発がん性
GHS分類: 分類できない データ不足のため分類できない。
生殖毒性
GHS分類: 区分1A 追加区分:授乳に対する又は授乳を介した影響 本物質自体の生殖影響に関する情報はない。しかしながら、本物質は水蒸気や粘膜との接触に伴い急速に加水分解され、強アルカリ性の水酸化リチウム (CAS番号: 1310-66-3 (無水物: 1310-65-2)) を生じる (ACGIH (7th, 2015)) ことから、リチウム塩の情報が分類に利用可能と考えられる。すなわち、ヒトでは妊婦へのリチウム投与によりエブスタイン奇形など心血管系奇形の発生が1974年に初めて報告され、エブスタイン奇形は当初は高頻度に発症する (自然発症率の400倍) と考えられていたが、Cohen らは再解析の結果、エブスタイン奇形の発症率は自然発症率の出生児20,000人当たり1人に対し、リチウム治療した妊婦では出生児1,000人に対し2人の発症率と報告し (Cohen L.S. et al.: JAMA, 271, 146 (1994))、リチウムは“弱い”催奇形性物質とされた (Giles J.J and Bannigan J.G.: Curr. Pharm. Des., 12, 1531 (2006))。
その後、2016年まで妊婦へのリチウム治療でのエブスタイン奇形発症率はCohenらの2/1,000例 (0.2%) が引用され、双極性障害患者の妊婦へのリチウム投与では胎児の高解像度心エコー検査による観察など特別な注意が必要であると警告されている (Khan S.J. et al.: Curr. Psychiatry Rep., 18, 13 (2016))。また、2014年のイスラエルの報告では妊婦へのリチウム投与による新生児の心血管系異常発症率は対照群の0.6% (4/711例) に対し、リチウム投与群では2.4% (5/123例) と高く、比較したオーストラリアとカナダの多施設データでは心血管系異常発症率は対照群の0.5% (4/842例) に対し、リチウム投与群では3.9% (6/152例) であったとの報告 (Diav-Cirtrin, O. et al.: Am. J. Psychiatry, 171, 785 (2014)) から、エブスタイン奇形を含む心血管系異常は明らかにリチウム投与による影響と考えられる。 さらに、妊娠初期 (妊娠期間の最初の1/3の期間) へのリチウム投与では、出生児の障害として他にも神経障害、呼吸障害、筋緊張低下児、高ビリルビン血症、心律動障害、甲状腺機能低下症、尿崩症などの報告例がある (Khan S.J. et al.: Curr. Psychiatry Rep., 18, 13 (2016))。
実験動物では炭酸リチウムを妊娠ラットの妊娠6~15日に100 mg/kg/dayを経口投与した結果、胎児毒性 (着床数及び生存胎児数の減少、吸収胚数の増加傾向) 及び催奇形性 (波状肋骨、上腕骨・大腿骨など骨の短縮、頭蓋骨・骨盤の奇形、頭蓋骨の分離) が認められた (Marathe M.R. and Thomas G.P.: Toxicol. Lett., 34, 115. (1986))。また、炭酸リチウムを妊娠マウスの妊娠9日に330~340 mg/kgを腹腔内投与した結果、外脳症、頭蓋裂、二分脊椎、脊髄の捻れ、第四脳室拡張など奇形の誘発がみられた (Jurand A.: Teratology, 38 (2), 101. (1988))。一方、妊娠動物へのリチウム投与で発生影響はみられなかったとの報告も複数あるが、投与量や動物の系統差による差異によるものと考えられている (Giles, J.J. and Bannigan, J.G.: Curr. Pharm. Des., 12, 1531 (2006))。 以上、ヒトでは妊娠期へのリチウム投与で心血管系奇形や様々な発生影響が生じることが報告されており、実験動物でも催奇形性の報告のあることから、本項は区分1Aとした。また、分娩後52週までの調査で母乳中及び乳児血清中のリチウムレベルは母体血清中レベルのそれぞれ1/2及び1/4のレベルであったとのこと (Khan S.J. et al.: Curr. Psychiatry Rep., 18, 13 (2016))、及び本邦では妊娠の可能性のある女性に対してリチウム (炭酸リチウム) が禁忌とされているが、やむを得ず投与する場合は授乳を中止するとされていること (医療用医薬品集 2017 (2016)) から、授乳影響を追加した。
特定標的臓器毒性(単回ばく露)
GHS分類: 区分2 本物質は水蒸気や粘膜との接触に伴い急速に加水分解されて強アルカリ性の水酸化リチウムを生じる。水酸化リチウムは鼻、口、咽頭、呼吸器粘膜に強力で即時性の焼灼性損傷を与え、肺浮腫を生じる可能性もあるとの記載がある (ACGIH (7th, 2015))。また、ヒトでは本物質の誤飲により吐き気、筋肉の収縮、精神的錯乱、かすみ目、昏睡を起こすとの記載がある (HSDB (Access on June 2016))。以上より区分1 (呼吸器)、区分2 (神経系) とした。HSDBがList 2の資料であるため、神経系の分類は区分2とした。
特定標的臓器毒性(反復ばく露)
GHS分類: 分類できない データ不足のため分類できない。
吸引性呼吸器有害性
GHS分類: 分類できない データ不足のため分類できない。