安全データシート

トリクロロエチレン

改訂日:2024-01-24版番号:1

1. 化学品及び会社情報

製品識別子

  • 製品名: トリクロロエチレン
  • CB番号: CB5406573
  • CAS: 79-01-6
  • EINECS番号: 201-167-4
  • 同義語: トリクロロエチレン,トリ

物質または混合物の関連する特定された用途、および推奨されない用途

  • 関連する特定用途: 代替フロンガス合成原料、機械部品・電子部品等脱脂洗浄剤、羊毛・皮革洗浄剤、油脂・樹脂・ゴム工業用溶剤、染料・塗料溶剤、試薬、金属洗浄剤、溶剤(生ゴム,塗料,油脂,ピッチ)、フロンガス製造原料
  • 推奨されない用途: なし

会社ID

  • 会社名:Chemicalbook
  • 住所:北京市海淀区上地十街匯煌国際1号棟
  • 電話:400-158-6606

2. 危険有害性の要約

GHS分類

分類実施日(物化危険性及び健康有害性)
GHS改訂4版を使用
H30.3.16、政府向けGHS分類ガイダンス (H25年度改訂版 (ver1.1):JIS Z7252:2014準拠) を使用
物理化学的危険性
自己反応性化学品   タイプG
健康に対する有害性
特定標的臓器毒性 (反復ばく露)   区分1 (中枢神経系、肝臓)
特定標的臓器毒性 (単回ばく露)   区分1 (中枢神経系) 区分3 (気道刺激性、麻酔作用)
生殖毒性   区分2
発がん性   区分1A
生殖細胞変異原性   区分2
皮膚感作性   区分1
眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性   区分2A
皮膚腐食性/刺激性   区分2
急性毒性(吸入:蒸気)   区分4
分類実施日(環境有害性)
環境に対する有害性はH18年度、GHS分類マニュアル(H18.2.10版)を使用
環境に対する有害性
水生環境有害性 (長期間)   区分2
水生環境有害性 (急性)   区分2

2.2 注意書きも含むGHSラベル要素

絵表示
GHS07GHS08
注意喚起語
危険
危険有害性情報
H412 長期継続的影響によって水生生物に有害。
H350 発がんのおそれ。
H341 遺伝性疾患のおそれの疑い。
H336 眠気又はめまいのおそれ。
H319 強い眼刺激。
H317 アレルギー性皮膚反応を起こすおそれ。
H315 皮膚刺激。
注意書き
安全対策
P202 全ての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。
P201 使用前に取扱説明書を入手すること。
P280 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
P273 環境への放出を避けること。
P272 汚染された作業衣は作業場から出さないこと。
P271 屋外又は換気の良い場所でだけ使用すること。
P264 取扱い後は皮膚をよく洗うこと。
P261 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーの吸入を避けること。
応急措置
P337 + P313 眼の刺激が続く場合:医師の診察/手当てを受けること。
P333 + P313 皮膚刺激又は発しん(疹)が生じた場合:医師の診断/手当てを受けること。
P308 + P313 ばく露又はばく露の懸念がある場合:医師の診察/手当てを受けること。
P305 + P351 + P338 眼に入った場合:水で数分間注意深く洗うこと。次にコンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。
P304 + P340 + P312 吸入した場合:空気の新鮮な場所に移し,呼吸しやすい姿勢で休息させること。 気分が悪いときは医師に連絡すること。
P302 + P352 皮膚に付着した場合:多量の水で洗うこと。
保管
P405 施錠して保管すること。
P403 + P233 換気の良い場所で保管すること。容器を密閉しておくこと。
廃棄
専門的な使用者に限定。
P501 内容物/容器を承認された処理施設に廃棄すること。

2.3 他の危険有害性

なし

3. 組成及び成分情報

  • 化学物質・混合物の区別: 化学物質
  • 別名: Trichloroethene, Trichloroethylene solution
  • 分子量: 131.39 g/mol
  • CAS番号: 79-01-6
  • EC番号: 201-167-4
  • 化審法官報公示番号: 2-105
  • 安衛法官報公示番号: -

4. 応急措置

4.1 必要な応急手当

一般的アドバイス
この安全データシートを担当医に見せる。
吸入した場合
吸入後は新鮮な空気を吸うこと。ただちに医師の診察を受けること。
皮膚に付着した場合
皮膚に接触した場合: すべての汚染された衣類を直ちに脱ぐこと。 皮膚を流水/シャワーで洗うこと。 医師に相談する。
眼に入った場合
眼に触れた後は多量の水ですすぐこと。 眼科医の診察を受けること。 コンタクトレンズをはずす。
飲み込んだ場合
飲み込んだ後はただちに水を飲ませること(多くても2杯) 医師に相談する。

4.2 急性症状及び遅発性症状の最も重要な徴候症状

もっとも重要な既知の徴候と症状は、ラベル表示(項目2.2を参照)および/または項目11に記載されている

4.3 緊急治療及び必要とされる特別処置の指示

データなし

5. 火災時の措置

5.1 消火剤

適切な消火剤
水噴霧、耐アルコール泡消火剤、粉末消火剤、二酸化炭素を使用すること。

5.2 特有の危険有害性

周辺の火災で有害な蒸気を放出することがある。
不可燃性である。
塩化水素ガス
炭素酸化物

5.3 消防士へのアドバイス

自給式呼吸器がある場合のみ危険区域に留まってもよい。安全なゾーンまで離れるか適切な保護衣を着用して、皮膚に触れないようにすること。

5.4 詳細情報

ガス/蒸気/ミストを水スプレージェットで抑える(除去する)。 消火水が、地上水または地下水のシステムを汚染しないようにする。

6. 漏出時の措置

6.1 人体に対する注意事項、保護具及び緊急時措置

救急隊員以外への助言: 蒸気、エアゾールを吸入してはならない。 触れないようにすること。 十分な換気を確保する。 危険なエリアから避難し、緊急時手順に従い、専門家に相談のこと個人保護については項目 8 を参照する。

6.2 環境に対する注意事項

物質が排水施設に流れ込まないようにする。

6.3 封じ込め及び浄化の方法及び機材

排水溝に蓋をすること。こぼれたら集めて結合させ、ポンプですくい取る。 物質の制限があれば順守のこと (セクション 7、10参照) 液体吸収剤(例. Chemizorb® )で処置すること。 正しく廃棄すること。関係エリアを清掃のこと。

6.4 参照すべき他の項目

廃棄はセクション13を参照。

7. 取扱い及び保管上の注意

7.1 安全な取扱いのための予防措置

安全取扱注意事項
換気フードの下で作業すること。吸い込まないこと。 蒸気やエアロゾルが生じないようにすること。
衛生対策
汚した衣類はただちに替えること。予防的な皮膚保護を講じること。本物質を取り扱った後は手と顔を洗うこと。注意事項は項目2.2を参照。

7.2 配合禁忌等を踏まえた保管条件

保管クラス
保管クラス (ドイツ) (TRGS 510): 6.1D: 不燃性、急性毒性カテゴリー3 / 毒性危険物または慢性効果を引き起こす危険物
保管条件
密閉のこと。 換気のよい場所で保管する。 鍵をかけておくか、資格のあるまたは認可された人のみが出入りできる場所に入れておく。

7.3 特定の最終用途

項目1.2に記載されている用途以外には、その他の特定の用途が定められていない

8. ばく露防止及び保護措置

8.1 管理濃度

コンポーネント別作業環境測定パラメータ
ACL: 10 ppm - 作業環境評価基準、健康障害防止指
TWA: 10 ppm - 米国。 ACGIH限界閾値(TLV)

8.2 曝露防止

適切な技術的管理
汚した衣類はただちに替えること。予防的な皮膚保護を講じること。本物質を取り扱った後は手と顔
を洗うこと。
保護具
眼/顔面の保護
NIOSH(US)またはEN 166(EU)などの適切な政府機関の規格で試験され、認められた眼の
保護具を使用する。 保護眼鏡
皮膚及び身体の保護具
本推奨は、当社発行の安全データシート,に記載されている製品およびその指定の使用法のみに
適用される。溶解、他の物質との混合、およびEN374に記載の逸脱条件での使用については、
CE認証手袋のサプライヤに問い合わせのこと(例. KCL GmbH, D-36124 Eichenzell, Internet:
www.kcl.de)
フルコンタクト
材質: バイトン®
最小厚: 0.7 mm
破過時間: 480 min
試験物質:Vitoject? (KCL 890 / Aldrich Z677698, Size M)
本推奨は、当社発行の安全データシート,に記載されている製品およびその指定の使用法のみに
適用される。溶解、他の物質との混合、およびEN374に記載の逸脱条件での使用については、
CE認証手袋のサプライヤに問い合わせのこと(例. KCL GmbH, D-36124 Eichenzell, Internet:
www.kcl.de)
飛沫への接触
材質: ニトリルゴム
最小厚: 0.4 mm
破過時間: 10 min
試験物質:Camatril? (KCL 730 / Aldrich Z677442, Size M)
身体の保護
保護衣
呼吸用保護具
気化ガス/エアロゾル発生時に必要 次の規格に準拠しているフィルター式呼吸器保護具を推奨し
ます。DIN EN 143、DIN 14387および使用済み呼吸器保護システムに関連する他の付属規格。
環境暴露の制御
物質が排水施設に流れ込まないようにする。

9. 物理的及び化学的性質

物理的状態

形状
液体 (20℃、1気圧) (GHS判定)
無色の液体 (HSDB (2017))
臭い
エーテル臭 (HSDB (2017))
臭いのしきい(閾)値
2.14×101 ppm (HSDB (2017))
pH
情報なし

融点・凝固点

-84.7℃ (HSDB (2017))

沸点、初留点及び沸騰範囲

87.2℃ (HSDB (2017))

引火点

情報なし

蒸発速度(酢酸ブチル=1)

情報なし

燃焼性(固体、気体)

該当しない

燃焼又は爆発範囲

8%~10.5% (HSDB (2017))

蒸気圧

7.8 kPa (20℃) (ICSC (J) (2013))

蒸気密度

4.53 (HSDB (2017))

比重(相対密度)

1.4642 (20℃/4℃) (HSDB (2017))

溶解度

水:1,280 mg/L (25℃) (HSDB (2017)) エタノール、エチルエーテルと混和。アセトン、四塩化炭素、クロロホルムに可溶 (HSDB (2017))

n-オクタノール/水分配係数

2.61 (HSDB (2017))

自然発火温度

420℃ (HSDB (2017))

分解温度

情報なし

粘度(粘性率)

0.00550 P (25℃) (HSDB (2017))

10. 安定性及び反応性

10.1 反応性

データなし

10.2 化学的安定性

標準的な大気条件(室温)で化学的に安定。

10.3 危険有害反応可能性

エポキシ成分
ベリリウム
チタン
次との反応で燃焼ガスや蒸気の発火または生成のおそれ
圧力
との反応
酸素
アルカリ性水酸化物/水酸化アルカリ
との反応
酸素
ボラン
二酸化窒素
強酸化剤
ナトリウムアミド
金属粉体
マグネシウム
リチウム
アルカリ性水酸化物/水酸化アルカリ
バリウム
アルミニウム
アルカリ金属
次との反応で爆発のおそれ
硝酸カリウム
強酸化剤
塩化アルミニウム
軽金属
過塩素酸
半金属水酸化物
アルカリアミド
アルカリ土類金属
(液化ガスとして)
酸素
次と激しく反応

10.4 避けるべき条件

情報なし

10.5 混触危険物質

多様なプラスチック

10.6 危険有害な分解生成物

火災の場合:項目5を参照

11. 有害性情報

急性毒性

経口
GHS分類: 区分外 ラットのLD50値として、5,400~7,200 mg/kg (EU-RAR (2004)、ATSDR (2014)) との報告に基づき、区分外とした。
経皮
GHS分類: 区分外 ウサギのLD50値として、29,000 mg/kg (NICNAS (2000)) との報告に基づき区分外とした。
吸入:ガス
GHS分類: 分類対象外 GHSの定義における液体である。
吸入:蒸気
GHS分類: 区分4 ラットの4時間吸入試験のLC50値として、4,800 ppm (NICNAS (2000)、EU-RAR (2004)) 及び12,000 ppm (EU-RAR (2004))、6時間吸入試験のLC50値として、5,918 ppm (4時間換算値: 7,248 ppm) (EU-RAR (2004))、1時間吸入試験のLC50値として、26,000 ppm (4時間換算値: 13,000 ppm) (NICNAS (2000) との報告があり、全て区分4に該当することから区分4とした。なお、LC50値が飽和蒸気圧濃度 (77,227 ppm) の90%より低いため、ミストがほとんど混在しないものとしてppmを単位とする基準値を適用した。
吸入:粉じん及びミスト
GHS分類: 分類できない データ不足のため分類できない。

皮膚腐食性及び皮膚刺激性

GHS分類: 区分2 ヒトの事例で労働環境において本物質のばく露により皮膚炎や紅斑を生じたとの報告 (ASTDR (1997)) や、ウサギ及びモルモットを用いた皮膚刺激性試験において顕著な皮膚刺激性を認めたとの報告 (EU-RAR (2004)) から、区分2とした。なお、EU CLP分類において本物質はSkin Irrit. 2に分類されている (ECHA CL Inventory (Access on May 2017))。

眼に対する重篤な損傷性又は眼刺激性

GHS分類: 区分2A ヒトの事故例で、原液の飛沫が眼に入り眼の痛みと角膜上皮の損傷を生じたが数日後に完治したとの報告 (EU-RAR (2004)) や、ウサギを用いた眼刺激性試験において軽度から中等度の結膜炎が生じ、7日後に上皮の角化を認めたが、2週間後には正常に回復したとの報告 (EU-RAR (2004)) から、区分2Aとした。なお、EU CLP分類において本物質はEye Irrit. 2に分類されている (ECHA CL Inventory (Access on May 2017))。

呼吸器感作性

GHS分類: 区分外 ヒトに呼吸器感作性を示す報告はない。また、ヒトの吸入ばく露の事例から、すべての証拠は本物質が呼吸器感作性物質ではないことを示しているとの記述 (EU-RAR (2004)) から、区分外とした。

皮膚感作性

GHS分類: 区分1 本物質は、日本産業衛生学会で皮膚感作性物質の第1群に分類されている。ヒトにおいて本物質に対する過敏症症候群患者19 名、本物質に12週間以上ばく露した健常者22名を対象に、本物質及び本物質の代謝物である抱水クロラール (CH)、トリクロロエタノール (TCOH) 及びトリクロロ酢酸 (TCA) のパッチテストを行ったところ、過敏症症候群患者は全物質に対して陽性を示し、健常者は陰性であった (産衛学会許容濃度の提案理由書 (2016))。又、本物質に感作性があるとする、動物試験を含む複数の事例の報告 (産衛学会許容濃度の提案理由書 (2016)) がある。よって区分1とした。なお、ヒトの本物質に対する皮膚感作性症状の報告は散発的であり、感作性発症は特異体質のヒトの症状であるので、本物質は皮膚感作性を有すると結論してはならないとの指摘がある (EU-RAR (2004))。

生殖細胞変異原性

GHS分類: 区分2 In vivoでは、マウスの優性致死試験で陰性、トランジェニックマウスの腎臓、脾臓、肝臓、肺等を用いた遺伝子突然変異試験で陰性、マウススポットテストで陰性、ラット、マウスの骨髄細胞、ラットの末梢血、ラットの肝細胞を用いた小核試験で陽性、陰性の結果、ラット、マウスの末梢血、マウスの骨髄細胞を用いた染色体異常試験で陰性、マウスの精子細胞を用いた小核試験で陰性、ラット、マウスの肝臓細胞を用いた不定期DNA合成試験で陰性、ラット、マウスの腎臓、肝臓、脾臓、肺等を用いたDNA損傷試験 (コメットアッセイを含む) で陽性、陰性の結果、ラットの末梢血、マウスの脾臓細胞を用いた姉妹染色分体交換試験で陰性である (NITE初期リスク評価書 (2005)、EU-RAR (2004)、ATSDR (2014)、IARC 106 (2014)、DFGOT vol. 24 (2007)、IRIS Tox. Review (2011)、ACGIH (7th, 2007))。In vitroでは、細菌の復帰突然変異試験で陽性、陰性の結果、哺乳類培養細胞のマウスリンフォーマ試験で陽性、遺伝子突然変異試験で陰性、小核試験で陽性、染色体異常試験で陰性、姉妹染色分体交換試験で陽性、陰性の結果である (NITE初期リスク評価書 (2005)、ATSDR (2014)、IRIS Tox. Review (2011)、EU-RAR (2004)、IARC 106 (2014))。以上より、ガイダンスに従い区分2とした。

発がん性

GHS分類: 区分1A IARCは本物質はヒトで腎臓がんを生じること、並びに本物質ばく露と非ホジキン病及び肝臓がんとの間に正の相関がみられたことから、ヒトの発がん性に関し十分な証拠があり、実験動物でも本物質の発がん性について十分な証拠があると結論した上で、グループ1に分類した (IARC 106 (2014))。この他、EPAがCaH (Carcinogenic to humans) に (IRIS (2011))、NTPがKに (NTP RoC (14th, 2016))、ACGIHがA2に (ACGIH (7th, 2007))、EUがCarc. 1Bに (ECHA CL Inventory (Access on May 2017))、日本産業衛生学会が第1群に (許容濃度の勧告 (2016): 2015年提案) それぞれ分類している。以上、IARC等の分類結果に基づき、区分1Aとした。

生殖毒性

GHS分類: 区分2 ヒトの症例や疫学研究で、本物質の生殖毒性を明確に示した報告はない (産衛学会許容濃度の提案理由書 (2014))。また、全身影響が生じない職場での濃度範囲において、男性・女性の生殖能への有害影響はみられなかったとの報告もある (SCOEL/SUM/142 (2009))。実験動物ではマウス又はラットに混餌投与した連続交配試験において、マウスでは高用量 (0.6%) でF0親動物に精巣重量の減少、F1親動物に精子運動の低下がみられた以外に生殖影響はみられず、ラットの試験でもF1世代に精巣重量減少、精子形成異常がみられたが生殖能への影響はみられなかった (産衛学会許容濃度の提案理由書 (2014)、ATSDR (2014))。一方、妊娠ラットの器官形成期 (妊娠6~9日) に経口投与した結果、顕著な母動物毒性 (体重増加抑制、自発運動低下、呼吸困難など) がみられる用量 (1,125 mg/kg/day) で胚の完全吸収、胎児奇形 (無眼、小眼) がみられた (ACGIH (7th, 2007)、ATSDR (2014)) との報告、妊娠ラットに妊娠期中1,000 ppm で飲水投与した結果、母動物毒性はなく胎児に心臓奇形の増加がみられた (ACGIH (7th, 2007)) との報告、また妊娠ラットに交配2週間前から妊娠21日まで1,000 mg/kg/dayを強制経口投与した結果、母動物毒性とともに新生児生存率の低下がみられた (ACGIH (7th, 2007)、ATSDR (2014)) との報告がある。既存分類では日本産業衛生学会が生殖毒性第3群に分類している (産衛学会許容濃度の提案理由書 (2014))。以上、動物実験において概ね母動物中毒量で奇形を含む発生影響を示す報告があること、及び日本産業衛生学会の分類結果を踏まえ、本項は区分2とした。

特定標的臓器毒性(単回ばく露)

GHS分類: 区分1 (中枢神経系)、区分3 (気道刺激性、麻酔作用) ヒトでは本物質のタンクに作業のために立ち入った3人の男性が5分以内に意識を失い、約4時間後に意識回復した後も頭痛、めまい、流涙と眼の痛みを訴えたとの報告がある (EU-RAR (2004)、NITE初期リスク評価書 (2005))。またボランティアによる吸入試験で、1,000 ppm、2時間の吸入ばく露後に中枢神経系抑制の症状 (ふらつき、めまい、嗜眠) が認められたとの報告がある (EU-RAR (2004))。実験動物では、ラットの単回吸入ばく露の主な症状は知覚麻痺、眼と気道の刺激、協調運動能の低下、中枢神経系の抑制、呼吸不全であり、肺、肝臓、腎臓に顕著な変化はみられなかったとの記載がある (EU-RAR (2004)、NITE初期リスク評価書 (2005))。以上より区分1 (中枢神経系)、区分3 (気道刺激性、麻酔作用) とした。

特定標的臓器毒性(反復ばく露)

GHS分類: 区分1 (中枢神経系、肝臓) ヒトについては、「本物質の慢性毒性は、神経障害として現れることが多い。本物質の慢性ばく露者は、神経系の自覚症状 (頭痛、めまい、眠気、倦怠感、指の震え、神経過敏、悪心、食欲不振など) を訴えることが多い。このような訴えは50 ppmを超える本物質に長期ばく露した作業者に観察されている」との記載 (産衛学会許容濃度の提案理由書 (1997))、「ヒトに対する反復毒性に関して、中枢神経系の抑制を生ずるという多くの暴露の報告があり、共通の症状は、疲労、精神的混乱、めまい、頭痛、記憶喪失、集中力欠如、加えて皮膚と眼の刺激性である。他の症状として、トリクロロエチレンの職業ばく露者及び被験者に薬物依存性やアルコール不耐性 (過敏症) が認められる。」との記載 (NITE初期リスク評価書 (2005)) がある。 実験動物については、マウスを用いた30日間連続吸入毒性試験において、区分1のガイダンス値の範囲内である37 ppm (連続ばく露との記載により24時間/日としてガイダンス値換算: 49.3 ppm) で肝臓の相対重量増加、肝細胞の肥大と空胞化の報告がある (NITE初期リスク評価書 (2005))。このほか、実験動物では区分2のガイダンス値の範囲を超える用量で、中枢神経系、視覚、聴覚に対する影響、腎臓への影響 (腎尿細管上皮の巨細胞化、巨核化) が認められている (NITE初期リスク評価書 (2005))。以上より、区分1 (中枢神経系、肝臓) とした。

吸引性呼吸器有害性

GHS分類: 分類できない データ不足のため分類できない。

12. 環境影響情報

12.1 生態毒性

魚毒性
流水式試験 LC50 - Jordanella floridae - 28.3 mg/l - 96 h
(US-EPA)
ミジンコ等の水生無脊
備考: データなし
椎動物に対する毒性
(トリクロロエチレン)
藻類に対する毒性 微生物毒性
ErC50 - Chlamydomonas reinhardtii (緑藻) - 36.5 mg/l - 72 h
備考: (ECHA)
(トリクロロエチレン)

12.2 残留性・分解性

生分解性
好気性 - 曝露時間 28 d
結果: 19 % - 易分解性ではない。
(OECD 試験ガイドライン 301D)

12.3 生体蓄積性

生物濃縮因子(BCF): 17
(トリクロロエチレン)
生体蓄積性 Lepomis macrochirus - 14 d

12.4 土壌中の移動性

データなし

12.5 PBT および vPvB の評価結果

化学物質安全性評価が必要ではない/行っていないため、PBT/vPvB評価データはない。

12.6 内分泌かく乱性

データなし

12.7 他の有害影響

水生生物に有害であり、水中環境に長期の悪影響を及ぼすことがある。

13. 廃棄上の注意

13.1 廃棄物処理方法

製品
内容物及び容器は、関連法規及び各自治体の条例等の規制に従い、産業廃棄物として適切に処理すること。

14. 輸送上の注意

14.1 国連番号

ADR/RID (陸上規制): 1710    IMDG (海上規制): 1710    IATA-DGR (航空規制): 1710

14.2 国連輸送名

IATA-DGR (航空規制): Trichloroethylene
IMDG (海上規制): TRICHLOROETHYLENE
ADR/RID (陸上規制): TRICHLOROETHYLENE

14.3 輸送危険有害性クラス

ADR/RID (陸上規制): 6.1    IMDG (海上規制): 6.1    IATA-DGR (航空規制): 6.1

14.4 容器等級

ADR/RID (陸上規制): III IMDG (海上規制): III IATA-DGR (航空規制): III

14.5 環境危険有害性

非該当
ADR/RID: 非該当 IMDG 海洋汚染物質(該当・非該当): IATA-DGR (航空規制): 非該当

14.6 特別の安全対策

なし

14.7 混触危険物質

多様なプラスチック

15. 適用法令

化審法

第2種特定化学物質(法第2条第3項・施行令第2条)

労働安全衛生法

作業環境評価基準(法第65条の2第1項) 特定化学物質第2類物質、特別有機溶剤等(特定化学物質障害予防規則第2条第1項第2号、第3の2号、第3の3号) 特定化学物質特別管理物質(特定化学物質障害予防規則第38条3) 健康障害防止指針公表物質(法第28条第3項・厚労省指針公示) 名称等を表示すべき危険物及び有害物(法第57条第1項、施行令第18条第1号、第2号別表第9) 名称等を通知すべき危険物及び有害物(法第57条の2、施行令第18条の2第1号、第2号別表第9) 危険性又は有害性等を調査すべき物(法第57条の3)

化学物質排出把握管理促進法(PRTR法)

第1種指定化学物質(法第2条第2項、施行令第1条別表第1)

航空法

毒物類・毒物(施行規則第194条危険物告示別表第1)

船舶安全法

毒物類・毒物(危規則第3条危険物告示別表第1)

水道法

有害物質(法第4条第2項)、水質基準(平15省令101号)

下水道法

水質基準物質(法第12条の2第2項、施行令第9条の4)

水質汚濁防止法

有害物質(法第2条、施行令第2条、排水基準を定める省令第1条)

大気汚染防止法

揮発性有機化合物(法第2条第4項)(環境省から都道府県への通達) 指定物質(法附則第9項、施行令附則第3項) 自主管理指針対象物質(環境庁通知) 有害大気汚染物質、優先取組物質(中央環境審議会第9次答申)

海洋汚染防止法

有害液体物質(Y類物質)(施行令別表第1)

労働基準法

疾病化学物質(法第75条第2項、施行規則第35条別表第1の2第4号1)

16. その他の情報

略語と頭字語

TWA: 時間加重平均
STEL: 短期暴露限度
RID: 鉄道による危険物の国際運送に関する規則
LD50: 致死量 50%
LC50: 致死濃度 50%
IMDG: 国際海上危険物
IATA:国際航空運送協会
EC50: 有効濃度 50%
CAS: ケミカルアブストラクトサービス
ADR: 道路による危険物の国際輸送に関する欧州協定

参考文献

【1】労働安全衛生法 ウェブサイト https://www.mhlw.go.jp
【2】化学物質審査規制法(化審法)https://www.env.go.jp
【3】化学物質排出把握管理促進法(PRTR法) https://www.chemicoco.env.go.jp
【4】NITE化学物質総合情報提供システム (NITE-CHRIP)https://www.nite.go.jp/
【5】カメオケミカルズ公式サイト http://cameochemicals.noaa.gov/search/simple
【6】ChemIDplus、ウェブサイト http://chem.sis.nlm.nih.gov/chemidplus/chemidlite.jsp
【7】ECHA - 欧州化学物質庁、ウェブサイト https://echa.europa.eu/
【8】eChemPortal - OECD 化学物質情報グローバルポータル、ウェブサイトhttp://www.echemportal.org/echemportal/index?pageID=0&request_locale=en
【9】ERG - 米国運輸省による緊急対応ガイドブック、ウェブサイトhttp://www.phmsa.dot.gov/hazmat/library/erg
【10】有害物質に関するドイツ GESTIS データベース、ウェブサイトhttp://www.dguv.de/ifa/gestis/gestis-stoffdatenbank/index-2.jsp
【11】HSDB - 有害物質データバンク、ウェブサイト https://toxnet.nlm.nih.gov/newtoxnet/hsdb.htm
【12】IARC - 国際がん研究機関、ウェブサイト http://www.iarc.fr/
【13】IPCS - The International Chemical Safety Cards (ICSC)、ウェブサイトhttp://www.ilo.org/dyn/icsc/showcard.home
【14】Sigma-Aldrich、ウェブサイト https://www.sigmaaldrich.com/
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