急性毒性
経口
【分類根拠】 (1)~(3) より、区分に該当しないとした。
【根拠データ】 (1) ラットのLD50: 雌: 4,100 mg/kg、雄: 4,500 mg/kg (食安委 農薬評価書 (2019)、農薬抄録 (2012)) (2) ラットのLD50: ≥ 4,100 mg/kg (EU CLP CLH (2012)、EU EFSA (2008)) (3) ラットのLD50: > 5,000 mg/kg (食安委 農薬評価書 (2019)、農薬抄録 (2012))
経皮
【分類根拠】 (1) より、区分に該当しないとした。
【根拠データ】 (1) ラットのLD50: > 2,000 mg/kg (食安委 農薬評価書 (2019)、EU CLP CLH (2012)、EU EFSA (2008)、農薬抄録 (2012))
吸入: ガス
【分類根拠】 GHSの定義における固体であり、区分に該当しない。
吸入: 蒸気
【分類根拠】 データ不足のため分類できない。
吸入: 粉じん及びミスト
【分類根拠】 (1) より、1.1 mg/Lで10例中2例の死亡 (雄の2/5例) が認められていることから、区分4とした。 なお、(2) は区分2の範囲内だが、全身ばく露により経口及び経皮の影響が考えられ、溶媒として本物質が完全に溶解するPEG 400を用いていることからダストエアロゾルのばく露として適切でないと考えられる。また、(1) がより新しいTGで実施されていることから、(2) を参考データとし、(1) のデータを基に分類した。 新たな情報源の使用により、旧分類から分類結果を変更した。
【根拠データ】 (1) ラットのLC50 (鼻部ばく露、4時間): > 1.1 mg/L (1.1 mg/Lで10例中2例死亡 (雄: 2/5例)) (食安委 農薬評価書 (2019)、EU CLP CLH (2012)、EU EFSA (2008)、農薬抄録 (2012))
【参考データ等】 (2) ラットのLC50 (全身ばく露、4時間): 雄: 0.463 mg/L、雌: 0.476 mg/L (溶媒としてPEG400を使用) (食安委 農薬評価書 (2019)、CLH Report (2011)、農薬抄録 (2012))
皮膚腐食性及び皮膚刺激性
【分類根拠】 (1)~(3) より、区分に該当しないとした。
【根拠データ】 (1) EPA OPP 81-5に準拠したウサギを用いた4時間閉塞適用による皮膚刺激性試験で、ごく軽度から明らかな紅斑がみられたが、14日までには消失した。適用24/48/72時間後の平均スコアは0.8であった (RAC Background Document (2012)、農薬抄録 (2012))。 (2) ウサギを用いた皮膚刺激性試験で、軽微から軽度の刺激性を示した (食安委 農薬評価書 (2019)、EU EFSA (2008))。 (3) ウサギを用いた皮膚刺激性試験で、正常皮膚では皮膚反応はみられなかった (農薬抄録 (2012))
眼に対する重篤な損傷性又は眼刺激性
【分類根拠】 (1)、(2) より、区分1とした。21日まで角膜混濁等の症状が持続したことから、分類結果を変更した。
【根拠データ】 (1) 本物質のウサギ (n=6) を用いた眼刺激性試験で、スコア1以上3未満の角膜混濁が全例にみられ、適用21日後まで持続した。虹彩への影響は4/6例にみられ、そのうち1例では適用21日後まで持続した。結膜への影響は全例にみられ、そのうち1例では適用21日後まで持続した (EU CLP CLH (2012)、RAC Background Document (2012)、農薬抄録 (2012))。 (2) ウサギを用いた眼刺激性試験で、強い刺激性を示した (食安委 農薬評価書 (2019)、EU EFSA (2008))。
【参考データ等】 (3) EU-CLP分類でEye Dam. 1 (H318) に分類されている (EU CLP分類 (Access on December 2020))。
呼吸器感作性
【分類根拠】 データ不足のため分類できない。
皮膚感作性
【分類根拠】 (1)、(2) より、区分1Bとした。細区分可能なデータ (2) が確認できたため、細区分をおこなった。
【根拠データ】 (1) モルモットを用いた皮膚感作性試験 (マキシマイゼーション法及びビューラー法) で、純度によりその程度は異なるが、陽性反応を示し、感作性を有すると判断された (食安委 農薬評価書 (2019)、EU EFSA (2008)、農薬抄録 (2012))。 (2) モルモットを用いた皮膚感作性試験 (ビューラー法、適用濃度 50%) で、陽性反応 (陽性率 85%) を示し、感作性を有すると判断された (農薬抄録 (2012))。
【参考データ等】 (3) 本物質のモルモットを用いた皮膚感作性試験 (マキシマイゼーション法、皮内投与 10%) で、惹起24時間後の5/10例 (陽性率 50%)、48時間後の2/10例 (陽性率 20%) に皮膚反応がみられ、陽性と報告されている (EU CLP CLH (2012)、農薬抄録 (2012))。 (4) 本物質のモルモットを用いた皮膚感作性試験 (マキシマイゼーション法) で、皮膚反応がみられなかった (EU CLP CLH (2012))。 (5) 本物質のモルモットを用いた皮膚感作性試験 ビューラー法、適用濃度 50%) で、本物質で惹起を行った9/20例と対照群の1/10例に皮膚反応がみられ、陽性 (陽性率 35%) であったが、再惹起の結果、最終的な陽性率は5%と報告されている (EU CLP CLH (2012)、農薬抄録 (2012))。 (6) モルモットを用いた皮膚感作性試験 (ビューラー法、適用濃度 100%) で、陰性であった (農薬抄録 (2012))。 (7) EU-CLP分類でSkin Sens. 1A (H317) に分類されている (EU CLP分類 (Access on December 2020))。
生殖細胞変異原性
【分類根拠】 (1)、(2) より、区分に該当しないとした。
【根拠データ】 (1) in vivoでは、経口投与したマウス又はチャイニーズハムスターの骨髄細胞を用いた小核試験において陰性の報告がある (食安委 農薬評価書 (2019))。 (2) in vitroでは、細菌の復帰突然変異試験、哺乳類培養細胞を用いる染色体異常試験、遺伝子突然変異試験、不定期DNA合成試験において陰性の報告がある (同上)。
発がん性
【分類根拠】 (1)~(3) より区分2とした。新たな情報源を用いて検討し分類結果を変更した。
【根拠データ】 (1) 国内外の分類機関による既存分類では、EPAでS (Suggestive Evidence Of Carcinogenicity, But Not Sufficient To Assess Human Carcinogenic Potential) (EPA Annual Cancer Report 2019 (Access on November 2020):2001年分類) に分類されている。 (2) 雌雄のラットに本物質を2年間混餌投与した慢性毒性/発がん性併合試験において、雄で甲状腺ろ胞上皮細胞腺腫及びろ胞上皮細胞腺がんの増加傾向、ろ胞上皮細胞腫瘍の合計発生頻度の有意な増加が認められた。雌では投与に関連した腫瘍性病変の増加は認められなかった (食安委 農薬評価書 (2019))。 (3) 雌雄のマウスに本物質を2年間混餌投与した2つの発がん性試験において、いずれ試験でも雄で肝細胞腺腫の発生頻度、並びに肝細胞腺腫及び腺がんの合計発生頻度の有意な増加が認められた。雌では投与に関連した腫瘍性病変の増加は認められなかった (食安委 農薬評価書 (2019))。
生殖毒性
【分類根拠】 (1)~(3) より、母動物毒性がみられる用量であるが、胎児に重篤な毒性がみられることから区分1Bとした。なお、新たな情報源に基づき旧分類から分類結果を変更した。
【根拠データ】 (1) 雌ラットの妊娠6~15日に強制経口投与 (媒体: コーン油) した発生毒性試験において、母動物毒性 (泌尿生殖器の汚染、体重増加抑制、摂餌量減少) がみられる用量 (250 mg/kg/day) で胎児に小型胎児、上顎裂、変形口蓋等の外表異常の発生頻度が増加が認められた (食安委 農薬評価書 (2019))。 (2) 雌ラットの妊娠6~19日に強制経口投与 (媒体: 0.5%CMC-Na水溶液) した発生毒性試験において、母動物毒性 (体重増加抑制、摂餌量減少、肝絶対重量増加) がみられる用量 (50 mg/kg/day以上) で胎児に影響がみられ、50 mg/kg/dayで胎児の低体重及び骨格変異(仙椎前椎体数27、頭蓋骨及び椎弓の不完全骨化及び胸骨分節の未骨化)、300 mg/kg/dayで生存胎児数減少及び着床後胚死亡率の上昇が認められた。催奇形性は認められていない (食安委 農薬評価書 (2019))。 (3) 雌ウサギの妊娠6~19日に強制経口投与 (媒体: 1%CMC-Na水溶液) した発生毒性試験において、母動物毒性 (4 mg/kg/day以上で流産、肝細胞肥大、肺水腫又は胸水貯留、7 mg/kg/day以上で摂餌量減少、12 mg/kg/dayで体重増加抑制) がみられる用量で胎児毒性 (4 mg/kg/day以上で着床後胚死亡率の上昇、7 mg/kg/day以上で有意差のない中手骨及び指骨の不完全骨化の増加、12 mg/kg/dayで全胎児死亡、有意差のない頭頂骨の異常及び胸骨分節の癒合) が認められた (食安委 農薬評価書 (2019))。
【参考データ等】 (4) ラットを用いた混餌投与による2世代繁殖試験において、親動物毒性として、体重増加抑制、肝絶対及び比重量増加等がみられ、児動物に体重増加抑制が認められたが、繁殖能に対する影響は認められなかった (食安委 農薬評価書 (2019))。 (5) 雌ラットの妊娠6日から授乳20日まで強制経口投与した発達神経毒性試験において、発達神経毒性は認められなかった (食安委 農薬評価書 (2019))。 (6) EU CLP分類ではRepr.2に分類されている (EU CLP分類 (Access on December 2020))。
特定標的臓器毒性 (単回ばく露)
【分類根拠】 本物質のヒトでの急性ばく露影響に関する報告はない。実験動物では、(1)、(2) より、区分1 (呼吸器)、(3) より、区分3 (麻酔作用) とした。なお、新たな情報源の使用により、旧分類から分類結果を変更した。
【根拠データ】 (1) ラットの4時間吸入ばく露試験 (全身ばく露) において、雄: 0.304 mg/L、雌: 0.561 mg/L (いずれも区分1の範囲) で自発運動低下、被毛及び鼻吻の汚れ、呼吸数減少、眼球白濁、低体重等がみられた。また、死亡動物の肉眼的病理検査では、鼻汁、肺の充血及び出血、胃内ガス貯留などがみられ、死因は主に呼吸器系の障害と推定された (食安委 農薬評価書 (2019))。 (2) ラットの4時間吸入ばく露試験 (鼻部ばく露) において、1.1 mg/L (区分2の範囲) で被毛及び鼻吻部の汚れ、呼吸困難、ラッセル音、黄~赤色目脂、眼瞼閉鎖、透明鼻汁、糞尿排泄減少がみられた (食安委 農薬評価書 (2019)) (3) ラットの単回経口投与試験において、2,500 mg/kg (区分2超) 以上で立毛、円背位、異常歩行、嗜眠、四肢蒼白及び下痢、3,200 mg/kg (区分2超) の雄で運動失調、3,200 mg/kg (区分2超) 以上で呼吸数減少及び眼瞼下垂、4,000 mg/kg (区分2超) の雄で振戦、雌で伏臥位及び運動失調、5,000 mg/kg (区分2超) の雄で伏臥位がみられた (食安委 農薬評価書 (2019))。
【参考データ等】 (4) ラットの単回経口投与試験において、5,000 mg/kg (区分2超) で立毛、下痢がみられた (食安委 農薬評価書 (2019))。 (5) ラットの単回経口投与試験において、5,000 mg/kg (区分2超) で運動能低下、円背位、立毛等がみられた (食安委 農薬評価書 (2019))。 (6) イヌの単回経口投与試験において、5,000 mg/kg (区分2超) で、嘔吐、腎皮質淡色化、腎表面に浮腫、肝淡色化がみられた (食安委 農薬評価書 (2019))。
特定標的臓器毒性 (反復ばく露)
【分類根拠】 (1)~(7) より、区分1 (肝臓、血液系) とした。新たな情報を用いて検討した結果、旧分類から分類結果を変更した。
【根拠データ】 (1) ラットを用いた90日間混餌投与試験の結果、500 ppm (雄/雌: 38/44 mg/kg/day、区分2の範囲) の雌雄で慢性盲腸炎、雄で軽度の貧血、小葉中心性肝細胞肥大、肝類洞の慢性炎症、雌で肺及び子宮の重量増加がみられた (食安委 農薬評価書 (2019))。 (2) イヌを用いた90日間経口投与試験の結果、100 mg/kg/day (区分2の範囲) の雌雄で眼の脈絡膜壁板の灰色色斑、肝重量増加並びに肝胆管増生、雌でALP増加がみられた (食安委 農薬評価書 (2019))。 (3) ラットを用いた混餌投与による2年間慢性毒性試験の結果、100 ppm (雄/雌: 3.9/4.9 mg/kg/day、区分1の範囲) の雌で軽度の貧血 (ヘマトクリット値、ヘモグロビン、MCHC、赤血球数の減少) がみられた (食安委 農薬評価書 (2019))。 (4) ラットを用いた混餌投与による2年間慢性毒性/発がん性併合試験の結果、100 ppm (雄/雌: 3.82/4.87 mg/kg/day、区分1の範囲) の雌雄で軽度の貧血 (赤血球容積比、ヘモグロビン、赤血球数、MCHC及びMCVの減少)、雌で胆管周囲炎、小葉中心性類洞拡張、膵外分泌腺萎縮が、1,000 ppm (雄/雌: 40/53 mg/kg/day、区分2の範囲) の雌雄で総コレステロール増加、好酸性肝細胞巣、小葉中心性肝細胞淡明化及び空胞化 (脂肪)、胆管過形成、胆管周囲炎、肺炎、肺胞上皮の立方上皮化生、雄で小葉中心性類洞拡張、膵外分泌腺萎縮、精巣萎縮及び精子肉芽腫、雌で脱毛 (試験終了時)、小葉中心性肝細胞壊死、リンパ節洞組織球症、膵腺房細胞空胞化 (脂肪) がみられた (食安委 農薬評価書 (2019))。 (5) マウスを用いた混餌投与による2年間慢性毒性/発がん性併合試験の結果、非腫瘍性病変として100 ppm (雄/雌: 10.7/11.7 mg/kg/day、区分2の範囲) 以上の雌雄で肝褐色色素沈着大食細胞が、1,000 ppm (雄/雌: 107/117 mg/kg/day、区分2超) の雌雄で肝肉芽腫形成、中枢神経系白質空胞化、雄で 好塩基性及び好酸性肝細胞巣増加がみられた。当該試験でみられた中枢神経系白質空胞化について、中枢神経毒性確認試験を行った結果、本物質そのものに中枢神経系白質空胞化を誘発する作用は確認されず、原体混在物 (未同定) が空胞化の主たる原因であることが示唆された (食安委 農薬評価書 (2019))。 (6) イヌを用いた1年間慢性毒性試験の結果、10 mg/kg/day (区分1の範囲) 以上の雌雄で白血球数及び好中球数の増加、雌で鼻乾、骨髄球/赤芽球比増加が、50 mg/kg/day (区分2の範囲) の雌雄で流涎、鼻乾、赤血球容積比、ヘモグロビン及び赤血球数の減少、ALP増加、肝重量増加、中枢神経系白質空胞化、雄で総コレステロール増加がみられた (食安委 農薬評価書 (2019))。 (7) ラットを用いた21日間経皮毒性試験の結果、10 mg/kg/day (90日換算: 2.3 mg/kg/day、区分1の範囲) 以上の雄でAST及び総コレステロール増加、小葉中心性肝細胞肥大、雌で潰瘍を伴う皮膚炎ががみられた (食安委 農薬評価書 (2019))。
誤えん有害性*
【分類根拠】 データ不足のため分類できない。
* JIS Z7252の改訂により吸引性呼吸器有害性から項目名が変更となった。本有害性クラスの内容に変更はない。