急性毒性
経口
ラットを用いた急性経口毒性試験(OECD TG 401、GLP)のLD50値 107 mg/kg (厚労省報告(Access on September 2008))から区分3とした。EU分類Xn; R22(EU-Annex I)は区分3~4に相当する。
経皮
ウサギを用いた経皮投与試験(Directive 92/69/EEC,B.3、GLP)のLD50値 >2,000 mg/kg (SIDS(draft, 2002))から区分外とした。
吸入
吸入(ガス): GHS定義上の固体であるため、ガスでの吸入は想定されず、分類対象外とした。
吸入(蒸気): データがないので分類できない。
吸入(粉じん): データがないので分類できない。
皮膚腐食性・刺激性
ウサギを用いた24時間皮膚刺激性試験(Draize Test)において「PII:0、皮膚刺激性はない」(SIDS(draft, 2002))と記述されている。また、ヒトへの影響について「皮膚刺激性なし」(HSDB (2005))との記述がある。以上から、区分外とした。EU分類Xi; R38 (EU-Annex I)は区分2に相当する。
眼に対する重篤な損傷・刺激性
ウサギを用いた眼刺激性試験(Draize Test)において、20 mg の適用ではPII:20(最大110)であり7日間で回復、また、100 mg の適用ではPII:48(最大110)であり21日間で回復する(SIDS(draft, 2002))との記述から区分2とした。EU分類Xi; R36 (EU-Annex I)は区分2に相当する。
呼吸器感作性又は皮膚感作性
呼吸器感作性:データがないので分類できない。
皮膚感作性:ヒトについては、主にゴム接触皮膚炎患者への貼付試験において散発的に陽性が認められる例がある(SIDS (draft, 2002))。一方、動物については、モルモットを用いたMaximization 試験(OECD TG 406、GLP)で陰性であることから、「ヒトの陽性データは本物質の直接的影響というより交差反応に起因すると推察される」(SIDS(draft, 2002))と記述されている。最近の文献(Contact Derm. 54 (2006))には、本物質を含む手術用手袋使用者においてヒト貼付試験で5人中4人が陽性となったが、被験者が少なく、結論は出せないと纏めている。以上のことから分類できない。
生殖細胞変異原性
体細胞in vivo変異原性試験のラット骨髄細胞を用いた染色体異常試験(OECD TG475、GLP)で陰性(SIDS-draft(2002))との記述から区分外とした。 なお、13週間混餌投与によるマウス末梢血を用いた小核試験では雄:陰性、雌:判断不可(NTP DB (Access on September 2008))であった。in vitro試験については、細菌を用いた復帰突然変異試験で弱陽性(NTP DB (Access on January 2009))、細菌を用いる復帰変異試験(OECD TG471、GLP)で陰性、チャイニーズ・ハムスター培養細胞を用いた染色体異常試験(OECD TG473、GLP)で陰性(厚労省報告(Access on September 2008))である。
発がん性
マウスを用いた32週間及び21ケ月混餌投与試験において腫瘍は見られないが、発がん性の判断には不十分なデータである(SIDS(draft, 2002))との記述があり、また、主要な国際的評価機関による評価がされていないので分類できない。
生殖毒性
ラットを用いた妊娠6-15日の経口投与試験(EPA Health Effects TG 560/6-82-001、GLP)において、母動物の体重増加抑制が見られる用量で、胎児体重減少、着床後胚損失増加、骨化遅延の増加が見られる(SIDS(draft, 2002))との記述から区分2とした。EU分類はCat. 3; R62(EU-AnnexⅠ)であり、GHS区分2に相当する。
特定標的臓器・全身毒性(単回ばく露)
ラットを用いた経口投与試験において、肝臓(暗色化) (SIDS(draft, 2002))が記述されているが、重大な臨床所見には該当せず採用しない。また、「作業環境で作業者に粘膜刺激性、胃や胆のうの症状、肝代謝阻害」(SIDS(draft, 2002))との記述があるが、「初期に行われた確証の乏しい研究」と評価されているので、これも採用しない。一方、ラットを用いて致死量を求めた急性経口毒性試験(OECD TG 401、GLP)において「雌雄ともにすべての被験物質投与群で投与直後から自発運動低下および側臥位または歩行異常が認められた」(厚労省報告(Access on March 2008))との記述があり、区分3(麻酔作用)とした。EU分類はXi; R36/37/38(EU-AnnexⅠ)である。
特定標的臓器・全身毒性(反復ばく露)
ラットを用いた90日間反復経口投与試験(OECG TG408、GLP)において、臓器への一次的な影響はみられず、区分2のガイダンス値範囲内の用量でみられる体重増加抑制や区分2のガイダンス値範囲外の用量でみられる血液検査、臨床化学的検査、尿検査での対象群との差異は、本物質の食味低下に基づく摂餌量減少によるものである(SIDS(draft, 2002))との記述がある。体重増加抑制や摂餌量減少はGHS国連文書 3.9.2.8 に記載の(a)(それだけでは「重大な」毒性を示すものではない体重増加量、摂餌量のわずかな変化)に該当し、GHS分類を支持しない影響と考えられる。よってデータ不足から分類できない。
吸引性呼吸器有害性
データがないので分類できない。