5'-イノシン酸 化学特性,用途語,生産方法
定義
本品は、イノシン酸の二ナトリウム塩である。
解説
inosine 5′-monophosphate.C10H13N4O8P(348.21).生物体内に存在する化学物質で、イノシン一リン酸inosine monophosphateともいい、IMPと略記する。アデニンが脱アミノされた化合物であるヒポキサンチン、リボース、リン酸各1分子によって構成される一種のプリンヌクレオチドである。リン酸のリボースへの結合位置によって2'-、3'-、5'-の3種の異性体があるが、2'-イノシン酸および3'-イノシン酸は生体内に単独では存在しない。生体内で重要な働きをしているのは5'-イノシン酸である。重要なプリンヌクレオチドである5'-アデニル酸、5'-グアニル酸は、5'-イノシン酸を経て生合成される。またADP(アデノシン二リン酸)、ATP(アデノシン三リン酸)は5'-アデニル酸からつくられるので、5'-イノシン酸はADP、ATPの前駆物質ともいえる。
用途
5'-イノシン酸は、核酸、補酵素、ATPなどを合成するための重要な素材である。核酸のなかでは転移RNAの特定の位置にイノシン酸残基があり、重要な役割を果たしている。イノシンの5′位にリン酸基をもつ5′-ヌクレオチド.アデノシン-5′-ホスフェートに亜硝酸を作用させると得られる.転移RNAの微量成分として生体内からも得られるが,とくに死んだ動物の筋肉中に多量に存在する.[α]24D-18.4°(0.2 mol 塩酸).pK1 2.4,pK2 6.4.λmax 248 nm(ε 12200,pH 6).水に易溶,エタノールに難溶.ナトリウム塩は調味料(かつおぶしの味)に用いられる.LD50 16000 mg/kg(ラット,経口).森北出版「化学辞典(第2版)
調味料としての利用
5'-イノシン酸は肉類のうま味の主成分で、鳥肉や畜肉、水産の硬骨動物の筋肉中に0.1~0.2%含まれる。筋肉中には、もともと5'-アデニル酸が多量に含まれているが、動物の死後、酵素の働きによって5'-イノシン酸に変化する。そこで少し古くなった肉には5'-イノシン酸が多量に含まれる。かつお節の味の主成分は、こうして生成した5'-イノシン酸である。
2'-イノシン酸と3'-イノシン酸にはほとんど味がない。生体内で重要な働きをしている5'-イノシン酸に構造は似ているがそれほど重要でないこれらの異性体と5'-イノシン酸とを、舌が味覚によって区別できるというのは興味深いことである。[笠井献一]
イノシン酸は1847年ドイツの化学者J・v・リービヒが肉エキス抽出物から発見した化合物で、1913年(大正2)小玉新太郎がかつお節のうま味成分の一つとして、イノシン酸のヒスチジン塩がうま味をもつ物質であることを発見した。その後、うま味成分はヒスチジンとは関係なく、イノシン酸そのものにあることがわかり、1959年(昭和34)国中明(くになかあきら)がヌクレオチドの化学構造と呈味性との関係を調べて、イノシン酸はグルタミン酸と共存することで、飛躍的にうま味が増強されることを発見した。以後、イノシン酸の化学的製造の完成とともに、ナトリウム塩のイノシン酸ナトリウム(5'-IMP)が核酸系調味料の一つとして利用されるようになった。通常は、グルタミン酸ナトリウムと混合された複合調味料が市販されている。製法は、酵母より核酸を抽出し、これに微生物から取り出した酵素を作用させて5'-アデニル酸をつくり、酵素処理によって5'-イノシン酸にする方法と、糖類を原料に、発酵法により製造する方法とがある。[河野友美・山口米子]
化粧品の成分用途
エモリエント剤、保湿.湿潤剤
化学的特性
White solid
使用
Inosine 5''-monophosphate from Saccharomyces cerevisiae is an IMPDH substrate.
Biochem/physiol Actions
Inosine 5′-monophosphate is a purine nucleotide with a flavor-enhancing property. It acts as a precursor for the synthesis of both guanosine monophosphate (GMP) and adenosine monophosphate (AMP).
概要
無色のシロップ;水溶, 不溶 Et2O;〔α〕D24 -18.4° (c 0.9, 0.2 mol dm-3 HCl)
5'-イノシン酸 上流と下流の製品情報
原材料
準備製品